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2017.02.21更新

労働事件労働者側専門弁護士が教える  会社に解雇された場合の対処法                  

弁護士 川岸卓哉

  川崎合同法律事務所は、設立以来半世紀近くに渡り、労働事件は労働者側専門で、多くの労働事件件を闘ってきました。

  今回は、労働問題では最も深刻な問題の1つである解雇された場合の法的措置について、基礎的なことをご説明します。解雇に晒されている方は、ぜひ諦めずにお読みになってください。

 

 1 解雇を争うにはまずなによりも「解雇される」ことが大事

  会社側が、労働者を辞めさせたいときに、いきなり解雇をすることは稀です。会社は、まず退職強要、つまり、労働者に自主的に辞めさせるよう仕組むのが通常です。

「このままでは解雇にする。解雇になると経歴に傷がつくから自主退職したらどうだ」などと脅し文句を言う。仕事を与えない、または、人がやりたがらない仕事をやらせる。何度も「面談」として呼び出し、延々と仕事のミスを叱責し、人格否定の言葉を浴びせ続ける。給与などを切り下げ、生活できない状況に追い込む。

これらの方法は、会社が、労働者を自主的に退職に追い込むために使う常とう手段です。

 会社から追い詰められていたとはいえ、自主的に退職届などを提出して退職をしてしまった場合、後からこれを争うのは大変困難です。 

 会社の脅しや嫌がらせに屈せず、恐れずに解雇を受けることが、解雇に対して闘う前提となります。

 

 2 解雇には「最終手段としての解雇がされても仕方がない理由」が必要

 日本の労働法は、労働者の長年の闘いの歴史によって、解雇に対して厳しい制限を確立するに至っています。すなわち、解雇には「客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要とされています(労働契約法16条)。

 

(1)客観的合理的理由

 「客観的合理的理由」とは、単に就業規則などで定められた解雇事由に形式的に当てはまるだけでは足りず、だれが見ても解雇されても仕方がないだけの理由が必要だということです。

  例えば、会社を一度遅刻したことは、確かに会社の秩序を乱し就業規則に反するともいえますが、一度きりであれば解雇はあまりに重すぎる理由です。

  会社が解雇を行う際には、これまでは大して問題とされていなかったような小さなミスなどをあれこれ挙げて、解雇理由として主張してくることがよくあります。しかし、どんなに小さなミスをたくさん挙げて解雇理由としても、結局は解雇されるだけの「客観的合理的理由」がないとして、裁判所において解雇無効の判断を獲得できる場合がほとんどです。

 

(2)社会的相当性

 解雇の有効性を判断するうえでもう一つ重要な要件として、「社会的相当性」があります。

  これは、解雇という労働者の生活基盤を奪う最終手段をとられても社会的にやむを得ないといえる場合のみ、解雇が認められるということです。先ほどの遅刻の例では、一度遅刻をした場合には、訓戒(注意をする)程度の処分が妥当であり、何度も遅刻を繰り返す場合には反省文を書かせる、減給、降格など徐々に重い処分を行うべきで、解雇は簡単には認められません。したがって、何かミスをしてしまった場合でも、あくまでも解雇は最終手段であり、他の懲戒手段でとどめられる場合があります。

 

(3)会社の経営不振を理由とする解雇にも制限がある

  会社の経営不振を理由として解雇される場合にも、このような労働法が解雇を制限する考えはあてはまり、労働判例から確立された以下の4つの要件を満たす必要があります。  

① 人員整理の必要性
 会社の経営状態が赤字などで人員整理が必要なこと。逆に言えば、黒字にも関わらず解雇をすることは認められません。

② 解雇回避努力義務の履行
 いきなり解雇をするのではなく、希望退職者の募集や、役員の報酬カット、配置転換など、最終手段である解雇を避けるための努力を尽くしていなければなりません。

③ 人選の合理性
 解雇の対象者が、会社の恣意的な判断ではなく、客観的かつ公平に選定されていること

④ 解雇手続きの妥当性
 解雇対象者や労働組合と十分に協議をして、納得を得るための努力をしていること

 会社は、対象者を解雇に追い込みたい場合には、経営状態を理由にする場合も多いですが、以上の四要件を充足していない場合がほとんどであり、リストラを言い渡されても諦めないことが重要です。

 

3 解雇を争うための手続き

  次に、解雇された場合にどのような争い方があるかについて説明します。

 

(1)労働基準監督署など行政を交えて交渉する
  労働基準監督署による指導や労働局での斡旋など、行政機関を通じて、会社に対して解雇の撤回を求めていく方法があります。

 これは、費用がかからず、行政機関の働きかけにより、一定の解決を得ることができる場合もあります。

 しかし、これら行政機関の解雇に対する指導や斡旋には強制力がなく、解雇を強行してきた会社からすれば、まともに対応をせず無視をされることも多いです。仮に無視をされなくても、本来の水準から低い条件での解決になってしまうこともしばしばです。

 

(2)労働組合に加入しての交渉

  労働組合に加入しての団体交渉は、憲法上保障された権利であり、会社は誠実に団体交渉に応じる義務があり、無視することはできません。

 職場に労働組合がない場合、または、会社にすでに労働組合があっても対応してくれない場合でも、地域や産業別に個人で加盟できる組合(地域合同労組、ユニオンなどと呼ばれています)に加入すれば、団体交渉は可能です。

 川崎合同法律事務所は長年にわたり労働組合の顧問として共に多くの不当解雇に対して闘ってきましたので、信頼できる労働組合のご紹介が可能です。労働組合の支援をもとに、解雇無効を勝ち取った後、職場復帰後もサポートをし、職場での嫌がらせを防ぎながら、職場環境改善のための交渉を継続して行っていくこともできます。

 

(3)弁護士による交渉・裁判
  会社の態度が強固な場合には、弁護士に依頼をし、裁判所において争っていく手段があります。前述のとおり、労働法で解雇には厳格な制限があり、裁判所において公正な審理がされれば、不当な解雇を無効とする判断を得ることは可能です。

 「裁判になると、時間とお金がかかるのが心配」というのが、一般の方の感覚かと思います。この点、裁判所には労働審判という手続きがあります。これは、裁判官、労働者側委員、使用者側委員の3名によって審理され、3回以内の審理で解決する制度で、申し立てから概ね3カ月以内での迅速な解決がされます。会社の不当解雇が明らかな事件の多くは、労働審判において早期に勝利解決を得ています。 

 

 また、費用面についても、川崎合同法律事務所は、労働者の権利擁護による社会正義の実現を設立以来の理念としており、解雇されて生活に困窮した労働者に寄り添い、費用面が壁にならないよう、極力ご相談したいと考えています。

 

 4 最後に 不当解雇と闘うために必要なのは「仲間」

 会社から追い詰められ解雇されたとき、人は自信を失い、闘う気力すらなく、精神疾患も発症していることが多いです。そのような状況において、当事者一人では闘うことは困難です。会社に対して解雇を争うには、支えてくれる仲間の存在は不可欠です。

 労働組合に加入して交渉する場合には、「数は力」で、仲間の労働組合員を増やせば、有利に戦えます。裁判では、労働事件に詳しい弁護士に相談をし、専門家のサポートを受けながら戦う必要があります。

 また、解雇にあった当事者だけでなく、周りにいる家族や、友人が代わりに相談したことをきっかけに、解雇無効の解決に至った事例もあります。

 早期のご相談によって、証拠収集などの手が打て、有利に解決できる可能性が広がります。ぜひ一度ご相談ください。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2017.02.21更新

医療過誤訴訟の手続     弁護士 小林展大

【目次】

1 医療過誤が疑われる場合にすべきこととは?

2 法律相談

3 調査段階

4 訴訟前交渉段階

5 訴訟段階

 

1 医療過誤が疑われる場合にすべきこととは?

  医療過誤が疑われる場合に,法的責任を追及するためには,どのようにすればいいかわからない方も多いと思います。適切に対応しなければ,後になって法的責任を追及することが困難になってしまうこともあります。

 そこで,今回は医療過誤訴訟の手続をテーマとして,医療過誤が疑われる場合に法的責任を追及する手続について,説明します。

 

2 法律相談

  まず,はじめに担当弁護士と法律相談をします。そして,法律相談をするにあたり,重要なことがあります。

1つ目は,医療事故に関係すると思われる書類や資料等は全て持参するということです。

2つ目は,法律相談のために,医療機関に新たに資料の提供を要求しないことです。これは,資料の提供の要求をすることによって,医療機関に時間的余裕を与えて,改ざんを誘発する恐れがあるからです。

3つ目は,医療事故が発生するに至る経過を時系列で書いたものを作成しておくことです。法律相談の前の段階で所持している資料や医療事故の経過表等は,事前に弁護士のところに送付しておくとよりよいでしょう。

 なお,各地の医療問題弁護団が相談カードや調査カードを作成しており,ホームページ等から閲覧・印刷することができますので,そのようなカードを参考にして医療事故の経過表を作成するとよいでしょう。

 法律相談の結果,弁護士が医療過誤が疑われると判断した場合には,次の手続にすすむことになります。それ以外の場合には,法律相談で手続が終了することになります。

 

3 調査段階

  医療過誤事件は専門性が高いことから,依頼を受けて,当初から訴訟提起をするわけではありません。弁護士は依頼を受けてから,医療機関や医療従事者等の法的責任を追及することができるか調査をすることになります。

 この調査で行うことは,まず1つ目が医療事故の事実経過に関する証拠収集です。例えば,医師や病院が保管しているカルテ等の診療記録の入手等です。

 カルテ等の診療記録の入手方法については,証拠保全という手続を選択することがお勧めです。証拠保全とは,医師や病院が保管しているカルテ等の診療記録の改ざんを防止するため,示談交渉,調停,訴訟の前に裁判所に申し立てて,診療記録を現状のまま入手する手続です。

他の診療記録入手の手続としてカルテ開示や情報開示請求等の方法もありますが,開示請求をしてから診療記録が届くまで時間がかかることから,カルテ等の医療記録の改ざんのおそれが否定できないため,証拠保全を選択することになるのです。ただし,証拠保全のデメリットとしては費用がかかるという点が挙げられます。なお,相手方となる医療機関ではないその他関係機関に対しては,カルテ開示や情報開示請求,弁護士法23条の2による照会をすることもあります。

 次に,調査で行うことの2つ目として,医学的知見の調査です。これは,弁護士が医学文献や各ガイドライン等を調査したり,協力していただける医師の意見を聴取したりすることになります。これにより,医療事故の事実経過を理解するために必要な医学的知見,過失や因果関係を判断するために必要な医学的知見を得ることになります。医学文献については,教科書にあたる文献から論文まで,一定程度の数の文献を収集することになります。協力医の意見聴取については,当該事案についての医学的な知見を得ることになります。

 そして,調査で行うことの3つ目として,判例や裁判例等の調査です。これは,医療過誤事件における最高裁判所の判例理論を生かす,同種の事案における裁判所の判断の傾向を把握する,同種の事案における示談交渉の解決傾向を把握するために行うものです。

 上記のようにして,証拠を収集し,医学文献を調べ,協力医の意見も聴取し,判例や裁判例を分析するという作業を通して,調査の最終段階では,一応法的責任を追及することができるかについて,見通しが立ちます。

 この段階で,相手方の医療機関や医療従事者に対して,説明会の開催を求めることがあります。説明会は,調査を通して,過誤があると思われることから,医師らから直接説明を受けるものです。説明会の開催を要求する目的は,調査を経て立てた見通しに間違い,見落とし等がないか検討すること,相手方の医療機関や医療従事者の主張を事前に把握すること等にあります。

 以上のようにして,調査を終えた場合,最後は依頼者の方に調査の結果を報告することになります。調査を終えて,法的責任の追及をすることが困難であるという結論に至った場合には,その理由を説明して,手続は終了することになります(訴訟提起等はしないことになります。)。一方で,法的責任を追及することができる可能性があるという結論に至った場合には,解決方針を立てることになります。

 

4 訴訟前交渉段階

  調査を終えて,法的責任を追及することができる可能性があるという結論に至った場合,訴訟前交渉をすることがあります。訴訟前交渉の手段は,「示談交渉」,「民事調停手続」,「あっせん・仲裁手続」の3つがあります。この3つのなかでどれを選択するかについては,依頼者の方の意向や事情,相手方の医療機関や医療従事者の対応や態度等を考慮して選択することになります。

  訴訟前交渉段階の利点としては,紛争の早期解決の可能性があること,もし解決にならなくても,訴訟前交渉の結果,争点整理ができる可能性があることが挙げられています。

訴訟前交渉の結果,示談成立,調停成立,あっせん・仲裁成立となった場合には,事件終了となります。一方で,示談不成立,調停不成立,あっせん・仲裁不成立となった場合には,手続が終了する,もしくは訴訟を提起することになります。

 

5 訴訟段階

  まず,医療過誤事件においては,上記のように調査をする場合には委任契約を締結します。そして,訴訟前交渉をする場合及び訴訟提起をする場合には,調査とは別に改めて委任契約を締結します。

  そして,医療過誤訴訟も民事訴訟に含まれるところ,民事訴訟を提起するためには「訴状」を裁判所に提出します。なお,民事訴訟では,訴えた者を原告,訴えられた者を被告と呼びます。

そして,訴状には,原告が被告に対して求めることが書かれます。通常は,原告が求める額の金銭を支払えと記載されますが,これは日本の民事訴訟は金銭賠償を原則としているためです。そのため,医療過誤訴訟において,原告の疾患を治療することを求めることはできないということになります。

  また,訴状には,医療機関や医療従事者が起こしたミス(過失といいます),死亡や後遺障害が残ったことによる損害額(損害といいます),そのミスにより死亡や後遺障害の残存という結果が生じたこと(因果関係といいます)等が記載されます。これは,民法という法律で,「過失」,「損害」,「因果関係」という要件を満たすことにより損害賠償請求権が発生するということが定められているためです(民法709条)。

  このようにして,訴状が提出されることにより訴訟が提起されます。

  訴訟が提起されると,被告は「答弁書」を提出します。答弁書には,原告の請求を理由があるとして認めるのか,理由がないとして認めないのかが記載されます。また,原告の主張する事実を認めるのか,知らないのか,否認するのかも記載されます(認否といいます)。さらに,被告の反論がある場合には,被告の反論も記載されます。原告の訴状,被告の答弁書が提出された後は,原告と被告は「準備書面」と呼ばれる書面を提出して,訴訟を進めていくことになります。

  そして,医療過誤訴訟においては,訴訟提起してから,「争点整理手続」が行われます。争点整理手続では,訴状,答弁書,準備書面(主張書面といいます)のほか,カルテ等の診療記録,医学文献,協力医の意見書等(証拠)が提出されます。その上で,原告と被告の主張のうち一致している部分,主張が一致せず争いのある部分を明確にしていきます。その争いのある部分が争点となります。

  その次は,証拠調べ手続に入ります。証拠調べ手続では,医師や看護師等の医療従事者,医療過誤被害者及びその遺族等が証言をします。また,協力医がいる場合には,協力医が証言をすることもあります。また,証拠調べ手続においては,「鑑定」が行われることがあります。「鑑定」とは,裁判所が選任した医学的知見を有する専門家に意見を求めることです。「鑑定」は,通常は医療従事者,医療過誤被害者等の事件当事者の証言が終わった段階で,当事者のいずれかまたは双方からの鑑定申請があり,裁判所がその必要があると認めると行われます。

  ここで,審理の途中で「和解」することができないか打診を受けることがあります。「和解」とは,裁判所が間に入って,原告と被告が話合いによってお互い譲歩して紛争解決の合意をすることをいいます。和解が成立した場合,訴訟は終了することになります。和解は柔軟な解決が可能となることがあり,例えば医療機関や医療従事者からの謝罪を得ることができる可能性があります。その一方で,医療機関や医療従事者にミス,すなわち過失があったか等について裁判所の判断が出ない可能性もあります。

  そして,原告と被告が主張立証をすべて行い,証拠調べが終了すると,裁判所は審理を終結し,第一審判決の言い渡し期日が定められます。第一審判決が言い渡され,判決が確定すると,訴訟手続が終わることになります。

  しかし,第一審判決の内容に不服がある場合には,原告及び被告は控訴を提起することができます。控訴が提起された場合,控訴審で審理がなされることになります。控訴審の審理の途中でも,和解の打診を受けることがあります。上記と同様に,和解が成立した場合には訴訟は終了することになります。

  そして,控訴審でも,原告と被告が主張立証をすべて行い,証拠調べが終了すると,裁判所は審理を終結し,判決の言い渡し期日が定められます。控訴審判決が言い渡され,判決が確定すると,訴訟手続が終わることになります。

  しかし,控訴審判決の内容に不服がある場合には,原告及び被告は上告を提起することができます。上告が提起された場合,上告審で審理がなされることになります。そして,上告審判決が言い渡されると,判決確定により訴訟手続が終わることになります。

 

* 現在では,各地の裁判所に医療集中部(医療過誤訴訟を集中的に取り扱う部署)が発足しており,医療集中部がない地方でも,集中部の審理を参考にして審理が進められています。そのため,以前は長期間かかった審理が,第一審については現在では1年から2年くらいで終わるようになる事案が増えています。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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