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2016.08.17更新

はじめに
  この間、連日のように中国の大気汚染問題が報道され、PM2.5(微小粒子)汚染のわが国への影響が論じられています。
  PM2.5は、直径2.5ミクロン以下の微小な粒子のことであり、体の深部に入りやすく健康影響をおよぼす危険な大気汚染です。
  欧米では早くから注目されてきた汚染物質でしたが、わが国では、東京大気汚染訴訟の和解において、初めて、環境基準の設定に向けた検討が約束され、患者・市民の運動もあって、やっとのことで2009年9月に環境基準(年平均値15μg/立方メートル、日平均値の98%値35μg/立方メートル)が設定され、その後、運動に後押しされるかっこうで、この間測定体制の整備が進められてきたというのが実情です。

わが国のPM2.5汚染の実情
  この間の中国での高濃度汚染や西日本での中国からの汚染飛来が報じられていますが、それ以前から、わが国では欧米に比しても濃度レベルが高く、2011年度の東京都における測定結果でみても、自動車排ガス測定局(沿道)12局中全てが環境基準オーバー、一般測定局(非沿道)16局中、基準達成はたったの2局のみで残り14局は基準オーバー、しかも短期基準の日平均値のみならず、長期基準の年平均値も含めて、いずれも環境基準をオーバーするという惨たんたる結果となっていたのです。

環境省の暫定指針
  環境省はこうした実態にほおかむりして、中国の汚染ばかりを強調、2月27日には、暫定指針の70μg/立方メートルなるものを発表しました。
  しかしそもそも環境基準の35μg/立方メートル自体、このレベルを越えると循環器・呼吸器疾患による死亡が増加したり、呼吸器疾患(COPD,ぜん息)や循環器疾患(冠動脈・脳血管疾患、脳梗塞、うっ血性心不全)による入院・受診が増加することから、これが環境基準値とされたのであって、この2倍が暫定指針というのはいかがなものです。

急がれるPM2.5対策
  東京大気の原告団・弁護団は、裁判和解以降、国・都などとの間で「道路連絡会」を開催して、和解条項の履行と公害対策を迫ってきましたが、先日の連絡会で、当方から、国民の関心の集まっているPM2.5の当面の対策についてただしたところ、環境省は、測定体制を整備し、成分分析の結果が出てからでないと対策の検討には入れないと答弁して、会場をあ然とさせました。
  中国からの移流汚染ばかりを強調し、国民に外出をひかえる暫定指針を云々する前に、もともと環境基準をオーバーする状況にあった国内由来のPM2.5汚染に対する対策を強化することが緊急の課題です。
  その意味で、東京都が発表している東京都のPM2.5発生源別の寄与割合でみても、都内および関東6県の人為発生源のうちの34パーセントをしめる自動車、とりわけディーゼル車の対策を強めることがまずもって求められ、さらなる単体排ガス規制の強化、使用過程車の対策強化、都心部への流入規制、ロードプライシングの導入等による自動車交通総量の削減などの対策が急務となっています。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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