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2022.11.28更新

川口弁護士については、こちらをご覧下さい。

 日本労働弁護団 季刊紙 労働者の権利348号(2022年11月発行)に、川口彩子弁護士の「地位・関係性を利用した継続的な性行為強要型セクハラ事件逆転勝訴判決のご報告」が掲載されました。

労働者の権利348号の目次は、こちらからご覧下さい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.11.21更新

畑福生弁護士については、こちらをご覧下さい。

 こんにちは!弁護士の畑 福生です。昨年から保護猫と暮らしています。
 我が家ではお猫様が世界の中心となっていますが、 一緒に暮らしてみると改めて「ペット」というより「家族」なのだと実感します。
 この記事では分かりやすさのために「ペット」と書きますが、家族ともいうべきペットにまつわるトラブルについて、離婚時の引き取りの問題にも触れながら紹介したいと思います。

 

1 ペットにまつわるトラブルについて
 ペットに関するトラブルとしては、次のように様々なものが挙げられます。

・ペットが被害者となる場合
 例えば、交通事故や動物病院、ペットホテル、トリミングショップでのミスによってケガをした等

・ペットが加害者となる場合
 例えば、ペットが噛んだり引っかいたりして怪我をさせた、物を壊した、野良猫や野鳥への餌やりで隣家に糞尿被害が出た等

・それ以外の契約に関する問題
 例えば、ペットショップとの契約問題、 賃貸住宅でのペットの飼育トラブル、ペットの葬儀に関するトラブル、ペットに財産を残したいという意向を遺産分割協議に反映させること、動物保護団体を装った里親詐欺等

 

2  ペットの引き取り問題
 このように様々なトラブルが生じ得るところですが、今回は、特に離婚の際にペットを誰が引き取るかという問題についてまとめたいと思います。


⑴ ペットは「物」として扱われる
 大事な大事な我が子、この世に二つとない大切な命ではありますが、民法上はペットは「物」として扱われてしまいます(民法85条)。
そのため、民法上は、ペット自身は権利を持たず、むしろ所有権の対象として、すなわち誰かの所有物として取り扱われます。

 

⑵ ペットは財産分与の対象となりうる
 「物」として所有権の対象となることから、 結婚生活の中で、夫婦の家計からペットを購入したような場合には、ペットは夫婦の共有財産となります。他方で、 結婚前からどちらかが飼っていたなどの特別な事情がある場合はその方のみの財産となります、
 夫婦の子どもについては、離婚時にどちらが親権を得るかが問題となりますが、残念ながらペットには親権は存在しません。
 そのため、共有財産として扱われたペットは、夫婦の離婚時に財産分与(=夫婦が協力して築き上げた財産を公平に分配する手続き)の対象となります。

 

⑶ 一般的な財産分与の方法

ア 現金、預貯金など
 財産分与において、現金や預貯金など分けやすいものであれば、夫婦が半分ずつ取得するというように計算することが多いです。


イ 不動産など
 また、不動産などそのままでは二つに分けられないものは、
 ①売却して売上げを夫婦で分ける方法や、
 ②その物の財産的な価値(売却価格など)の2分の1を夫婦のどちらかが他方に支払って、その方が所有権を得る(片方は所有権を得る、もう片方が相当額のお金を得る)という方法がメジャーです。
 その他にも、③(土地であれば)分筆して二つの土地にしてしまうことや、④分けずに共有として残しておくということもあり得ますが、様々なリスクから③④はおススメしないことが多いです。

 

⑷  ペットの 財産分与の方法は?
 このような方法を踏まえると、ペットの財産分与はどのように考えればよいでしょうか。
 まず、当然ながらペットは物理的に分けられないので、上記「ア」や「イ」の③の分けてしまうという方法はとれません。
 また、大事な我が子を売るなんてとんでもない。上記「イ」のうちの①方法 (売却) もできませんよね。
 
 そうすると、上記「イ」の③(お金を払うなどしてどちらかが取得)が残ります。

 ただ、夫婦共有財産としてのペルシャ猫の価値が15万円として主張された事案において、裁判所は「 通常、ペットの猫の飼育には、相当の費用が必要となること、また、ペットの猫が病気等に罹患することも稀ではなく、相当高額の治療費を必要とする場合もあることに照らせば、ペットを財産的価値があるものとして扱い、財産分与の対象財産とすることは相当でないというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。」( 横浜家庭裁判所相模原支部 平成29年10月30日判決・ D1-Law.com判例体系:28261791)とされています。
 特別な場合を除いて、一般的にペットには財産的な価値が認められにくいことが多いです。
 そのため、離婚時のペットの引き取りは、無償でどちらか一方がペットを引き取るとなることも多いかと思います。 

 

⑸ じゃあ、どちらが引き取るかはどう決めるの?
ア 話合い
 まずは、話し合いで、どちらが引き取るのがペットにとって幸せかを踏まえて、どちらが引き取るべきかを決めることとなります。


イ 調停
 話合いでもまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では裁判所(調停委員会)を介して、合意を目指します。離婚調停の中で財産分与について話し合うのもできますし、財産分与を目的とした調停を起こすこともできます。


ウ 審判・離婚裁判
 調停でもまとまらない場合は、裁判所が審判によってまたは離婚裁判の中で、当事者の主張を踏まえて、判断を下します。
 審判や裁判において、裁判所がどういった事情を踏まえて判断をするのかは明確に示されてはいません。
 
 ただ、ペットが人間の子ども同様に愛情をもって取り扱われるべき存在であることからすれば、
 ・離婚までにどちらが主にペットの世話をしていたか
 ・どちらによりなついているか
 ・離婚後の飼育環境や経済状況など、客観的にみて夫婦どちらに飼育されるのがペットの幸福につながるか
 などの事情の総合考慮の上で、判断がなされることになると考えられます。
 ですので、審判や裁判においてはその点を踏まえた主張・立証が欠かせません。

 

⑹ その他、ペットの養育費は?ペットの面会交流は?
  既に述べたとおり、残念ながら、ペットは人間の子どもとは異なり所有物として扱われてしまうので、ペットの所有権を取得した方から、他方に対して養育費を請求することはできません。また面会交流を求める法律上の権利もないと考えられます。
  ただ、愛する我が子に会いたい、我が子の健康な生活に貢献したいという気持ちもあるはずです。
  先程のどちらが引き取るかを話し合いで決める際に、「あなたにこの子を託すから、その代わり月に何回かは合わせてほしい」、「この子のご飯代や医療費を払うから合わせてほしい」といった条件をつけて交渉し、少しでもお気持ちを叶える方向で合意をするということも考えられます。
 審判や裁判で最終的に裁判所が判断するとなると、どちらが所有権を取得するかという話にしかなりませんが、話合い(調停含む)であれば、柔軟な解決も可能です。
 特にペットについては医療費の負担が高額となりやすいことから、相手方に医療費の支払いなどのメリットを提示しつつ、面会交流などこちらの希望を一定程度叶えるということも考えられます。


 川崎合同法律事務所は、弁護士、事務員含め愛するペットと暮らす所員も多く在席しています。

 ペットの財産分与の問題含め、離婚の問題について皆様のご相談に多くお答えしております。

お困りの際は是非ご相談ください。

≪離婚・男女問題特設ページはこちら≫
https://www.kawagou.org/divorce/

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.11.15更新

 中瀬弁護士については、こちらをご覧下さい。


 離婚をするときには、必ず、どちらが親権者になるかを決めなけばなりません。親権者にならない親にとっては、離婚後も子どもと連絡をとりあえるか、会えるか、ということはとても気になる問題だと思います。
また、離婚までに至らず、夫婦が別居している段階においても、他方配偶者が子どもを連れて出ていった場合には同じ問題が生じます。

 「離れて暮らしている子どもとなかなか会えていない、どうすればよいか」、「離婚後も子どもと交流できるようにするために、どういう約束事をとりつければよいか」、あるいは、「元パートナーから子どもと会わせてほしいと言われているがどうすればいいか」というご相談を受けることがしばしばあります。

 

◇面会交流とは?
 子どもと離れて暮らしている親(非監護親)と子どもが、直接会ったり、それ以外の方法で交流をすることを「面会交流」と言います。
 面会交流は、親の権利という側面だけでなく、子どもの成長にとって大切な役割を果たすものであり、子の権利という側面も有すると言われています。
 そして、民法には、面会交流について、協議で決める場合、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(見法766条1項)とされているため、子の利益(子の福祉)を第一に考えるべきことがはっきりしています。

 

◇面会交流の方法
 面会交流の方法は、直接会うことに限られません。
 電話でのやりとりや手紙のやりとり、非監護親からのプレゼントの送付、子の写真や動画の送付などいろんな方法があります(これらを間接交流といいます。)。
 最近では、ZOOMやLINEでのやりとりもさかんです。

 

◇家庭裁判所の運用
 仮に当事者間での話し合いで決められず、後述する調停や審判手続きで面会交流について決めることになった場合、裁判所は、面会交流が、子の健全な育成にとって有益であるという基本的な立場にたち、子の福祉を害するなどの特段の事情がある場合を除いて、原則として認めるべき、という運用になっています。

 ☛裁判所が公開している動画を見ると、家庭裁判所の運用がよくわかります。
  ・離婚をめぐる争いから子どもを守るために
  ・子どもにとって望ましい話し合いとなるために
  

 家庭裁判所では、以下のような判断要素によって、面会交流を認めるかどうか、どのような方法・頻度で交流するかといったことを考えることになります。

 

① 子どもに関する要素(子どもの意思、年齢、子どもの心身や生活環境におよぼす影響)
② 監護親に関する要素(監護親の意思、監護親の養育監護に対する影響、監護親の生活状況)
③ 非監護親に関する要素(非監護親の問題点)
④ 両親の関係に関する要素(別居・離婚に至った経緯、別居・離婚後の関係性)等

 

 子の福祉を最優先に考慮しなければならないことから、特に①の子どもに関する要素が最重要視されます。
 子どもの意思に関しては、子どもが非監護親に嫌悪、拒否、恐怖などの感情を示している場合には、面会交流が認められない方向になります。
 もっとも、両親間の対立が激しかったり、長期間交流していなかったりすることで、当初は不安感や抵抗感を示す子どもも少なくありません。特に幼年の子は、一番身近な監護親の前では、「会いたくない」と言っていても、実際に会ってみると楽しく過ごした・・・ということが多々あります。一緒に暮らす監護親の愛情を守りたいために、監護親の気持ちに沿う反応を見せることがあるのです。また、時間をかけてならしたり、面会交流の方法を工夫することで、子どもの不安や抵抗感が解消されることもあります。
 子どもの表面的な反応だけで、面会交流の可否を決めるべきでない場合もあることに留意しましょう。

 

◇面会交流が制限、禁止されうる場合とは?
 家庭裁判所の基本的な立場は会わせる、ですが、もちろん制限、禁止すべきケースもあります。そのような場合は、しっかりと事情を説明していく必要があります。
 では、子の福祉を害するとして、面会交流が制限、禁止されうるのは、どんな事情がある場合でしょうか。
 例えば、①子の連れ去りのおそれがある場合、②非監護親から虐待のおそれがある場合、③非監護親から監護親に対する暴力がある場合などが考えられます。
 子どもを監護親のもとから突然連れ去るのは、子どもから生活基盤を失わせる行為ですので、面会交流を制限、禁止すべき事由にあたります。また、子どもへの虐待行為は言うまでもありません。監護親に対する暴力も、子どもの面前で行われれば、心理的虐待にあたるため、面会交流を制限・禁止する方向になり得ます。
 また、面会交流について合意した約束事を守らないといったことも、その内容が重大だったり、何度も約束を破ったりした場合には、子どもの利益を害し、当事者間の信頼関係を損なうことでもあるため、面会交流を制限・禁止するべき事由にあたります。

 なお、養育費を支払わないから、会わせたくないというご相談をいただくこともありますが、面会交流の実施と養育費の支払いは対価関係にないため、支払わないことをもって面会交流を制限・禁止することはできません。
 もちろん、養育費の不払いはそれはそれで大問題です。強制執行などの手段をもって解決できる場合もあります。諦めず、是非ご相談ください。
 
◇子どもと会う、会わせるのはいいけれど、相手方には会いたくない・・・
 まだお子さんが小さく、一人で行動ができない場合には、どうしても監護親が面会場所までお子さんを連れて行く必要があります。別居や離婚に至った当事者どうしですから、顔をあわせるのに抵抗があるのも当然です。
 そのような場合には、例えば、面会交流に関する支援を行っている団体を利用することが考えられます。
面会交流支援団体は、例えば、次のようなことをしてくれます。


・連絡調整:具体的な日時や場所等を決めるための連絡を代わりに行ってくれます。 
・子どもの受渡し支援:子どもの受渡しを代わりに行ってくれます。
・見守り支援:面会交流の場に付き添い、面会交流を見守ってくれます。


◇今回のポイント

① 一番大切なのは「子の福祉」
② 面会交流には、直接会うだけでなく、様々なメニューがあります
③ 面会交流支援団体をうまく利用しましょう

 面会交流について、当事者間ではなかなか話し合いができない、どういうことを決めたらいいか分からないということがあろうかと思います。
 そのような場合は、是非、当事務所へご相談ください。ご不安な点、当事者間で争点になっている点を丁寧にお聞きし、お子さんの利益に適う面会交流の可否、条件、そして手続の進め方についてアドバイスいたします。


 ご相談のご予約はこちらから!

(弁護士中瀬奈都子)

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.10.21更新

NECD

 2021年12月23日、横浜地方裁判所は、原告のNECディスプレイソリューションズ株式会社(現、シャープNECディスプレイソリューションズ株式会社。以下、「会社」という)に対する地位を確認する原告勝利の判決を下した。本件は、大学新卒入社後、業務によって原告が適応障害(一時的に、ストレスを原因とした苦悩を生み、そのために気分や行動面に症状が現れる病気。憂うつな気分、不安感が強くなり、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になる)を発症したところ、会社及び指定が、原告が発達障害(生まれつきの能力・発達に特徴があり社会生活上支障がでる障害)であると決めつけ、適応障害が治癒した後も、障害者としての雇用を希望しない限り、会社には復帰する職場がないとし、これに納得出来ないとする原告を休職期間満了による退職として、実質的に解雇したものである。本事件は、昨今の労働現場で急増している労働者の精神疾患による休業について、自らの労働安全衛生上の責任が問われるべき企業が、責任を労働者に転嫁し、休職制度を悪用して解雇規制を潜脱しようとしたもので、現代的な特徴がある。以下、本件の経緯、横浜地裁判決の判旨及び本件の社会的背景について、精神医学が社会的抑圧の手段として濫用される歴史も踏まえて報告する。


第1 休職制度を悪用した職場排除の経緯


1 原告の適応障害発症・悪化
(1)適応障害の発症
 2014年4月、原告は、大学新卒で正社員としてNECDSに入社した。入社後は、同僚や上司のと、業務に真面目に取り組んでおり、入社1年目の原告のコミュニケーション能力に問題がなかったことは、会社も認めている。もっとも、原告の仕事量や仕事内容は、新入社員である原告にとって、やむにやまれず残業をしなくては達成できないものであった。他方、上司は、残業時間規制のみを形式的に順守させようとし、原告の置かれた状況を理解せず、ただ叱責するのみで、原告は業務量と残業時間規制の板挟みになった。このような業務負荷に加えて、原告は、お酒が飲めないのに飲み会に参加せざるを得ない環境に放置されたというアルコールハラスメント、2014年12月の職場の忘年会でのお尻比べなどのセクシャルハラスメント、密輸行為に加担させられたこと等の精神的負荷を受けていた。これらにより、原告は、入社2年目になる頃には適応障害を発症するに至った。


(2)会社は原告の発症理由に対する訴えに何ら対策をせず悪化していったこと
 発症後の入社2年目の2015年6月の会社定例の産業医面談時には、原告は、どんな辛いことでも耐えるしかないと、その追い詰められた心理状態について、涙ながらに訴えていた。このとき、会社は、当時の原告の状態を受け止め、配慮した働き掛けをすることによって改善する機会があったにもかかわらず、「飲み会幹事役がしんどいなら代わっていいことを投げかけた」程度のことしかしなかった。当時、会社社内でもマネジメント不足が原告の症状の原因である可能性が指摘されていた。しかし、会社の産業看護師が「大人の発達障害の疑い」を指摘し、原告側に責任転嫁する発言をしたことに端を発し、会社は、原告を発達障害と決めて動くようになった。原告は、会社に何を言っても無駄だと絶望し、ただ黙って耐えながら仕事をするしかないと心を閉座さざるを得なくなるほどまで追い詰められ、正常なコミュニケーションが困難な状況となった。その後も、会社は、原告の業務量を減らす等の原告の心身への適切な配慮をしなかった。会社は、原告が過精神的ストレスを受け続けるのを漫然と放置した結果、適応障害の症状を悪化させており、症状の悪化の原因は会社のマネジメント不足にある。しかし、2015年12月19日、会社の上司らは原告の意に反して、4人がかりで原告の両手両足を掴んで宙吊りにし、約百メートルにわたって移動して、職場から閉め出すという、暴力的に職場から排除するという暴挙に至った。


2 会社は指定医と共謀して原告を発達障害と決めつけて退職に追い込んだ
  会社は、原告を職場から排除をした後も、発達障害を対象としたリワークプログラムを受講させ、指定医に対して、原告の同意なく、初診に先立ち会社の一方的見解を送り付け、その後も、事実無根のことを伝えて、発達障害であると所見を固めさせた。そして、会社と指定医は秘密裡に連絡をとりあいながら、障害者雇用に追い込む意図を共有し、発達障害であることを前提とする診療情報提供書を指定医に作成させた。指定医が作成した診療情報提供書には、「傷病名」として「能力発達に元々特性があり、業務に支障をきたす人」と記載されており、これは発達障害の定義に他ならない。指定医は、発達障害の確定診断のため、必要な検査も行っておらず、医学的に承認された診断基準も満たしていなかった。このため、医学的には、発達障害などと診断することは不可能であった。それにもかかわらず、指定医は、会社から、依頼を受け、会社が原告に対して職復帰を拒絶する根拠として使用することを知り、あるいは、少なくとも、予見可能な状況で、これを作成して提供したものであった。
 そして、会社は、指定医の作成した発達障害を意味する診療情報提供書を受容し無い限り、復職を認めない態度をとり続けた。これは、原告にとっては、会社での雇用を諦め、障がい者雇用を受容することになり、応じることの出来ない条件であった。結局、会社は、電機・情報ユニオンとの労使交渉の末、一方的に休職期間満了での退職の通知を行った。


3 発達障害を理由とした解雇規制の潜脱
  弁護団は、本件の提訴のときから、指定医の診療情報提供書は、発達障害の確定診断をするために必要な検査も行っていなければ、診断基準も満たしていないことを指摘した。さらに、提訴後、わが国において発達障害の臨床医学を代表する医師である市川宏伸医師の診察で必要な検査を受け、ICD-10等の医学的に承認された診断基準に照らして、原告が発達障害ではないと正式に診断した意見書を提出した。訴訟において、専門医による適切な診察の結果、原告が発達障害にり患していないことが確定的となり、追い詰められた会社は、原告に「何らかの精神疾患による健康状態の悪化により業務遂行に必要なコミュニケーション能力、社会性等を欠く状態となり、労働契約における債務の本旨に従った履行の提供ができない状態になったこと」を休職事由として主張するに至った。このような主張は、会社が休職制度を悪用し、実際は労働法の解雇規制を潜脱しようとする本音が表れたものである。
  発達障害は、その要素は「どんな人でも」持っており、「特性の濃い人から薄い人までグラデュエイション」があるという特徴がある。このため、「発達障害」の診断基準を満たさないため、「疾病」とは診断出来ない場合でも、その「特性」故に、病気が再発する恐れがある等として、元の職場に復帰させることを拒絶することが容認されるようなことがあれば、使用者は、脱法的に、好ましくないと考える労働者を、事実上、解雇することが出来るようになる。そのようなことが黙認されるなら、企業は好ましくないと考える労働者に対して、意図的に、業務上、人間関係上、高ストレスの負荷を与えることで、労働者をメンタル疾患に陥れ、後は、誰もが有する発達障害の特性を問題とすることで、脱法的に、労働者を事実上解雇出来ることになる。かかる新たな解雇規制の潜脱の手法は、到底許されない。

第2 横浜地裁判決の要旨 
  弁護団の「休職制度を悪用した解雇規制の潜脱は許されない」という訴えに対して、横浜地裁判決は、正面から答え、労働者の保護のため休職制度を悪用した解雇規制潜脱の手法を断じ、地位確認を認容した。


1 判決文要旨
 「復職の要件とされている「休職理由が消滅した」とは、原告と会社との労働契約における債務の本旨に従った履行の提供がある場合をいい、原則として、従前の職務を通常程度に行える健康状態になった場合をいうものと解するのが相当である。」
 「もっとも、職務を通常の程度に行える労働能力を欠くことは、いわゆる普通解雇の解雇理由ともなり得る」
「従業員が私傷病により休職したときに、その復職の要件である「従前の職務を通常の程度に行える健康状態」を、当該従業員が私傷病により労働能力を欠くことになる前のレベル(以下「私傷病発症前の職務遂行のレベル」という。)以上の労働が提供できることになったことを意味する」
「私傷病発症前の職務遂行のレベル以上のものに至っていないことを理由に休職期間満了により自然退職とすることは、いわゆる解雇権濫用法理の適用を受けることなく、休職期間満了による雇用契約の終了という法的効果を生じることになり、労働者の保護に欠けることになる。」
 「原告の休職理由である適応障害から生じる症状とは区別されるべき本来的な人格構造又は発達段階での特性が含まれており、休職理由に含まれない事由を理由として、いわゆる解雇権濫用法理の適用を受けることなく、休職期間満了による雇用契約終了という法的効果を生じさせるに等しく、許されないというべきである」

2 判決の評価
  我が国において、労働者の闘いに応え、裁判所が判例として確立してきた解雇規制法理は、労働契約法で実定法化されるに至っている。これに対して、企業は、正面から解雇規制法理を突破するのは困難であるため、潜脱目的では新たな首切り手法を生み出してきた。
  解雇規制潜脱の手法は、電機・情報ユニオンに寄せられた相談等からは、以下の3類型がみられると考える。まず、①組織的に計画された退職強要面談等を繰り返して精神的に追い込み自主退職に追い込む手法(同じく電機・情報ユニオンの組合員が原告として当弁護団が担当した日立製作所退職強要事件令和2年3月24日横浜地裁判決等 判例時報2481号75頁)、②業務で高いストレスを加えて精神疾患を発症させ、休職、そのまま退職に追い込む手法、③そして、休職事由となった精神疾患が寛解し復職可能な状態にもかかわらず、会社の意を受けた産業医・指定等が精神疾患とレッテル張りをし退職・障害者雇用に追い込む手法である(神奈川SR経営労務センター事件平成30年5月10日横浜地方裁判所判決 労判1187号39頁、当事件は「ブラック産業医」問題としてキャンペーンを行った)。本件は、第3類型に該当し、高いストレスの労働現場で、一度、メンタル系疾病に罹患した労働者については、障がい者である等の口実を設けて職場から排除し、最終的には休業期間満了で退職させるという精神疾患を利用した解雇規制潜脱の手法が、典型的に現れた事件である。本判決は、このような新たな手法の問題点を明らかにし、「当該傷病とは別の事情」を理由に「休職期間満了により自然退職とすること」は、「解雇権濫用法理の適用を受けることなく、休職期間満了による雇用契約の終了という法的効果を生じさせることになり、労働者保護に欠ける」として、脱法的手法を断罪し、休職期間満了による退職を無効としたものである。本判決は、裁判所として、長年労働者の闘いに応えた司法の確立してきた「労働者保護」のための「解雇規制」の潜脱を看過せず、法の番人としての職責を果たそうとする司法として矜恃を示した判決と評価できる。

 

第3 本件の社会的背景
1 急増するメンタル疾患者に対しての復職支援が社会的問題
  わが国において、精神疾患の急増と、休職者への復職支援は社会問題となっている。厚生労働省の労働安全衛生調査(2020年)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%、退職した労働者は3.7%もおり、メンタル不調は、労働者の休職・退職の原因となっている。休職する労働者の割合を産業別に見ていくと、情報通信業、電気・ガス・熱供給・水道業、学術研究、専門・技術サービス業、複合サービス事業が高くなっており、特に情報通信(休職24%・退職12%)とストレスが高く、休職後・退職する傾向がみられる。厚生労働省においても、「心の健康問題により休業した労働者の職場支援手引き」が制定され、各企業において復職支援が進められているところである。 

 
2 精神医学が社会的抑圧の手段として濫用される歴史
  精神疾患の場合は、身体疾患と異なって、精神疾患の根拠となるような身体的異常が未だ見出されていないことや、そもそも病気なのかということが問題になってくるなど、未だ客観的・科学的には解明しきれていない分野という特性がある。その結果、精神医学が、社会にとって好ましくない者に対する社会的抑圧の手段として濫用される危険という問題が古くからあった。旧ソ連では、理想的な政治形態とみなされていた共産主義に反抗することは『狂気』の表れと考えられ、不活発型統合失調症(slggish schizophrenia)という診断の下に、政治犯の実に1/3が精神病院に強制的に収容され、抗精神病薬の投与などによって『治療』を試みられていたという歴史を経験している。
  このような労働問題と精神医療の問題については、わが国でも、1960年代の産業医制度の創設時点から、会社にとって好ましくない労働者を病気であるとして排除する制度になる危険性が指摘され、「治療とはいいつつ、精神科医は不調者を結局は排除する役割を担い、企業の経営合理性に利するものにしかならないのではないか。さらに、むしろ企業にとって不都合な人員を恣意的な診断によって放逐するようなことにさえ手を染めているのではないか」(荻野達史「産業精神保健の歴史ー1950年代~現在まで」)という批判が、盛んに行われてきた。
  特に、現代も、「我々は現在、『ブラック企業』『追い出し部屋』という言葉に象徴される現象として、一定数の企業が人員削減をとくに『自己都合退職』の形で進めるために様々な“手法”を用いていることを改めて知るようになった。こうした状況のなかで、産業精神保健に関わる活動やその知識・情報が、不適切に利用される、もっといえば“悪用”される危険性について考えないとすれば、それも楽観的に過ぎるだろう。」(萩野達史 同論文)と指摘されているところである。
 ところが、2006年の安衛法改正とメンタルヘルスに関する新ガイドラインの制定により、職場の安全衛生確保の徹底が社会問題となり、その担い手としての産業医の役割が大きく位置づけられるなど、産業医に対する役割・期待が増大する一方で、会社にとって好ましくない労働者を病気であるとして排除する制度になる危険性という問題が忘れられ、資本の論理に飲み込まれないよう職務を全うすべきことの緊張感が薄らぎ、産業医制度創設時に盛んに議論された危うさの問題がそのまま表面化してきているといわざるを得ない。


3 急速に広がる「発達障害」の病名を利用しての職場からの排除
  以上のような労働問題に対する精神科医の関わりの問題状況にあって、とりわけ、慎重でなければならないのが、発達障害に関わる問題である。発達障害は、それまでは精神疾患とはとらえられていなかったものが、近年、精神医学的に疾患と捕らえられるようになったものであり、かつ、治癒を前提としない障害として、一時的な疾病とは異なった位置づけを与えられるからである。発達障害有病率は、三十年ほど前までは、一万人に数人と言われていたが、調査が行われるたびにその数が増え、2000年頃には、1000人あたり7~8人と言われるようになり、さらに最近の調査では、百人に、1.4人と、ついに1%を突破しており、数十倍にも増えた急増している傾向にある。急上昇の原因として、定型発達からはずれれば、すべて「発達障害」に見えてくるため、競うように「発達障害」の診断が下された結果、濫用的な過剰診断がなされている。「発達障害」の病名の広がりの一方で、それぞれの「発達の個性」まで「障害」であり社会的に排除される風潮が危惧されている。そのため、「発達障害」の診断を的確に実施すべく、近年では、診断アセスメントツールが開発されている。
しかし、本件において、指定医は、必要な検査や診断をほとんど行わずに、原告を「発達障害」という障害者とし、会社の職場排除に加担した。本件では、今、急速に社会にひろがっている「発達障害」の病名を悪用し、労働者を障害者扱いにし、退職に追い込む手法が用いられたものである。


4 指定医の責任
  前述のとおり、メンタル疾患を契機とする脱法的解雇には、会社の意向を汲んだ会社の産業医や指定医の関与が散見され、問題とされてきたため、本件では指定医の注意義務違反についても、正面から責任を追及した。しかし、指定医の責任について、横浜地裁判決は、「就業規則上、原告の復職の可否を判断するのは被告会社であり、主治医として患者の復職が認められず退職に至らせる蓋然性のあるような医学的意見を述べてはならない旨の義務が一般的に存在するものとは解されない」「当該患者を退職又は障害者雇用に追い込む目的で殊更偏頗又は著しく不合理な意見を述べるといったような事情がない限り、主治医の診療情報提供書の記載に注意義務違反が認められることはないと解される」と、指定師の注意義務違反の立証について高いハードルの定め、指定医の義務違反を認めなかった。横浜地裁判決は、精神科医療が差別に悪用されてきた歴史の中での本件の位置づけを正解せず、安易に医師を免責しており、問題のある判決である。


第4 最後に
  横浜地裁判決に対して、会社は控訴をせず、現在復職条件についての団体交渉が会社と電機・情報ユニオンの間で進められている。電機産業界では、 2011年ころから電機リストラの嵐が吹き始め、既に64万人にも及ぶ正規労働者がリストラされているが、未だに終息を見ることがない。対象とされた労働者は、組織的に強い精神的負荷をかけられて、退職を迫られている。原告と弁護団は、原告が所属する電機・情報ユニオンと共にその実態を告発し、本判決を梃子に、原告の職場復帰を実現すると共に、脱法的手法による不当なリストラのない社会を目指して奮闘したい。 


弁護団:藤田温久、川岸卓哉、畑福生(川崎合同法律事務所)、高橋宏(横浜合同法律事務所)

(本原稿は「季刊・労働者の権利」2022年7月号に寄稿した原稿です)

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.08.04更新

日本労働弁護団 季刊紙 労働者の権利346号(2022年7月発行)に、川岸卓哉弁護士の「休職制度を悪用した解雇規制の潜脱手法を断罪~NECディスプレイソリューション横浜地裁判決~」が掲載されました。

労働者の権利346号の目次は、こちらからご覧下さい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.07.04更新

 川崎合同法律事務所では、「川崎じもと応援券(第3弾)」法律相談料のお支払いに、ご利用可能です。

(2022年12月31日まで利用可)

 是非この機会に、「川崎じもと応援券」をご利用の上、ご相談ください。

川崎じもと応援券(第3弾)については、こちらをご覧下さい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.03.04更新

2022年3月2日(水)
川崎駅頭において、ロシア軍のウクライナ侵略に反対するスタンディングデモを行いました.

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投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.01.28更新

 神奈川土建一般労働組合機関紙「けんせつ神奈川」2022年1月5日(第622号)に、弊所の山口毅大弁護士が寄稿した、「緊急事態条項の欺瞞と危険性」が掲載されました。

yamaguchikennset!!

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.01.19更新

NECディスプレイソリューションズ休職期間満了雇止め事件 勝訴判決声明

2021年12月23日、横浜地方裁判所にて、NECディスプレイソリューションズ株式会社(現シャ ー プ NECディ ス プ レ イ ソ リ ュ ー シ ョ ンズ 株 式 会 社)で休職期間満了で雇止めされた事件について、地位確認を認める勝訴判決を得ました。
弁護団には当事務所の藤田温久弁護士、川岸卓哉弁護士、畑福生弁護士が加わっています。以下、判決を受けての声明です。

 声 明

 本 日 、 横 浜 地 方 裁 判 所 第 7民 事 部 (員 鍋 美 穂 子 裁 判 長 )は、 原 告 伊 草 貴 大 の NECディ ス プ レ イ ソ リ ュ ー シ ョ ン ズ 株 式 会 社 (現 、 シ ャ ー プ NECディ ス プ レ イ ソ リ ュ ー シ ョ ンズ 株 式 会 社 。 以 下 、 「 NECDS」 と い う )に 対 す る 地 位 を 確 認 す る 原 告 勝 利 の 判 決 を 下 し た が 、 同 社 に 対 す る 損 害 賠 償 及 び NECDSの 指 定 医 に 対 す る 損 害 賠 償 は 認 め な かった。
 本 件 は 、 新 卒 入 社 後 、 パ ワ ハ ラ ・ セ ク ハ ラ 等 に あ っ た 原 告 が 適 応 障 害 を 発 症 し た と ころ 、 NECDSが 、 そ の 適 応 障 害 は 原 告 の 発 達 障 害 に 起 因 す る も の で あ る と 一 方 的 に 決め つ け 、 適 応 障 害 が 治 癒 し た 後 も 、 障 害 者 と し て の 雇 用 を 希 望 し な い 限 り 、 NECDSに は 復 帰 す る 職 場 が な い と し 、 こ れ に 納 得 出 来 な い と す る 原 告 を 休 職 期 間 満 了 に よ る 退職 と し て 、 実 質 的 に 解 雇 し た も の で あ る 。
 本 事 件 は 、 昨 今 の 労 働 現 場 で 急 増 し て い る 労 働 者 の メ ン タ ル 疾 患 に よ る 休 業 に つ い て 、 自 ら の 労 働 安 全 衛 生 上 の 責 任 が 問 わ れ る べ き 被 告 企 業 が 、 労 働 者 に 発 達 障 害 が あ る 等 とし て 、 責 任 を 転 嫁 し 、 実 質 的 な 解 雇 を 行 っ た 事 件 で あ る と い う 現 代 的 な 特 徴 が あ る 。
特 に 、 発 達 障 害 的 要 素 は 「 ど ん な 人 で も 」 持 っ て お り 、 「 特 性 の 濃 い 人 か ら 薄 い 人 ま で グ ラ デ ュ エ イ シ ョ ン 」 で あ る と い う 特 徴 が あ る 。 こ の た め 、 「 発 達 障 害 」 の 診 断 基 準 を 満た さ な い た め 、 疾 病 と は 診 断 出 来 な い 場 合 で も 、 そ の 特 性 故 に 、 病 気 が 再 発 す る 恐 れ が あ る 等 し て 、 元 の 職 場 に 復 帰 さ せ る こ と を 拒 絶 す る こ と が 容 認 さ れ る な ら 、 好 ま し く ない と 考 え る 労 働 者 を 正 に 脱 法 的 に 、 事 実 上 、 解 雇 す る こ と が 出 来 て し ま う と い う こ と に も な り か ね な い 。
 本 判 決 は 、 こ の よ う な 新 た な 手 法 の 問 題 点 を 明 ら か に し 、 「 当 該 傷 病 と は 別 の 事 情 」 を理 由 に 「 休 職 期 間 満 了 に よ り 自 然 退 職 と す る こ と 」 は 、 「 解 雇 権 濫 用 法 理 の 適 用 を 受 け る こ と な く 、 休 職 期 間 満 了 に よ る 雇 用 契 約 の 終 了 と い う 法 的 効 果 を 生 じ さ せ る こ と に な り 、 労 働 者 保 護 に 欠 け る 」 と し て 、 本 件 の よ う な 脱 法 的 手 法 を 断 罪 し 、 休 職 期 間 満 了 に よ る 退 職 を 無 効 と し た も の で あ る 。
 も っ と も 、 本 件 で は 、 NECDSは 、 原 告 の 意 に 反 し て 、 4人 が か り で 原 告 の 両 手 両 足 を 掴 ん で 宙 吊 り に し 、 約 百 メ ー ト ル に わ た っ て 移 動 し て 、 職 場 か ら 閉 め 出 す と い う 、例 を 見 な い 暴 力 行 為 に も 及 ん で い る が 、 本 判 決 は 、 正 し く 事 実 を 認 定 せ ず に 損 害 賠 償 を 排 斥 し た 。
 ま た 、 メ ン タ ル 疾 患 を 契 機 と す る 脱 法 的 解 雇 に は 、 会 社 の 意 向 を 汲 ん だ 会 社 の 産 業 医や 指 定 医 の 関 与 が 散 見 さ れ 、 問 題 と さ れ て き た た め 、 本 件 で は 指 定 医 と し て 関 与 し た 医師 に つ い て も 、 正 面 か ら 責 任 を 問 題 と し た が 、 本 判 決 は 、 原 告 の 実 質 的 解 雇 と の 相 当 因 果 関 係 を 否 定 し 、 指 定 医 の 責 任 を 曖 味 化 し た 。
 電 機 産 業 界 で は 、 2011年 こ ろ か ら 電 機 リ ス ト ラ の 嵐 が 吹 き 始 め 、 既 に 64万 人 に も 及 ぶ 正 規 労 働 者 が リ ス ト ラ さ れ て い る が 、 未 だ に 終 息 を 見 る こ と が な い 。 対 象 と さ れた 労 働 者 は 、 組 織 的 に 強 い 精 神 的 負 荷 を か け ら れ て 、 退 職 を 迫 ら れ て い る 。 原 告 と 弁 護 団 は 、 原 告 が 所 属 す る 電 機 ・ 情 報 ユ ニ オ ン と 共 に そ の 実 態 を 告 発 し 、 本 判 決 を 梃 子 に 、原 告 の 職 場 復 帰 を 実 現 す る と 共 に 、 脱 法 的 手 法 に よ る 不 当 な リ ス ト ラ の な い 社 会 を 目 指 し て 奮 闘 す る も の で あ る 。
2021年 12月 23日
原 告 ・ 弁 護 団 O NECの 不 当 解 雇 と た た か う 伊 草 さ ん を 支 援 す る 会

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.12.10更新

 2021年11月30日、横浜地方裁判所川崎支部は、一般財団法人NHKサービスセンター(以下「法人」といいます。)の行った原告の雇用継続拒否を有効として、原告の労働者としての地位の確認を認めず、かつ法人が原告に対する安全配慮義務を怠ったとはいえない旨の不当判決を言い渡しました。

 

1 提訴に至る経緯
 原告は、2002年4月から、1年契約更新で、法人の運営するNHK視聴者コールセンター(現NHKふれあいセンター(放送))において視聴者対応を行うコミュニケータとして採用されました。その後、原告は16回にわたる契約更新を経て、2019年には無期雇用へと転換するに至りました。
 もっとも、原告は、無期転換を果たしたその年、2019年末をもって定年退職となり、その後の雇用継続を拒否されました。また、同コールセンターでは、視聴者からの問合せに名を借りた暴言やわいせつ発言を内容とする電話が多く寄せられ、原告を含むコミュニケータは精神的負担を抱えていたものの、法人は、そのような迷惑電話に対しても、切断したりせずに丁寧に対応することをコミュニケータに求め、コミュニケータの精神的負担を減らす措置を十分に講じてはきませんでした。これに対し、原告は、労働者としての地位の確認及び安全配慮義務違反を主張し、本件訴訟を起こしました。

 

2 今般下された不当判決の内容
 しかしながら本判決は、地位確認について、雇用継続の拒否に客観的合理的理由及び社会的相当性があるとして、本件雇用継続拒否を有効と判示しました。
 原告は16回も更新されるほどに真面目に業務に取り組んで来たにもかかわらず、本判決は、原告の視聴者対応について、一つを取れば些細なものと見得る余地があるとしながらも、法人の主張を前提に原告の職場からの排除を容認しました。
 また、本件コールセンターにおいて、わいせつ発言や暴言を内容とする迷惑電話が横行している職場環境には背を向けて、法人の安全配慮義務を認めず、労働者を捨て駒のように扱う法人の姿勢を追認する判断を行いました。

 

3 社会的にもセクハラ・カスハラへの対策の検討が進められていること
 昨今ハラスメントへの意識は向上しており、厚労省もセクハラ、パワハラ等に対する指針を発出しており、いわゆるパワハラ防止法が成立・施行されるに至っており、これに加えて、2021年1月21日からは、国において、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」が設置され、カスハラに対する対策の検討が進められています。
 近年、我が国において、セクハラ・カスタマ―ハラスメント(カスハラ)等のハラスメントを防ぐべき社会規範が現在進行形で形成されているなか、本判決はコミュニケータも人格を持つ個人として尊重されることは当然であるとしながらも、社会の流れに逆行し、接客業にあることを理由にハラスメントを受忍すべき判断をしたものであり、セクハラやカスハラに苦しむ多くの労働者を見放すきわめて不当な判決です。
また、法人は、迷惑電話に対する法的措置を怠った理由としてNHKの最終的な判断に基づくものである旨述べていました。公共放送であるNHKの対応は、法人によるセクハラ・カスハラ放置の原因となっていたのであって、決して許されてはなりません。

 

4 おわりに
 原告・弁護団・全川崎地域労働組合は、本判決の重要な意義を大きな力とし、最終的な原告の救済、ひいては高年齢者の雇用を守り、職場におけるハラスメントに対する適切な対処が行われるよう、今後も闘いぬく決意です。ご支援お願いいたします。
 弁護団は当事務所の川岸卓哉弁護士、畑 福生弁護士です。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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