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2020.02.10更新

藤田弁護士の紹介は、こちらをご覧下さい。
                                             

1 「退職届を出さない者は営業譲渡先の会社に雇用しない」として19年前に解雇され14年前に解雇の無効が最高裁において確定・全面勝利したあの閉鎖解雇争議の金字塔:大船自動車学校解散解雇事件(以下「勝英自動車学校事件」)で、再び亡霊が動き始めた。


2 事案
(1) 全株式の取得
    株式会社勝栄(岡山県)は、2000年10月、大船自動車学校(「湘南センチュリーモータースクール」に変更)を経営する大船自動車興業株式会社(以下「大船興業」)の100%株主であるA社が所有する大船興業の株式を全部取得した。

 

(2)突然の解雇予告と退職届

 新経営陣は全従業員に対し、11月16日、「11月末日までに退職届を出さない者は12月15日をもって大船興業を解雇する。11月末日までに退職届を出した者は、勝栄に正社員または契約社員として雇用し大船興業に出向させる」旨を通告した。
  しかし、退職届を出すことは、勝栄の劣悪な労働条件への切り下げ(労働時間の大幅延長、大幅減給)、「全員課長」(名目だけの1人課長、残業代不支給、組合脱退を図る)などを認めることに他ならず、神自教大船自校支部(以下「大船支部」)は退職届を提出せず団交を求めた。


(3) 営業譲渡と解散
    大船興業は勝栄と、同年12月15日、「湘南センチュリーモータースクール」の営業全部を譲渡する契約を締結した(以下「本件営業譲渡契約」)。
    また、大船興業は、前同日、臨時株主総会で、本件営業譲渡を承認し、同社の解散を決議し、大船支部員らを全員解雇した。
    12月16日、退職届を出した従業員は勝栄に雇用されたが、大船支部員らは雇用されなかった。9人の大船支部員は、地位確認などを求め提訴した。


3 横浜地裁判決(2003年12月16日・福岡右武裁判長)
(1) 解雇の効力

 ① 大船興業と勝栄は、遅くとも本件営業譲渡契約締結時までにa「営業譲渡にともない従業員を移行させることを『原則』とする」、しかしb「相当程度の労働条件切下げに異議のある従業員を個別に排除する『目的』達成の『手段』として、退職届を出した者を勝栄が再雇用し、退職届を出さない者は解散を理由に解雇する」と合意した、
 ② ①の合意は、aは有効だがbは民法90条(公序良俗)に反し無効である。
 ③ 本件営業譲渡契約中の「勝栄は大船興業の従業員の雇用を引き継がない。但し、11月30日までに再就職を希望した者は新たに雇用する。」との規定は、①bの『目的』に沿うように符節を合わせたものであり、同様に民法90条(公序良俗)に反し無効である、
 ④ 以上、原告らに対する解雇は、形式上解散を理由にするが、①bの『目的』で行われたものであり解雇権の乱用として無効である。


(2) 労働契約の承継の有無
     原審判決は、営業譲渡契約に伴う「当然承継」は否定し、譲渡人と譲受人の特別の合意を要するとした上で、(1)④により原告らは解散時に大船興業の従業員としての地位を有することになり、(1)①の合意aの『原則』通り営業譲渡の効力が生じる2000年12月16日に労働契約の当事者としての地位が勝栄との関係で承継される、とした。


(3) バックペイも全面的に認容された。


4 東京高裁判決(2005年5月31日・西田美昭裁判長)
(1) 解雇の効力・労働契約の承継の有無
   本判決は、原審判決のうち、(1)解雇の効力(2)労働契約の承継の有無についての判断は、全面的に支持した。


(2) バックペイ
   他方、会社側が、控訴審で本格的に主張し始めたバックペイの減額を図る主張について、新たに正当な判断を下した。すなわち、会社は、バックペイ算定の基礎としての平均賃金額算定に当たって、①現実的に勤務して初めて認められるものである時間外手当及び休日手当、②教習内容、時間により支給される路上教習手当、高齢者教習手当、③実費補償的手当である食事手当等の控除を主張した。しかし、本判決は、①②③各手当の意義を分析した上で、会社の責めに帰すべき事由により労務の提供という債務の履行が不能であることから、会社は民法536条2項本文により賃金支払義務を負うのであり、労働者らが現実に労務に従事することができないことは民法536条2項本文が適用される場合に当然に予定されているところであるから、現実に勤務しないことを理由に①②③各手当を平均賃金額算定の基礎から控除することはできない、としたのである。


(3) 弁護団は、直ちに、会社取引銀行等に仮執行をかけ、本判決確定までのバックペイ全額を確保した。


5  最高裁判決(2006年5月16日)
   最高裁は、平成18年5月16日、会社の上告を棄却し、上告受理申立を受理しない旨の決定を下した。


6 その後の経緯
(1) 勝栄は控訴審係属中(和解継続中)に㈱湘南センチュリーモータースクールという会社を設立し、「湘南センチュリーモータースクール」を再び営業譲渡した。勝栄に対する勝訴が確定しても支部員らを職場へ復帰させないため、更には遠方へ配転するため(この間、勝栄は続々と傘下の自動車学校を分離し独立法人化しており、現時点で勝栄直営の自動車学校は岡山の本校のみとなっている)の悪辣な策謀だった。


(2)会社は、最高裁判決確定後の分の賃金支払いを拒否したが、労働者側が先取特権に基づく差押等の法的手段を講じることで任意支払の協定締結に応じた。にも拘わらず、繰り返し賃金支払を懈怠し、その度に謝罪して支払を再開してきた。
 他方、会社は「湘南センチュリーモータースクール」への復職は拒否し続け,予想通り、原告らに対し岡山への就労請求を何度か行い解雇の脅しをかけてきた。しかし、労働者側は新たな提訴も辞さない構えで臨み、会社は原告らの反論に抗することができずいずれも撤回してきたものである。


(3)こうして、会社は13年間の長期にわたって原告らに賃金を支払い続け、定年となった労働者には退職金規程に基づく退職金を支払ってきた。


7 本件提訴
(1) 解雇当時9人(男7,女2)であった労働者のうち男性6人は既に定年退職していた。最後の男性が定年を迎えたとき、会社は、教習指導員としての資格が更新されていないから、教習指導員としての退職金は支払えないので一般事務職としての退職金のみを支払うとして大幅に減額した退職金を支払ってきた。また、残る2人の女性に対しては、岡山への就労請求を行い、就労の実態がないとして賃金の支払を拒否してきた。


(2)労働者側は、これまでの実績と協定の趣旨並びに高裁判決の趣旨からして退職金減額はあり得ないし、前述の就労妨害の法人格濫用により就労不能の状況にしておきながら就労がないことを理由に賃金を支払わないことも許されないとして、未払退職金と未払賃金の支払を求める本訴訟を提訴するに至った。


(3)会社側は、大半が定年となり「弱体化」した労働者側が屈すると考えたものであろう。しかし、「どっこい、生きていた」のである。悪辣な亡霊は最後まで叩ききらねばならない。


 弁護団は、高橋宏(横浜合同法律事務所)、藤田・畑(川崎合同法律事務所)である。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.10更新

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1 「退職届を出さない者は営業譲渡先の会社に雇用しない」として19年前に解雇され14年前に解雇の無効が最高裁において確定・全面勝利したあの閉鎖解雇争議の金字塔:大船自動車学校解散解雇事件(以下「勝英自動車学校事件」)で、再び亡霊が動き始めた。


2 事案
(1) 全株式の取得
    株式会社勝栄(岡山県)は、2000年10月、大船自動車学校(「湘南センチュリーモータースクール」に変更)を経営する大船自動車興業株式会社(以下「大船興業」)の100%株主であるA社が所有する大船興業の株式を全部取得した。

 

(2)突然の解雇予告と退職届

 新経営陣は全従業員に対し、11月16日、「11月末日までに退職届を出さない者は12月15日をもって大船興業を解雇する。11月末日までに退職届を出した者は、勝栄に正社員または契約社員として雇用し大船興業に出向させる」旨を通告した。
  しかし、退職届を出すことは、勝栄の劣悪な労働条件への切り下げ(労働時間の大幅延長、大幅減給)、「全員課長」(名目だけの1人課長、残業代不支給、組合脱退を図る)などを認めることに他ならず、神自教大船自校支部(以下「大船支部」)は退職届を提出せず団交を求めた。


(3) 営業譲渡と解散
    大船興業は勝栄と、同年12月15日、「湘南センチュリーモータースクール」の営業全部を譲渡する契約を締結した(以下「本件営業譲渡契約」)。
    また、大船興業は、前同日、臨時株主総会で、本件営業譲渡を承認し、同社の解散を決議し、大船支部員らを全員解雇した。
    12月16日、退職届を出した従業員は勝栄に雇用されたが、大船支部員らは雇用されなかった。9人の大船支部員は、地位確認などを求め提訴した。


3 横浜地裁判決(2003年12月16日・福岡右武裁判長)
(1) 解雇の効力

 ① 大船興業と勝栄は、遅くとも本件営業譲渡契約締結時までにa「営業譲渡にともない従業員を移行させることを『原則』とする」、しかしb「相当程度の労働条件切下げに異議のある従業員を個別に排除する『目的』達成の『手段』として、退職届を出した者を勝栄が再雇用し、退職届を出さない者は解散を理由に解雇する」と合意した、
 ② ①の合意は、aは有効だがbは民法90条(公序良俗)に反し無効である。
 ③ 本件営業譲渡契約中の「勝栄は大船興業の従業員の雇用を引き継がない。但し、11月30日までに再就職を希望した者は新たに雇用する。」との規定は、①bの『目的』に沿うように符節を合わせたものであり、同様に民法90条(公序良俗)に反し無効である、
 ④ 以上、原告らに対する解雇は、形式上解散を理由にするが、①bの『目的』で行われたものであり解雇権の乱用として無効である。


(2) 労働契約の承継の有無
     原審判決は、営業譲渡契約に伴う「当然承継」は否定し、譲渡人と譲受人の特別の合意を要するとした上で、(1)④により原告らは解散時に大船興業の従業員としての地位を有することになり、(1)①の合意aの『原則』通り営業譲渡の効力が生じる2000年12月16日に労働契約の当事者としての地位が勝栄との関係で承継される、とした。


(3) バックペイも全面的に認容された。


4 東京高裁判決(2005年5月31日・西田美昭裁判長)
(1) 解雇の効力・労働契約の承継の有無
   本判決は、原審判決のうち、(1)解雇の効力(2)労働契約の承継の有無についての判断は、全面的に支持した。


(2) バックペイ
   他方、会社側が、控訴審で本格的に主張し始めたバックペイの減額を図る主張について、新たに正当な判断を下した。すなわち、会社は、バックペイ算定の基礎としての平均賃金額算定に当たって、①現実的に勤務して初めて認められるものである時間外手当及び休日手当、②教習内容、時間により支給される路上教習手当、高齢者教習手当、③実費補償的手当である食事手当等の控除を主張した。しかし、本判決は、①②③各手当の意義を分析した上で、会社の責めに帰すべき事由により労務の提供という債務の履行が不能であることから、会社は民法536条2項本文により賃金支払義務を負うのであり、労働者らが現実に労務に従事することができないことは民法536条2項本文が適用される場合に当然に予定されているところであるから、現実に勤務しないことを理由に①②③各手当を平均賃金額算定の基礎から控除することはできない、としたのである。


(3) 弁護団は、直ちに、会社取引銀行等に仮執行をかけ、本判決確定までのバックペイ全額を確保した。


5  最高裁判決(2006年5月16日)
   最高裁は、平成18年5月16日、会社の上告を棄却し、上告受理申立を受理しない旨の決定を下した。


6 その後の経緯
(1) 勝栄は控訴審係属中(和解継続中)に㈱湘南センチュリーモータースクールという会社を設立し、「湘南センチュリーモータースクール」を再び営業譲渡した。勝栄に対する勝訴が確定しても支部員らを職場へ復帰させないため、更には遠方へ配転するため(この間、勝栄は続々と傘下の自動車学校を分離し独立法人化しており、現時点で勝栄直営の自動車学校は岡山の本校のみとなっている)の悪辣な策謀だった。


(2)会社は、最高裁判決確定後の分の賃金支払いを拒否したが、労働者側が先取特権に基づく差押等の法的手段を講じることで任意支払の協定締結に応じた。にも拘わらず、繰り返し賃金支払を懈怠し、その度に謝罪して支払を再開してきた。
 他方、会社は「湘南センチュリーモータースクール」への復職は拒否し続け,予想通り、原告らに対し岡山への就労請求を何度か行い解雇の脅しをかけてきた。しかし、労働者側は新たな提訴も辞さない構えで臨み、会社は原告らの反論に抗することができずいずれも撤回してきたものである。


(3)こうして、会社は13年間の長期にわたって原告らに賃金を支払い続け、定年となった労働者には退職金規程に基づく退職金を支払ってきた。


7 本件提訴
(1) 解雇当時9人(男7,女2)であった労働者のうち男性6人は既に定年退職していた。最後の男性が定年を迎えたとき、会社は、教習指導員としての資格が更新されていないから、教習指導員としての退職金は支払えないので一般事務職としての退職金のみを支払うとして大幅に減額した退職金を支払ってきた。また、残る2人の女性に対しては、岡山への就労請求を行い、就労の実態がないとして賃金の支払を拒否してきた。


(2)労働者側は、これまでの実績と協定の趣旨並びに高裁判決の趣旨からして退職金減額はあり得ないし、前述の就労妨害の法人格濫用により就労不能の状況にしておきながら就労がないことを理由に賃金を支払わないことも許されないとして、未払退職金と未払賃金の支払を求める本訴訟を提訴するに至った。


(3)会社側は、大半が定年となり「弱体化」した労働者側が屈すると考えたものであろう。しかし、「どっこい、生きていた」のである。悪辣な亡霊は最後まで叩ききらねばならない。


 弁護団は、高橋宏(横浜合同法律事務所)、藤田・畑(川崎合同法律事務所)である。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.07更新

渡辺弁護士の紹介は、こちらからご覧下さい。

1 生業訴訟結審
 2017年10月10日、福島地方裁判所で言渡された判決に対して、原告ら、被告国、同東電ともに控訴し、舞台は仙台高等裁判所に移っていた。
 2019年中に原告15名の本人尋問と、浜通りの現地進行協議を実施し、2020年2月20日、結審を迎える予定だ。1月末に最終準備書面を提出し、4000名の控訴委任状を取り付け、50名の死亡原告の承継手続きを行なった。

 

2 判決は如何に 
 生業訴訟の原告は、大多数が福島市・郡山市等の滞在者である。滞在者の被害は、区域外避難者の避難の合理性と裏腹の関係にある。生業訴訟は、国の責任を追及することにがっぷり取組み、一審では、全国に先駆けて国の責任を断罪する役割を果たした。が、損害認定には課題を残した。
 控訴審においては、避難指示区域の原告本人尋問に重点を置き、損害立証にも力を入れた。
 判決は、2020年夏頃か。

 

3 避難指示は解除されても復興とは程遠い
 現地進行協議に際しては、東京電力から、「富岡町は復興しているのだ!」を立証趣旨として、さくらモールとみおか、富岡町小中学校、県立ふたば医療センター付属病院の申請がなされた。いずれも立派な建物が完成しており、東電は移動過程で外観を確認することを求めた。
 しかし、東電の思うとおりにはさせないのが生業弁護団である。外観は立派であっても、その内実は復興とは程遠いことを示さなければならない。
 さくらモールとみおかには、ヨークベニマルやダイユーエイトがあり、フードコートも充実している。ショッピングセンターのフードコートといえば、家族連れや友達どうしの子どもたちで賑わう様子が目に浮かぶだろう。ところがさくらモールとみおかは、昼食前後の時間帯だけ、車で続々とやってくる作業着姿の男性たちで大賑わいという異様さ。フードコートもそのためにあり、午後3時には閉まってしまう。現場指示は、当然、昼の時間帯だ。
 富岡小中学校は、広々とした立派な校舎内の教室に、ぽつんと机が2つ3つ置かれている。複式学級にしても、そのくらいの生徒数しかいないのだ。弁護団は、事前に校長先生に会いに行き、校舎内に立ち入る許可を求めた。

 

4 ふるさとに戻ってはみたものの
 南相馬市小高区で70年暮らし、避難指示解除を待ち切れずに戻った原告は、本人尋問において、以下のように語った。
「朝、目が覚めたときは、放射能ということから始まって、それで、自分は汚れた空気の中のお魚ではないか、みたいな、そんな感じで毎日います。」
「解除になって帰った年に、うちの夫は、やぶの中にコシアブラとタラの芽が一杯あったので、喜んで、こんなに採れたぞって抱えてきて。それで、自ら区役所に検査に行ってもらったら、コゴミは1900いくらベクレル、タラの芽は600何ぼあったので、もう、それからは、山に入ることはしなくなりました。もう、食べられないと思っています。」

 

5 今年は、続々と高裁判決が
 3月12日に、仙台高裁で浜通り避難者訴訟の、3月17日には、東京高裁で小高に生きる訴訟の判決言渡しが予定されている。両高裁判決が、避難指示区域からの避難者に関する慰藉料の金額について、一定程度の基準となる可能性がある。
 生業の後は、千葉・群馬訴訟の東京高裁判決が続くだろう。本年は、原発被害者訴訟における大きな節目になりそうだ。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.05更新

藤田弁護士の紹介は、こちらからご覧下さい。

1  収蔵庫への浸水
  昨年報告した「川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件」の川崎市市民ミュージアムの全収蔵庫が、台風19号の大雨により浸水した。市民ミュージアムの搬入口は、4メートル以上も水が溜まり、収蔵庫内まで2メートルもの浸水となったのである。 この結果、26万点の収蔵品の多くが補修不能となったか、補修不能になると思われる。収蔵品は、①川崎市が巨額の税金を投入し購入したもの、制作者や遺族、管理者から川崎市が②寄贈を受けたもの、あるいは③寄託されているものである。
  収蔵品には、① 文化勲章受章者の安田靫彦の「草薙の剣」(8千万)、ロートレック等、1890年代以降の欧州のポスター925点(4億9千万)、企業のポスター600点余り(1260万)、② 寄贈された「法隆寺観音像の下絵」や「大観先生」の試作等150点。江戸期の肉筆画帳や諷刺漫画家、清水崑等の原画、貴重な雑誌。藤原鎌足の筆など著名な書跡(国宝級)。膨大な数の昔の民具や生活道具等2度と収集できない民俗資料等。③ 寄託されている岡本太郎の母、岡本かの子の直筆原稿、父、一平の肉筆画等。写真界の芥川賞と言われる朝日新聞社主催の木村伊兵衛賞の受賞作品の写真全部(寄託)。ソビエト時代のドキュメンタリー映画(エイゼンシュタインの「メキシコ万歳」も)、日本映画美術監督協会の創立者の一人、黒澤明監督の美術を担当した久保一雄のスケッチ、映画セットの原画等、市民ミュージアムにしかない貴重なものが多数含まれている。


2  浸水・水没の責任
  川崎市は、指定管理者(代表アクティオ株式会社)に収蔵品管理ばかりではなく施設管理も任せている。市民ミュージアムが浸水区域にあることは中原区のハザードマップが事務室に掲示されていたのでアクテイオは当然知っていた。台風19号は河川の氾濫が相次いだ1958年の狩野川台風に匹敵する可能性があると気象庁は10月11日に厳重な警戒を呼びかけ、台風接近後は川崎市が避難指示まで出していた。
   ところが、アクティオも川崎市も、貴重な収蔵品を浸水から守るためにほとんど有効な行動を何もしていない。大雨が降る前に、地下収蔵庫の収蔵品を2階以上に運び上げる作業あるいは別の場所へ退避させる作業を何故行わなかったのか。道路沿いに土嚢とベニア板をブルーシートで覆って、堤防をつくり、その上に土嚢を積み上げていくことを、なぜ行わなかったのか。それ以前に、アクテイオは、これまでの市民ミュージアムの経験、東日本大震災等の経験に学び、いかに減災できるか水害対策を考えていたのか。
    そもそも、アクティオは大規模な博物館の運営経験がなく、本社の管理職は収蔵庫を見ることすらしなかった。アクティオの関心は、イベントと外部の企画による展示の数を増やし集客数を増やすことにしかなかった。つまりは、市民ミュージアムの収蔵品等には興味はなかったのであり、収蔵品の活用、維持管理、水害等に対する減災にも興味がなかった。だからこそ、学芸員らの給与を7割も減額し、大半の学芸員が辞めてゆくことを是とし、それに抗する副館長を「雇い止め」にしたのである。
    このようなアクティオを指定管理者として、収蔵品管理、施設管理を丸投げしてきた川崎市の責任も重大である。


3  川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件と「水害」の関わり
    昨年の報告で、本訴訟の意義は、第1には「雇い止め法理」(労契法19条)を適用し違法無効な雇い止めを許さないことを求める点にあるが、第2には、利益至上主義により、市民の財産であり貴重な文化資源である市民ミュージアムの担う博物館機能を危機に陥れた被告のごとき企業を指定管理者に選任した元凶である指定管理者制度の見直しを本件訴訟を通じて訴えることにある旨を述べた。
  今回の「浸水」は、第2の意義を最悪の形で浮き彫りにしたのである。


4 訴訟の展開
   被告は、「本件雇用契約には更新の期待権は生じる余地がない」「(雇い止めにした理由は、)勤怠、就業規則違反」と主張してはいたが、被告が主張立証責任を負う原告に対する雇止めが本件雇用契約書所定の「雇用期間の更新可否の判断基準」(ⅰ雇用期間満了時の業務量、ⅱ 勤務成績、態度、ⅲ 能力、ⅳ 会社の経営状況、ⅴ従事している業務の進捗状況、ⅵ その他が記載されている。)のいずれに該当するのか具体的事実を主張すらしようとしなかった。しかし、裁判官から、そのまま主張しなくていいのかと強く言われて、様々な「事実=遅刻、通勤に規則違反の自動車を利用等々」を主張し始めた。
    これに対し、原告はことごとく事実をもって反論し大半の被告の主張は論破されている、いずれにせよ双方の主張はほぼ出そろった。あと2期日ほどで尋問手続に入ろうかという段階に来ている。
    アクティオによる違法な雇い止めが断罪されることで原告が救済されるとともに、今回の収蔵品被害により美術館、博物館史上空前の被害をもたらしたアクティオと川崎市、指定管理者制度が見直されるまで奮闘する決意である。              

以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.01更新

畑弁護士の紹介は、こちらをご覧下さい。

 

1 本件の概要
 公認会計士の資格を持ち、経理を任されていた原告が電気自動車開発を行うベンチャー企業株式会社FOMM(フォム)に不当解雇されたことから、同社に対し、地位確認等請求を行っている。


2 FOMMについて
 FOMMは2018年のジュネーブモーターショーやバンコク国際モーターショーにて新型EV「ONE」を公開した。新型EV「ONE」は小型で、100万円以下の低価格設定で、水害時にも稼働できるという特性をもち、モータリゼーションが進みつつある東南アジアの新興国をターゲットとして開発されている。FOMMの開発した新たな小型EVの生産は、2017年の11月にFOMMとの資本業務提携を発表したエレクトロニクス大手「船井電機」が担当し、同じくFOMMとの提携関係にあり株主でもある「ヤマダ電機」を通じて販売される予定となっている。また、FOMMの株主には四国電力も名を連ねており、同社に対する市場の関心も高い。


3 解雇に至る経緯
 原告は2018年6月1日からFOMMで働き始め、経理を含めた諸業務を行っており、具体的には上述のモーターショー出展の際の出金など、多額の金の動いた形跡をつぶさに検討し、適正な経理が行われるよう経理体制の改善を図っていた。
原告は他社と同年6月17日を終期とする労働契約を締結していた(同社において兼業は許されていた)ことから、種々の手続きを簡便にするために、同年6月1日から17日までの業務委託契約書、同月18日を始期とする内定契約書をFOMMと交わしていた。もっとも、原告の就業実態を踏まえると、原告は同月1日からFOMMとの間で労働契約を締結していたものと見るべきである
原告が業務を行いFOMMの経理環境の改善を図る中、同月14日、執行役員のK氏に急遽呼び出され、内定取消し(解雇)を告げられた。その理由として、原告が、FOMM従業員を泣かせた、FOMMには経理ができる人間がいない旨の発言をした、経営メンバーが裏金を使っている旨の発言をした、他の従業員に対するハラスメントを行った、執行役員として入社した旨第三者に役職を偽ったなどの14の事由が挙げられていた。しかし、これらはありもしないでっち上げの事実である。


4 訴訟
 2018年9月28日に同社に対し、地位確認等請求訴訟を提起した(横浜地方裁判所川崎支部・古閑裁判官)。
 なお、組合と共に法廷内外で活動を続けてきたところ、FOMMは証拠で組合の株主等への要請書等を提出し、組合活動を控えるように要請するなど組合敵視の姿勢を見せていた。
 争点は、①6/1~17の間の契約関係及び②解雇権濫用または不当な内定取消に当たるかであり、以下のように判断され、原告は敗訴した。
(1)6/1~17の間の契約関係(労働契約か業務委託か)
ア 原告の主張
 労働基準法研究会報告を踏まえ、CFOからの指揮命令、「経理担当部長」としての名刺、時間的場所的拘束等の就労実態を主張し、6/1から労働者であった旨主張。なお、ANAP社との契約は実質的に終了しており、同社からは副業が許可されていた旨も主張。

イ 被告の主張及び裁判所の認定
 業務委託契約書が存在することを重視し、実態には触れずに、6/1~17は業務委託、18~は労働契約(内定契約)と整理。
ウ 問題点
 就労実態を何ら考慮せずに契約書の専ら文言のみで判断している。そして、業務委託であるとの整理内容が次の争点とも大きく関わる。

(2)解雇権濫用または不当な内定取消に当たるか
ア 原告の主張
 被告の主張する14の解雇(内定取消)事由は全てでっちあげである。当該事由を証する従業員の報告書(報告者の氏名についてはマスキングされたものも散見された)は反対尋問を経ないものであるから、作成者の尋問を求める。解雇手続についても、被告の主張する原告の問題行動については何ら注意がなされておらず、告知聴聞の機会を与えないでされており不適正である。また、解雇理由は後付けがなされており、手続を軽視するのは当該問題行動が存在しないからに他ならない。
イ 被告の主張及び裁判所の認定
尋問は不要(裁判所は報告書を取りまとめた人事部の担当者のみ尋問を許可)。被告主張及び証拠を全て採用。数々の問題行動が存在するから内定取消は相当。
ウ 問題点
  事実認定の不当性(争いのない事実の誤解、反対尋問を却下した上での書証の採用・重視、「経験則」という名の偏見、偏見ありきの補充尋問、反対事実をほぼ考慮していない等)、及び評価の不当性(「経験則」という名の偏見でもって、問題行動を行った原告が部長職にふさわしくないとして緩やかに内定取消の相当性を認める。) 


5 控訴提起
 地裁判決のように反対尋問を経ない報告書の信用性を認め、それをもとに内定取消しを許してしまえば、会社側は気に食わない労働者について、「問題行動」を行ったとして、作成者不明の報告書を作ることによって自由に解雇(または内定取り消し)を行えてしまうことになってしまい、労働者軽視も甚だしい。
 控訴審においては、古閑裁判官の偏見及び労働法制に関する無知を指摘しており、逆転勝訴をつかみ取りたい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.01更新

畑弁護士の紹介は、こちらをご覧下さい。

 

1 本件の概要
 公認会計士の資格を持ち、経理を任されていた原告が電気自動車開発を行うベンチャー企業株式会社FOMM(フォム)に不当解雇されたことから、同社に対し、地位確認等請求を行っている。


2 FOMMについて
 FOMMは2018年のジュネーブモーターショーやバンコク国際モーターショーにて新型EV「ONE」を公開した。新型EV「ONE」は小型で、100万円以下の低価格設定で、水害時にも稼働できるという特性をもち、モータリゼーションが進みつつある東南アジアの新興国をターゲットとして開発されている。FOMMの開発した新たな小型EVの生産は、2017年の11月にFOMMとの資本業務提携を発表したエレクトロニクス大手「船井電機」が担当し、同じくFOMMとの提携関係にあり株主でもある「ヤマダ電機」を通じて販売される予定となっている。また、FOMMの株主には四国電力も名を連ねており、同社に対する市場の関心も高い。


3 解雇に至る経緯
 原告は2018年6月1日からFOMMで働き始め、経理を含めた諸業務を行っており、具体的には上述のモーターショー出展の際の出金など、多額の金の動いた形跡をつぶさに検討し、適正な経理が行われるよう経理体制の改善を図っていた。
原告は他社と同年6月17日を終期とする労働契約を締結していた(同社において兼業は許されていた)ことから、種々の手続きを簡便にするために、同年6月1日から17日までの業務委託契約書、同月18日を始期とする内定契約書をFOMMと交わしていた。もっとも、原告の就業実態を踏まえると、原告は同月1日からFOMMとの間で労働契約を締結していたものと見るべきである
原告が業務を行いFOMMの経理環境の改善を図る中、同月14日、執行役員のK氏に急遽呼び出され、内定取消し(解雇)を告げられた。その理由として、原告が、FOMM従業員を泣かせた、FOMMには経理ができる人間がいない旨の発言をした、経営メンバーが裏金を使っている旨の発言をした、他の従業員に対するハラスメントを行った、執行役員として入社した旨第三者に役職を偽ったなどの14の事由が挙げられていた。しかし、これらはありもしないでっち上げの事実である。


4 訴訟
 2018年9月28日に同社に対し、地位確認等請求訴訟を提起した(横浜地方裁判所川崎支部・古閑裁判官)。
 なお、組合と共に法廷内外で活動を続けてきたところ、FOMMは証拠で組合の株主等への要請書等を提出し、組合活動を控えるように要請するなど組合敵視の姿勢を見せていた。
 争点は、①6/1~17の間の契約関係及び②解雇権濫用または不当な内定取消に当たるかであり、以下のように判断され、原告は敗訴した。
(1)6/1~17の間の契約関係(労働契約か業務委託か)
ア 原告の主張
 労働基準法研究会報告を踏まえ、CFOからの指揮命令、「経理担当部長」としての名刺、時間的場所的拘束等の就労実態を主張し、6/1から労働者であった旨主張。なお、ANAP社との契約は実質的に終了しており、同社からは副業が許可されていた旨も主張。

イ 被告の主張及び裁判所の認定
 業務委託契約書が存在することを重視し、実態には触れずに、6/1~17は業務委託、18~は労働契約(内定契約)と整理。
ウ 問題点
 就労実態を何ら考慮せずに契約書の専ら文言のみで判断している。そして、業務委託であるとの整理内容が次の争点とも大きく関わる。

(2)解雇権濫用または不当な内定取消に当たるか
ア 原告の主張
 被告の主張する14の解雇(内定取消)事由は全てでっちあげである。当該事由を証する従業員の報告書(報告者の氏名についてはマスキングされたものも散見された)は反対尋問を経ないものであるから、作成者の尋問を求める。解雇手続についても、被告の主張する原告の問題行動については何ら注意がなされておらず、告知聴聞の機会を与えないでされており不適正である。また、解雇理由は後付けがなされており、手続を軽視するのは当該問題行動が存在しないからに他ならない。
イ 被告の主張及び裁判所の認定
尋問は不要(裁判所は報告書を取りまとめた人事部の担当者のみ尋問を許可)。被告主張及び証拠を全て採用。数々の問題行動が存在するから内定取消は相当。
ウ 問題点
  事実認定の不当性(争いのない事実の誤解、反対尋問を却下した上での書証の採用・重視、「経験則」という名の偏見、偏見ありきの補充尋問、反対事実をほぼ考慮していない等)、及び評価の不当性(「経験則」という名の偏見でもって、問題行動を行った原告が部長職にふさわしくないとして緩やかに内定取消の相当性を認める。) 


5 控訴提起
 地裁判決のように反対尋問を経ない報告書の信用性を認め、それをもとに内定取消しを許してしまえば、会社側は気に食わない労働者について、「問題行動」を行ったとして、作成者不明の報告書を作ることによって自由に解雇(または内定取り消し)を行えてしまうことになってしまい、労働者軽視も甚だしい。
 控訴審においては、古閑裁判官の偏見及び労働法制に関する無知を指摘しており、逆転勝訴をつかみ取りたい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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