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2016.08.17更新

1.今、全国各地で市民オンブズマンの手によって税金のムダ遣いを追及する取り組みが進んでいます。官官接待、食糧費問題、各種ウラ金づくりとその費消。官民癒着の構造のなかでの談合問題(高値落札)。税金のムダ遣いはあとを断ちません。
  その一方で、ムダ遣いの結果として作り出された「財政難」を口実にして、福祉、介護、医療、教育、公害環境予算が大幅に削減されています。限られた財源であっても税金はないのではなく、税金の使い途が間違っている結果として、「財政難」が作り出され、私たちの生活関連予算が、不当にも削減されています。

2.この税金のムダ遣いの典型としてムダな大型公共事業の推進があり、それとセットになった形で第三セクターへの公金(税金)の支出問題があります。
  かわさき市民オンブズマン(事務局事務所は川崎合同法律事務所)は、経営破綻した「かわさき港コンテナターミナル株式会社」(KCT)について、川崎市が赤字必至の港湾事業の第三セクターに資本投下(50.8%の筆頭株主)しただけでなく、KCTの銀行融資に関連して前市長が「損失補償」したことにつき、その違法性を主張して住民訴訟を提起しました。
  その判決言渡が、11月15日、横浜地方裁判所で行われ、住民側の実質勝訴(形式上は敗訴)の判決が言い渡されました。

3.前提事実としては、KCTは、1994年、川崎港の貨物船の荷(コンテナ)の積み下ろしを主な業務として設立されましたが、東京港、横浜港に挟まれた「ビルの谷間のラーメン屋」と評されたとおり、大型コンテナ船の寄港はごくわずかで業績が伸びず、設立当初から赤字を重ね、数次にわたる川崎市の財政的支援もむなしく(これも無駄な税金投下)、04年にオンブズマンが指摘したとおり破産しました。その破産の跡仕未として損失補償協定に基づき、協定の限度額9億円を川崎市が銀行に支払い、その違法性が住民訴訟で争われることとなりました。
  判決は、この損失補償協定を、財政援助制限法(地方自治体の財政を圧迫しないため違法、不当な財政援助を禁止している法律)で禁止している「保証契約」に該るとして、オンブズマン主張をうけ入れて損失補償契約は違法と判断し、川崎市の措置は法を潜脱するものと厳しく指弾しました。
  すなわち、川崎市に限らず多くの地方自治体は法の制限を免れるため、実質上は保証契約なのに契約(協定)の形式を損失補償契約と呼び、若干の契約条項については保証契約とは異なる文言を置いて、まさに「法の潜脱」を図ってきました。今回の判決は、それを許容せず、実質は保証契約として断罪したものです(但し、損害金の返還請求自体は、返還時点での現市長に過失なしとして棄却)。

4.オンブズマンは「三セクへの損失補償協定が違法と判断されたのは、全国で初めてのことで画期的で、見事なくらい我々の実質勝訴だ」と判決を評価し、判決の及ぼす社会的影響についても「自治体が三セクのために金融機関と損失補償協定を結ぶのは全国的にみて一般的。従って、今回の地裁判断は全国的に影響を及ぼすのは必至で」「公金支出について自治体の新たな指針となる」と分析しているところです(詳細は11月16日付各紙新聞報道参照)。

判決全文(裁判所の判例集ページ)

投稿者: 川崎合同法律事務所

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