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2016.08.17更新

 国旗に向かって起立し国歌を斉唱しないと、音楽教師は君が代をピアノで伴奏しないと懲戒処分にする。3回・4回と処分が重なれば分限免職となる…。この悪夢のような10・23通達が東京都教育委員会から出されたのは2003年。今年で8年になる。

 今年3月10日、東京高等裁判所は、10・23通達直後の卒業式・入学式で懲戒処分を受けた都立学校の教職員170名の処分を取り消す画期的な勝訴判決を言い渡した。ところが最高裁は今年5月30日を皮切りに、次々と教師側を敗訴させる判決を出す事態となっている。

 最高裁にかかっていた日の丸・君が代関連の裁判は全国で15件。最高裁はこれを在庫一掃セールとばかりに立て続けに10件の判決を出した。教師たちに起立を強制する命令が、教師たちの思想良心の自由を間接的に制約することは認めながらも、その制約を許すほどの必要性・合理性が認められるとするもので、結論としては憲法19条に違反しないというのである。

 思想良心の自由は、憲法に定められている自由権の中でも最高位に位置する、人間が人間として生きるための大切な自由である。そのような大切な自由に対する制約が認められるかどうかについては、本来、厳格に審査されなければならない。人権保障の最後の砦となるべき最高裁が、いとも簡単に個人の思想良心の自由への制約を容認するとは、なんとも悲しく、罪深いとしか言いようがない。

 しかし注目すべきは、最高裁の14人の裁判官のうち2人の裁判官から、最高裁の出す結論には反対であるという「反対意見」が出されたことである。宮川光治裁判官の反対意見は「これまで人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調する教育実践を続けてきた教育者として、その魂というべき教育上の信念を否定することになる」として、生徒の前だからこそ起立することができないという教師たちの思いを汲んでくれた。

 冒頭紹介した3月10日の東京高裁の事件、2006年9月21日に東京地裁で違憲判決の出された予防訴訟はまだ最高裁に係属したばかりである。まだこの問題は終わっていない。多様な意見、そして多様な思想に寛容で、自らの思想良心にしたがう自由の保障される社会を築くため、これからも努力していくことを誓いたい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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