トピックス

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2020.09.10更新

1 かわさき市民オンブズマンの第23回定期総会が、2019年5月18日に開催された。その総会において、角田英昭(自治体問題研究所)さんをお招きして「指定管理者制度」について講演をして頂き、その運用実態と問題点について議論を深めた。
  神奈川における具体的事例として、津久井やまゆり園や川崎市市民ミュージアム、そしてツタヤ図書館の事例が取り上げられ、質疑が行われ、その討議結果をうけて、かわさき市民オンブズマンとしても、指定管理者制度について検討を深めることを確認した。
 そして、その後の幹事会で、関係者からの意見聴取を踏まえ、前記市民ミュージアム問題の検討に入ることとした。


2 市民ミュージアムは、博物館機能、美術館機能と映像機能を併せもつ総合文化施設として1988年11月に開館した。
 その財産管理は、数度の組織改編を経たのち、2003年の地方自治法の改正で指定管理者制度の導入が定められたのをうけて、川崎市においても2017年度から指定管理者制度を導入するため2016年2月川崎市市民ミュージアム条例を改正し、2017年7月にアクティオ・東急コミュニティ共同事業体を指定管理者に選定した(同年10月市議会の議決)。
 川崎市と前記共同事業体との間で締結された基本協定書では、収蔵品の保管、管理につき、善管注意義務が規定され、その上で、収蔵品が川崎市の所有に係る場合は重過失が、収蔵品が第三者の所有に係る場合(寄託)は軽過失を要件として損害賠償義務が課されるところとなった。


3 かわさき市民オンブズマンは、市民ミュージアムの収蔵品の管理状況は、指定管理者への移行後にあっては、「川崎市市民ミュージアムにおける資料等に関する要綱」で定められている管理台帳が不整備で、その上、ハザードマップで想定浸水深が「5~10m」とされている湿地帯(等々力緑地)の建物の地下に収蔵されていることに着目し、その問題点をえぐり出すため、2019年6月21日に情報公開請求を行った。
 そして、7月17日に公開された資料によれば、オンブズマンが予想したとおり管理台帳は不十分で、収蔵状況も地下収蔵が中心で防水壁等の設置もなく、災害対策上問題があると判明した。
 そこで、オンブズマンは、2019年9月2日に川崎市へ改善要求のための申入を行い、10月11日にその回答を得た。
 その回答につき、オンブズマンとして検討に着手しようとしたときに、台風19号が襲来し、収蔵品の浸水被害が発生した。
 台風19号は、10月8日時点で狩野川台風並みかそれを上回る大型台風であることが、国民に周知され、その危険回避のため、十二分な台風対策をとるよう注意報が発せられた。
 その台風19号は、10月12日19時前に伊豆半島に上陸し、関東地方を通過して、翌13日未明に東北地方の東海上に通り抜けた。
 この降雨により、市民ミュージアムの地下1階には推定16,000㎥の水が流入し、地下フロアにある第1から第9までの収蔵室 は、床上1.95m~2.55mの浸水を蒙り、地下収蔵の約22.9万点の収蔵品が水没した。
 市民ミュージアムの収蔵品は、約26万点で、そのうち約22.9万点が被害を受けるところとなった。
 一方、1階から3階の展示室等にあった収蔵品は、被害を免れた。


4 オンブズマンは、地下収蔵の収蔵品の被害について、川崎市長において、川崎市の関係職員と指定管理者である前記共同事業体に、収蔵品被害に係る損害賠償請求を行うよう求めて、2020年6月19日に住民監査請求を行った。

 責任追及の論点は、3点に要約できる。


(1)収蔵品管理上「ハザードマップの確認」が義務づけられているなかで、ハザードマップで想定浸水深が最大10mとされている低湿地で、防水壁の設置等予防対策を講じることなしに地下収蔵したことの誤り


(2)台風襲来時における応急的対策として地下の収蔵品を地上階に移し替えることは当然の手立てであるところ、全くその垂直移動の措置をとらなかったことの誤り
 ちなみに、市民ミュージアムには、館長、副館長、学芸員を含め常勤職員は31名いて、そして、会館内には超大型エレベーター2台、超大型台車2台、中型台車6台が常備されている。従って、職員を早期から現場配置し、エレベーター等の機材を利用して、収蔵品を地下から上層階へ移動することは、人的にも機材的にも、時間的にも十二分に可能であった。しかし、川崎市と指定管理者は、一切、移動の措置をとらなかった。


(3)管理に係る「大雨・強風等に係る自衛消防対策」のうち、「日常の大雨・強風対策、被害の未然の防止対策」として、「土のう・排水ポンプの定期点検」が義務づけられているところ、会館では、地上部に土のう(三段積みが必要)を積み上げるためには、660俵の土のうが必要なところ、何と15俵しか常備されておらず、その結果、地上部に三段積みで土のうを積み上げることができず、水害被害を発生させた、という誤り


5 以上の事実は、指定管理者として善管注意義務に反し、かつ、その責任は重過失に該るものとなっている。

  川崎市も、当然、川崎市の財産を管理すべき責任があるところ、市民文化局所管の市民ミュージアムにつき、市民文化局長は、その行政財産を管理する責任を有し、具体的な管理責任は、市民文化振興文化施設担当課長が担っているのであり、そして、川崎市長は、地方自治法149条6号に基づき、市の財産を管理する権限を本来的に有しているものであり、これら川崎市長及び関係職員も、この責任を怠ったものというほかない。
 オンブズマンは、前述したとおり監査請求を行ったが、川崎市監査委員は、2020年8月17日、川崎市長及び関係職員に係る部分は棄却し、指定管理者に係る部分は不適法として却下した。
 そこで、同年9月2日、住民訴訟を提起した。
 今回の裁判は、全国各地で行政主体が丸投げに近い形で、各種公共施設に指定管理者制度の導入を行っているなかで、指定管理者制度のもつ問題点を解明し、この制度自体の有り様をも問うものとして、提訴されたものである。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.08.29更新

 2020年8月28日、首都圏建設アスベスト訴訟(神奈川訴訟2陣)において、東京高等裁判所で、国と建材メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認める全員勝利判決を勝ち取りました。

 

 首都圏建設アスベスト訴訟は、建築現場における作業を通じて石綿粉じんに曝露し、中皮腫や肺ガンなどの石綿関連疾患を発症した被災者及びその遺族が、国と建材メーカーを相手に訴えた訴訟です。当事務所からは、神奈川訴訟の弁護団団長である西村隆雄弁護士、藤田温久弁護士、小野通子弁護士、星野文紀弁護士、川岸卓哉弁護士、中瀬奈都子弁護士、山口毅大弁護士、小林展大弁護士、畑福生弁護士が弁護団に加わっています。

 

 2008年、国と建材メーカーに損害賠償を求める首都圏建設アスベスト訴訟(東京・神奈川)を提起し、これ続き、2011年には北海道、京都、大阪、福岡の全国各地で、同様の訴訟が提起されました。
原告は、大工・保温工・電工・左官・配管工・解体工・ハウスクリーニング・エレベーター工などの建設作業に従事し、肺がん・中皮腫・石綿肺などの石綿関連疾患に罹った被害者であり、被告は、国及び石綿含有建材を製造販売した40数社の企業です。
いずれの訴訟においても、国に対しては、石綿の危険性を知りながら、防じんマスクの着用義務付けや製造・使用禁止措置などの規制を怠ったこと、建材メーカーに対しては、危険な石綿建材を製造販売し続け、製造販売にあたり適切な警告表示を行わなかったことなどの責任を追及してきました。

 

 国、メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認めた全員勝利判決は、建設アスベスト訴訟の被害補償基金制度の創設に向けて大きな武器となりました。特に、改修、解体工事についても、責任があると認め、一人親方等についても、国の責任を認めたという点で、世論、政治に訴える力は極めて大きいものです。

各メディアで報道されました。

NHK
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-ne…/20200828/1000053245.html

テレビ神奈川
https://www.tvk-kaihouku.jp/news_wall/post-6718.php

毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200828/k00/00m/040/247000c

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63186180Y0A820C2CR8000/

カナロコ(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/article/entry-456248.html

東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/51735?rct=national

時事ドットコムニュース
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020082801102&g=soc

弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_5/n_11658/

8月29日付朝日新聞

8月29日付読売新聞

8月29日付しんぶん赤旗

 

 国は、判決で断罪された加害責任はもちろんのこと、解決を引きのばしてきた責任について猛省し、今回の判決を機に、全面解決を図る立場に立ち、被災者,遺族に対する謝罪と建設作業従事者に対する被害補償基金制度創設、そして、今後の被害防止対策についての協議を内容とする基本合意締結を決断すべきです。一方、建材メーカーらは、本判決を真正面から受け止め、早期全面解決の立場に立ち、直ちに、国における基金制度創設に同意し、さらにはこれを国に積極的に働きかけるべきです。

 

 弁護団に参加している当事務所の弁護士は、被災者が無念のうちに命を奪われているというあまりにも重い現実に思いを致し、今回勝ち取った判決を踏まえて、一日も早い全面解決を実現すべく、全力で奮闘する決意です。

 引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。勝利判決の旗出しする弁護士ら(当事務所の弁護士は、小野通子弁護士(右から2番目)、山口毅大弁護士(1番左)、畑福生弁護士(1番右)

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.07.29更新

 川崎合同法律事務所では、2020年8月限定特別企画として、弁護士による離婚無料相談を実施します。

  通常30分5,000円(税別)の相談料を頂いているところ、初回1時間無料でご相談を承ります。お悩みを抱えている方は、是非、この機会にご相談下さい。

 当事務所の離婚問題特設ページは、こちらから。

rikonnfree

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.07.06更新

川崎市保育問題交流会(代表:川岸卓哉弁護士)は、川崎市および近隣地域で活動する保育関係の経営者・労働組合・NPO活動家や研究者・法律家などがあつまり、川崎の保育の実態を把握し、待機児の解消や保育の充実、働く保育職員の労働条件の改善などを前進させるため活動してきました。2019年は、川崎市保育問題交流会と、社会・労働問題を専門とする関東学院大学経営学部中西新太郎研究室で、川崎市内の全認可保育所を対象としたアンケート調査を実施しました。

概要結果報告書のダウンロードはこちらをクリックしてください。


アンケート調査結果からは、現行の保育基準・職場環境の下では、保育職員の業務は余裕がなくぎりぎりの状態にあることが明らかになりました。待機児解消が掲げられ、保育の充実が広く社会的要請となっているなかで、持続可能な保育環境をつくるためには、保育職員の労働実態を踏まえた保育基準の改善、処遇向上が急務であることが明らかになり、国及び市に対して ①保育所職員の処遇の改善、②保育士配置基準の見直し、③突発事態・緊急事態への対応体制の整備を求める要請書を提出しました。

国に対する要請書

川崎市に対する要請書

川崎市保育問題交流会では、保育労働者の労働環境向上と、子どもの権利を主体に考えた保育の質の向上のため、アンケート結果を活かすべく引き続き活動を行っていきます。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.07.01更新

篠原弁護士については、こちらをご覧下さい。 

 2020年6月30日にNHKで放送された、「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」に1974年の多摩川水害弁護団の一員であった篠原義仁弁護士が出演しました。

 

 堤防が決壊、住宅19棟が流失した1974年の多摩川水害について、篠原義仁弁護士は、「これはなんとかしなきゃいけない」、「物損被害じゃなくて家族全体の生活全体の被害なんだよ」という思いで、被災住民のために裁判を闘ってきたことを語りました。

 

 1974年の多摩川水害について、国に対して、損害賠償請求を求めた訴訟がなされ、最高裁判所で住民側が逆転勝訴し、差戻審でも勝訴し、確定しました。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.06.19更新

 篠原弁護士、星野弁護士の紹介は、こちらから。

 2020年6月18日、当事務所の篠原義仁弁護士が幹事、星野文紀弁護士が事務局長を務める、かわさき市民オンブズマンは、2019年10月の台風19号による、かわさき市民ミュージアムの浸水被害について、福田紀彦市長らに賠償させるよう、住民監査請求を行いました。

かわさき市民オンブズマンの会見の様子は、こちらをご覧下さい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.06.12更新

・ 受付に入退室の際の消毒のため、消毒用アルコールスプレーを設置しています。
・ 応接室は、空間を十分にとり、飛沫感染防止用アクリル板を設置、また、利用毎に消毒を行っています。
・ 所内の換気を常時行うと共に、窓開けによる換気をしています。
・ 所員はマスク着用の上、面談します。

 

  来所のお客様におかれましても、面談の際のマスクの着用等、感染症対策へのご協力をお願いします。

1.入退室の際は、受付設置のアルコールスプレーで、手指の消毒をお願いします。

2.発熱(37.5℃以上)のある方は、お電話等で打合せ日程の再調整をお願いいたします。

相談室

 

 

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.04.28更新

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.04.27更新

 小林弁護士の紹介はこちらをご覧下さい。

第1 はじめに

 マイナンバー制度は,日本に住民票を有する全ての者に12桁の番号(法人番号は13桁の番号)を付番し,社会保障,税,災害対策の3分野で,複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報であるということの確認を行うための基盤である。

 そして,このマイナンバー制度がプライバシー権を侵害するとして,2016年3月24日,マイナンバー違憲訴訟神奈川弁護団は横浜地方裁判所にマイナンバー違憲訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提訴した。原告数は,提訴当時は201名であったが,一審では第3次提訴まで行い,230名となった。

 

第2 本件訴訟の推移

1 原告らの請求

 原告らは,本件訴訟において,個人番号の収集,保存,利用及び提供の差止め,被告国の保存する個人番号の削除,国家賠償(慰謝料等11万円及びこれに対する遅延損害金)を請求している。

2 原告らの主張

 本件訴訟における原告らの主張は,自己情報コントロール権が憲法13条により保障されていること,マイナンバー制度のシステム上の問題点,後を絶たない個人番号の漏洩事故及び個人番号取扱事務に関する法令違反行為,住基ネット最高裁判決の示す合憲性の要件を満たしていないこと等である。

3 被告国の不誠実な応訴態度

 これに対し,被告国は,答弁書において一応の認否と反論だけをし、その後は原告らの主張について、まともに反論しないという姿勢を続けている。プライバシーが守られているということは、一人ひとりが安心して社会生活を送る上で決定的に重用であり、国が創出した制度がプライバシーを侵害する恐れが強いという原告の主張について、国は誠実に応答する義務がある。しかし、そうした責任を事実上放棄した国の応訴態度は、市民、国民を馬鹿にしているとしかいいようがない。原告らは、国に対し原告らの主張に誠実に応答せよと求め、裁判所にも積極的な訴訟指揮をすべきことを要求してきたが、裁判所も、国に主張を促すことをしていないことも問題である。

4 後を絶たない個人番号漏洩事故及び個人番号取扱事務に関する法令違反行為

 マイナンバー制度においては,個人番号が漏洩する事故や法令違反行為が後を絶たない。

 個人番号カードや個人番号記載書類を他人に交付してしまった例,個人番号カードと同カードの交付端末のパソコンが盗難された例,親族や他人になりすまして個人番号カードを不正取得した例,給与所得等に係る市町村民税・都道府県民税特別徴収税額の決定・変更通知書の誤送付により個人番号が大量に漏洩した例等,もはや枚挙にいとまがない。

 また,マイナンバー関連の入力業務等につき、委託元の許諾を得ずになされた再委託の横行も問題になっている。番号法10条1項は,個人番号取扱業務を再委託するには委託元の許諾を得なければならないとしているが,その許諾を得ずに同業務の再委託をしてしまった事例が多発している(神奈川県内では,川崎市の委託した業者が市の許諾を得ずに業務の再委託をしていたことが明らかとなった)。これは立派な法令違反行為である。

 さらに特筆すべきは,個人番号の適正な取扱いを監視・監督するはずの個人情報保護委員会が上記のような漏えい事案が発生しているにもかかわらず,ほとんど権限を行使することなく,それらを看過しているという点である。第三者機関が個人情報の漏えい防止のため機能していることは、住基ネット最高裁判決の合憲性の要件の一つであるが、番号制度において第三者機関が機能していないことは、この最高裁判決に照らしても合憲性の要件を満たしていないことになる。

5 尋問について

 尋問については,個人情報保護等に詳しい弁護士,マイナンバー違憲訴訟東京訴訟の原告でマイナンバー制度に詳しい方,マイナンバー違憲訴訟神奈川訴訟の原告の方,個人情報保護委員会事務局長を人証申請した。その結果,個人情報保護等に詳しい弁護士,マイナンバー違憲訴訟東京訴訟の原告でマイナンバー制度に詳しい方,マイナンバー違憲訴訟神奈川訴訟の原告の方が採用され,個人情報保護委員会事務局長は却下となった。人証の採否の決定の際,裁判長から「憲法学者の人証申請があったら採用しようと思っていた。」との発言があった。当初は憲法学者を人証申請していたのだが,一身上の都合により辞退となってしまったので,憲法学者を尋問するには至らなかった。この点は悔やまれるところである。

 その後,2名の憲法学者から意見書を作成していただいたので,その意見書を証拠として提出している。

 そして,2019年3月7日,尋問が実施された。個人情報保護等に詳しい弁護士については,地方自治体における番号制度の運用実態を中心に,番号制度により生じている負担及び情報漏洩の危険性が否定できないこと,マイナンバー違憲訴訟東京訴訟の原告の方でマイナンバー制度に詳しい方については,個人情報保護に関する市民運動に関わってきた経験及び都内自治体で就労していた経験から,番号制度の運用状況及び番号制度がプライバシー侵害を生じさせる構造的欠陥を持っていること,マイナンバー違憲訴訟神奈川訴訟の原告の方については,番号制度によって原告らのプライバシー権が現に侵害され,または侵害の現実的危険があり,損害が発生していること,をそれぞれ証言してもらった。

 なお,尋問の際,左陪席がずっと眠っていた(少なくとも眠っていたように見えた)ことが,原告ら及び神奈川弁護団の怒りに火をつけた結果となった。

6 情報公開請求

 本件訴訟において,尋問が行われた頃,上記のマイナンバー関連の入力業務等につき、委託元の許諾を得ずになされた再委託の横行が次々と発覚した。

 東京都内では,墨田区,江戸川区,豊島区,台東区,神奈川県内では川崎市,埼玉県内ではさいたま市,東松山市,和光市,幸手市,本庄市,羽生市,深谷市,熊本県内では熊本市,国の行政機関では東京国税局,大阪国税局において,番号法10条1項違反の委託元の許諾を得ない再委託が行われていたことが明らかとなった。

 この問題については,本件訴訟において,被告国が主張,反論をしないので,事実関係を明らかにするために,憲法が国民に保障している知る権利を行使して,上記の地方自治体,行政機関に対して情報公開請求をすることとした。この情報公開請求は,プライバシー権という基本的人権を守るために,知る権利という基本的人権を行使する場面であり,基本的人権の擁護と社会正義を使命とする弁護士にとって(弁護士法1条1項),とても魂が高ぶるところである。

 情報公開請求においては,開示を求める文書を「番号法に基づく事務に関し再委託の禁止に反して再委託が行われた事案についての経過がわかるもの一切」として,次々と行政文書が開示・公開された。

 しかし,マイナンバー違憲訴訟神奈川弁護団は,さらに開示・公開される行政文書が存在すると考えられること,また,不開示・非公開の処分がなされた部分につき,取消事由があると考えたことから,審査請求を行った。

 審査請求においては,対象文書を追加特定して開示不開示(公開非公開)の決定をすること,不開示・非公開の処分がなされた部分の一部につき,取消しを求めている。

 現在は,上記の各自治体からさらに大量の行政文書が追加特定されて,一部開示決定がなされている。また,熊本市,大阪国税局,国税庁にも審査請求をしたところであり,今後も行政文書が追加特定されることが見込まれる。

 この情報公開請求,審査請求は,基本的にはマイナンバー違憲訴訟で主張・立証をするために行っているものである。一審時点でも,開示,公開された資料を踏まえた主張・立証をしたが,今後(控訴審)は追加特定された行政文書も踏まえて,主張・立証を行う予定である(弁護団は既に追加特定された行政文書を踏まえた控訴審準備書面を起案しているところである。)。

 その一方で,情報公開請求,審査請求はマイナンバー違憲訴訟の主張・立証のためだけに行っているものではない。大量の行政文書が開示,公開されているということもあり,マイナンバー違憲訴訟東京訴訟,神奈川訴訟の原告の方々と分担して,開示文書の分析をするという市民運動も行っているのである。いよいよ我ら民衆が,知る権利という基本的人権を行使して,プライバシー権を守るために立ち上がったのである。

 

第3 一審判決,そして控訴審へ

1 2019年9月26日,横浜地方裁判所は不当判決を言い渡した。この判決には,いくつもの問題点があると考えているが,同判決においては,「番号制度の運用開始以後,行政機関等における過誤や不正,民間事業者の違法な再委託及び欺罔等による不正な取得により,個人番号及び特定個人情報の漏えいが生じていることに鑑みると,上記安全管理措置によっても,個人番号及び特定個人情報の漏えいを完全に防ぐことが困難であることは否定できない。」,「個人番号及び特定個人情報の漏えい事例が存在することから,番号制度に対する国民の信頼を維持し,同制度の円滑な運用を可能にするために,今後も,制度の運用並びに制度及びシステム技術の内容について,同種の漏洩事例を含む,制度の運用に伴う弊害防止に向けた普段の検討を継続し,必要に応じて改善を重ねていくことが望まれる」との指摘がなされていた。さすがに,後を絶たない事故事例を無視することはできなかったのであろう。

2 横浜地方裁判所の不当判決に対しては,当然,控訴をした。一審原告は,230名であり,控訴人は179名となった。

 今後は,控訴理由書を作成して提出することとなるが,それ以外にも上記の情報公開請求,審査請求により追加特定された行政文書を踏まえた控訴審準備書面,一審の審理終結以降に新たに発生した事故事例についての控訴審準備書面も提出する予定である。

3 控訴審では,逆転違憲判決を勝ち取るべく,マイナンバー違憲訴訟神奈川弁護団は,不当判決に負けずに民衆とともに立ち上がっている。

以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.04.14更新

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投稿者: 川崎合同法律事務所

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