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2020.04.06更新

 新型コロナウイルス感染症を理由に,解雇,内定取消し,一方的な賃金減額が行われたとの相談が増えております。

 

 新型コロナウイルス感染症を理由に,全ての解雇,内定取消し,賃金減額が有効になるわけではありません。

 解雇であれば,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当性を欠く解雇は,違法,無効になります(労働契約法16条)。

 また,経営上の理由から余剰人員削減のためになされる,「整理解雇」の場合,

①人員削減の必要性

②解雇回避努力義務

③人選の合理性

④手続の妥当性

といった整理解雇四要件(要素)を考慮された上で,解雇の有効性が判断されます。

 ですので,例えば,単に,抽象的に,新型コロナウイルス感染症で,売上が下がったことを理由に,黒字リストラで,解雇回避努力義務を果たさず,いきなり労働者を解雇した場合などは,違法,無効になるでしょう。

 

 また,内定取消しの場合も,自由に内定取消しをすることができるわけではありません。

 最高裁判例では「採用内定の取消事由は,採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できないような事実であつて・・・・・・解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と判断されています。

 ですので,たとえ,新型コロナウイルス感染症の影響であっても,整理解雇の四要件の考え方を加味しながら,解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるかどうかが判断されます。

 

 賃金減額の有効性は,具体的な理由によって変わります。

 

 お一人で悩まれることなく,まずはぜひご相談下さい。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.04.06更新

 新型コロナウイルス感染症の影響で,事業者の方から資金繰りについてのご相談を受けることが多くなっております。


 現在,新型コロナウイルス感染症の影響に伴い,さまざまな助成金(例えば,雇用調整助成金の特例,小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金,新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金等)があります。

 また,新型コロナウイルス感染症の影響により,国税,地方税,社会保険料の納付が猶予される場合があります。

 そして,現在も,新たな助成金が議論されており,今後,新たにさまざまな助成金制度が創設される見通しです。


 もっとも,こうした助成金や猶予制度を利用しても,資金繰りが困難となるケースもあります。


 そのような場合,取引先,融資先との間で支払い猶予を求めていくことが必要となってきます(私的整理,任意整理)。

 この際,将来の収支予測,資産状況から,現実的に支払うことができる分割払いの金額,期間,債務の圧縮額等について,交渉する必要があります。

 その際に,弁護士に依頼することで,時間,労力が削減されることのみならず,交渉によって,支払猶予を実現する可能性が高まります。

 ですが,このような任意整理ができず,経営が立ち行かない場合には,破産手続や民事再生手続等の法的整理を検討することが必要となります。


 任意整理,破産手続,民事再生手続等の方法のうち,いずれの方法をとるべきか,どのタイミングで行うべきか,どのように行うべきかについては,実際の経営状況によりますが,お早めにご相談して頂けると,事業を継続しながら,経営を再建することができる可能性が高まります。


 おひとりで悩まれることなく,ぜひお早めにご相談ください。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.04.01更新

1 多摩川からの逆流による浸水被害

 2019年10月12日、日本列島を襲った台風19号は、多摩川沿いに沿って南北に長い川崎市にも大きな浸水被害をもたらした。市内の住家被害は、全壊38件、半壊941件、一部損壊167件、床上浸水1198件、床下浸水379件に及んだ。市内の浸水被害の多くは、市内から多摩川へ注ぐ5か所の排水樋管のゲートが閉じられなかったため、台風によって高水位に達した多摩川から市街地へ逆流した泥水が原因で、110haもの広範な地域を浸水させた。排水樋管のゲート開閉の管理をしていたのは川崎市当局である。市当局が排水樋管のゲートを閉じていれば、多摩川からの逆流による被害は生じなかったであり、市は責任を問われうる立場にある。

2 川崎市の不合理な排水樋管のゲート操作

 川崎市当局は、台風直後の市民に対する説明会から一貫して、排水樋管のゲートを閉鎖しなかったのは、市の策定したゲート操作手順書に従ったもので、問題なかったと説明してきた。しかし、そもそも、川崎市の各排水樋管操作要項では、樋管のゲート操作は逆流防止を目的としている。当時、台風の関東地方接近によって多摩川の水位の上昇と逆流の発生は予見でき、現に、川崎市当局は多摩川の水位上昇による逆流の発生を確認していた。それにもかかわらずゲートを閉じなかった判断はあまりに不合理で、被災者には到底納得できない説明であった。「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」を立ち上げ、市に対して第三者検証委員会による原因究明と、賠償、再発防止を求めて活動をしている。

3 第三者不在の検証委員会の設置と自己弁護の検証結果

 これに対して、川崎市は、第三者委員会を設置せず、副市長を委員長とする行政内部で検証委員会を立ち上げ検証を開始した。賠償責任を負う可能性のある一方当事者の川崎市が主体となった自己検証によっては、公正な検証がなされるかはなはだ疑問であった。神奈川県弁護士会等の法律家団体も、川崎市に対して、改めて第三者検証委員会を設置などを求める要望を発表したが、結局、川崎市はこれに応じないまま、本年3月に発表した検証結果では、自らの責任を免れる結論に導こうとしている。

4 逆流防止の目的を見失っていた排水樋管ゲートの操作手順書

  そもそも、逆流防止のために設置された排水樋管のゲートが、なぜ今回現に逆流発生時に閉鎖されなかったのか。それは、ゲートの操作手順書が、川崎市内に「降雨または降雨の恐れのある場合はゲート全開を維持する」ことを前提としていたからである。この規定は、排水樋管のゲートを閉じると市街地に降った雨が多摩川に排出できなくなり、過去に内水氾濫を起こしたことから設けられた経緯がある。しかし、これでは、今回のように多摩川の水位が上昇し市街地より高くなって逆流が生じても、降雨がある限り、逆流による浸水被害は看過するしかかなく、被害を拡大させる結果となる。市の判断は、内水氾濫を恐れるあまり、本来の逆流防止というゲートの操作目的を見失い、被害を拡大させたのである。

5 既往最高水位を超える台風との言い逃れに対する反論

 川崎市の検証委員会は、今回の台風による多摩川水位の上昇が、既往最高水位を超えた最大であることなどから、逆流発生の予見可能性及び回避可能性がなかった結論を導こうとしている。しかし、これまでも、多摩川が氾濫危険水位を超え浸水被害が生じるような降雨が昭和49年以降4回発生していた。加えて、近年の地球温暖化の進行により、海面温度が上昇し猛烈な台風が出現する頻度が増加することが予測できた。これらを踏まえれば、本件台風襲来前から、多摩川水位が既往最高を超えて、少なくとも多摩川の安全の確保が要求される「計画高水位」まで達し、逆流のよる被害が生じることが予見可能性であり、速やかに対策を講じていれば被害は回避・軽減可能であった。

6 地球温暖化時代に改めて問われる都市水害に対する法律家の役割

 古来より日本は水害列島であるところ、今回の水害は川崎の多摩川近接地域の都市開発と深く関係する。今後、近年地球温暖化の影響により水害の激甚化が顕著となり、再び同規模またはそれ以上の水害起こりうる。法律家として、被災者の生活を再建し、市民が水害の危険に脅かされず安心して暮らせる街とするため、原因究明と再発防止を求めていく。

以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.03.24更新

1 本日,横浜地裁第7民事部は,株式会社日立製作所(以下「日立」)の課長職である原告が被告日立に対し、日立が「黒字リストラ」の一環として行ってきた個別面談による退職強要、退職拒否後のパワ-ハラスメント、査定差別につき損害賠償を求めた事件において、日立が個別面談で違法な退職強要を行ったことを認定し、日立に対し損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。
2 財界・政府は、1990年のバブル崩壊後、「株主のための企業」に転換すると称し企業の技術力や人的力量、働く人の生活の向上ではなく株価の上昇を第一義とした構造改革を推進してきた。このため「コスト削減を急速に進め、帳簿上の黒字を増大する」ことに邁進してきた。コスト削減推進の中核は労働者の解雇、非正規化であった。近年、この傾向は加速し、より利益を上げるための「黒字リストラ」が公然と唱えられるようになった。日立においても「世界で闘える事業」として営業利益が5%に達しなければ更なる利益を出すために整理解雇を行うという方針が事実上掲げられた。しかし、判例・裁判例においては、企業が経営難で整理解雇する場合においても、①人員整理の必要性、②解雇回避の努力義務、③解雇対象者選定の合理性、④解雇手続の妥当性,という4要件を充たすことが解雇の要件とされている。「黒字リストラ」は①の要件すら充たさない。そこで、日立は、確立された解雇規制を脱法するため様々な形で「退職強要」を行ってきたのである。
3 本件の第1の争点は、原告に対する面談が正当な営業上の目的に基づくものであったか、退職強要のためのものであったかであった。本判決は、日立が原告に早期退職を迫り、断られると仕事を取り上げ、「あなたの能力を生かせる仕事は会社にはない。社内にどうしても残るというなら自分で見付けろ。」「能力がなくても高い給料を払ってくれるのが魅力的ですというならそう言って欲しい」などと侮辱し「(退職以外選択肢がないことを)認識するまで面談を続けよう」と7回にもわたる面談で退職を強要したことを正当に認定した。
第2の争点は、原告がユニオンに加入し面談が中止された後原告に対し行われた会社の言動は単に業務上必要なものであったか、パワーハラスメントであったかであった。本判決は、公然と多数の社員の前で原告を侮辱し、社内メールなどで原告の名を毀損した会社の行為について「部下を多数人の前で叱責することにも類し、部下に対する指導に際しての冷静さや配慮が十分でない」と問題としながらも、違法性については否定した。
第3の争点は退職面談後突如大きくランクを下げられた賃金査定・一時金査定が正当な査定か、退職強要目的のものか否かであったが、本判決はこの点については、審理中から裁判所も正当性に疑問を投げかけていたにも拘わらず「会社の裁量の範囲内」とする不当な認定を行った。
4 本判決は、大企業会社とりわけ電機産業における50万人もの「電機リストラ」につき現経団連会長を輩出した日立が「黒字リストラ」を強行し、判例上確立してきた解雇規制を脱法する「退職強要」のために行った「面談」を明確に断罪した点において極めて大きな意義があるものである。
5 原告弁護団は、本判決の重要な意義を大きな力とし不十分点を克服し、憲法が保障する労働者の生存権・勤労の権利を実効的なものとするために、判例上確立してきた解雇規制の脱法を許さず、最終的な原告の救済と違法な「黒字リストラ」の流れの転換のため、今後もたたかい抜く決意である。
                                                                                           2020年3月24日  日立電機黒字リストラ事件原告弁護団

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.10更新

藤田弁護士の紹介は、こちらをご覧下さい。
                                             

1 「退職届を出さない者は営業譲渡先の会社に雇用しない」として19年前に解雇され14年前に解雇の無効が最高裁において確定・全面勝利したあの閉鎖解雇争議の金字塔:大船自動車学校解散解雇事件(以下「勝英自動車学校事件」)で、再び亡霊が動き始めた。


2 事案
(1) 全株式の取得
    株式会社勝栄(岡山県)は、2000年10月、大船自動車学校(「湘南センチュリーモータースクール」に変更)を経営する大船自動車興業株式会社(以下「大船興業」)の100%株主であるA社が所有する大船興業の株式を全部取得した。

 

(2)突然の解雇予告と退職届

 新経営陣は全従業員に対し、11月16日、「11月末日までに退職届を出さない者は12月15日をもって大船興業を解雇する。11月末日までに退職届を出した者は、勝栄に正社員または契約社員として雇用し大船興業に出向させる」旨を通告した。
  しかし、退職届を出すことは、勝栄の劣悪な労働条件への切り下げ(労働時間の大幅延長、大幅減給)、「全員課長」(名目だけの1人課長、残業代不支給、組合脱退を図る)などを認めることに他ならず、神自教大船自校支部(以下「大船支部」)は退職届を提出せず団交を求めた。


(3) 営業譲渡と解散
    大船興業は勝栄と、同年12月15日、「湘南センチュリーモータースクール」の営業全部を譲渡する契約を締結した(以下「本件営業譲渡契約」)。
    また、大船興業は、前同日、臨時株主総会で、本件営業譲渡を承認し、同社の解散を決議し、大船支部員らを全員解雇した。
    12月16日、退職届を出した従業員は勝栄に雇用されたが、大船支部員らは雇用されなかった。9人の大船支部員は、地位確認などを求め提訴した。


3 横浜地裁判決(2003年12月16日・福岡右武裁判長)
(1) 解雇の効力

 ① 大船興業と勝栄は、遅くとも本件営業譲渡契約締結時までにa「営業譲渡にともない従業員を移行させることを『原則』とする」、しかしb「相当程度の労働条件切下げに異議のある従業員を個別に排除する『目的』達成の『手段』として、退職届を出した者を勝栄が再雇用し、退職届を出さない者は解散を理由に解雇する」と合意した、
 ② ①の合意は、aは有効だがbは民法90条(公序良俗)に反し無効である。
 ③ 本件営業譲渡契約中の「勝栄は大船興業の従業員の雇用を引き継がない。但し、11月30日までに再就職を希望した者は新たに雇用する。」との規定は、①bの『目的』に沿うように符節を合わせたものであり、同様に民法90条(公序良俗)に反し無効である、
 ④ 以上、原告らに対する解雇は、形式上解散を理由にするが、①bの『目的』で行われたものであり解雇権の乱用として無効である。


(2) 労働契約の承継の有無
     原審判決は、営業譲渡契約に伴う「当然承継」は否定し、譲渡人と譲受人の特別の合意を要するとした上で、(1)④により原告らは解散時に大船興業の従業員としての地位を有することになり、(1)①の合意aの『原則』通り営業譲渡の効力が生じる2000年12月16日に労働契約の当事者としての地位が勝栄との関係で承継される、とした。


(3) バックペイも全面的に認容された。


4 東京高裁判決(2005年5月31日・西田美昭裁判長)
(1) 解雇の効力・労働契約の承継の有無
   本判決は、原審判決のうち、(1)解雇の効力(2)労働契約の承継の有無についての判断は、全面的に支持した。


(2) バックペイ
   他方、会社側が、控訴審で本格的に主張し始めたバックペイの減額を図る主張について、新たに正当な判断を下した。すなわち、会社は、バックペイ算定の基礎としての平均賃金額算定に当たって、①現実的に勤務して初めて認められるものである時間外手当及び休日手当、②教習内容、時間により支給される路上教習手当、高齢者教習手当、③実費補償的手当である食事手当等の控除を主張した。しかし、本判決は、①②③各手当の意義を分析した上で、会社の責めに帰すべき事由により労務の提供という債務の履行が不能であることから、会社は民法536条2項本文により賃金支払義務を負うのであり、労働者らが現実に労務に従事することができないことは民法536条2項本文が適用される場合に当然に予定されているところであるから、現実に勤務しないことを理由に①②③各手当を平均賃金額算定の基礎から控除することはできない、としたのである。


(3) 弁護団は、直ちに、会社取引銀行等に仮執行をかけ、本判決確定までのバックペイ全額を確保した。


5  最高裁判決(2006年5月16日)
   最高裁は、平成18年5月16日、会社の上告を棄却し、上告受理申立を受理しない旨の決定を下した。


6 その後の経緯
(1) 勝栄は控訴審係属中(和解継続中)に㈱湘南センチュリーモータースクールという会社を設立し、「湘南センチュリーモータースクール」を再び営業譲渡した。勝栄に対する勝訴が確定しても支部員らを職場へ復帰させないため、更には遠方へ配転するため(この間、勝栄は続々と傘下の自動車学校を分離し独立法人化しており、現時点で勝栄直営の自動車学校は岡山の本校のみとなっている)の悪辣な策謀だった。


(2)会社は、最高裁判決確定後の分の賃金支払いを拒否したが、労働者側が先取特権に基づく差押等の法的手段を講じることで任意支払の協定締結に応じた。にも拘わらず、繰り返し賃金支払を懈怠し、その度に謝罪して支払を再開してきた。
 他方、会社は「湘南センチュリーモータースクール」への復職は拒否し続け,予想通り、原告らに対し岡山への就労請求を何度か行い解雇の脅しをかけてきた。しかし、労働者側は新たな提訴も辞さない構えで臨み、会社は原告らの反論に抗することができずいずれも撤回してきたものである。


(3)こうして、会社は13年間の長期にわたって原告らに賃金を支払い続け、定年となった労働者には退職金規程に基づく退職金を支払ってきた。


7 本件提訴
(1) 解雇当時9人(男7,女2)であった労働者のうち男性6人は既に定年退職していた。最後の男性が定年を迎えたとき、会社は、教習指導員としての資格が更新されていないから、教習指導員としての退職金は支払えないので一般事務職としての退職金のみを支払うとして大幅に減額した退職金を支払ってきた。また、残る2人の女性に対しては、岡山への就労請求を行い、就労の実態がないとして賃金の支払を拒否してきた。


(2)労働者側は、これまでの実績と協定の趣旨並びに高裁判決の趣旨からして退職金減額はあり得ないし、前述の就労妨害の法人格濫用により就労不能の状況にしておきながら就労がないことを理由に賃金を支払わないことも許されないとして、未払退職金と未払賃金の支払を求める本訴訟を提訴するに至った。


(3)会社側は、大半が定年となり「弱体化」した労働者側が屈すると考えたものであろう。しかし、「どっこい、生きていた」のである。悪辣な亡霊は最後まで叩ききらねばならない。


 弁護団は、高橋宏(横浜合同法律事務所)、藤田・畑(川崎合同法律事務所)である。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.07更新

渡辺弁護士の紹介は、こちらからご覧下さい。

1 生業訴訟結審
 2017年10月10日、福島地方裁判所で言渡された判決に対して、原告ら、被告国、同東電ともに控訴し、舞台は仙台高等裁判所に移っていた。
 2019年中に原告15名の本人尋問と、浜通りの現地進行協議を実施し、2020年2月20日、結審を迎える予定だ。1月末に最終準備書面を提出し、4000名の控訴委任状を取り付け、50名の死亡原告の承継手続きを行なった。

 

2 判決は如何に 
 生業訴訟の原告は、大多数が福島市・郡山市等の滞在者である。滞在者の被害は、区域外避難者の避難の合理性と裏腹の関係にある。生業訴訟は、国の責任を追及することにがっぷり取組み、一審では、全国に先駆けて国の責任を断罪する役割を果たした。が、損害認定には課題を残した。
 控訴審においては、避難指示区域の原告本人尋問に重点を置き、損害立証にも力を入れた。
 判決は、2020年夏頃か。

 

3 避難指示は解除されても復興とは程遠い
 現地進行協議に際しては、東京電力から、「富岡町は復興しているのだ!」を立証趣旨として、さくらモールとみおか、富岡町小中学校、県立ふたば医療センター付属病院の申請がなされた。いずれも立派な建物が完成しており、東電は移動過程で外観を確認することを求めた。
 しかし、東電の思うとおりにはさせないのが生業弁護団である。外観は立派であっても、その内実は復興とは程遠いことを示さなければならない。
 さくらモールとみおかには、ヨークベニマルやダイユーエイトがあり、フードコートも充実している。ショッピングセンターのフードコートといえば、家族連れや友達どうしの子どもたちで賑わう様子が目に浮かぶだろう。ところがさくらモールとみおかは、昼食前後の時間帯だけ、車で続々とやってくる作業着姿の男性たちで大賑わいという異様さ。フードコートもそのためにあり、午後3時には閉まってしまう。現場指示は、当然、昼の時間帯だ。
 富岡小中学校は、広々とした立派な校舎内の教室に、ぽつんと机が2つ3つ置かれている。複式学級にしても、そのくらいの生徒数しかいないのだ。弁護団は、事前に校長先生に会いに行き、校舎内に立ち入る許可を求めた。

 

4 ふるさとに戻ってはみたものの
 南相馬市小高区で70年暮らし、避難指示解除を待ち切れずに戻った原告は、本人尋問において、以下のように語った。
「朝、目が覚めたときは、放射能ということから始まって、それで、自分は汚れた空気の中のお魚ではないか、みたいな、そんな感じで毎日います。」
「解除になって帰った年に、うちの夫は、やぶの中にコシアブラとタラの芽が一杯あったので、喜んで、こんなに採れたぞって抱えてきて。それで、自ら区役所に検査に行ってもらったら、コゴミは1900いくらベクレル、タラの芽は600何ぼあったので、もう、それからは、山に入ることはしなくなりました。もう、食べられないと思っています。」

 

5 今年は、続々と高裁判決が
 3月12日に、仙台高裁で浜通り避難者訴訟の、3月17日には、東京高裁で小高に生きる訴訟の判決言渡しが予定されている。両高裁判決が、避難指示区域からの避難者に関する慰藉料の金額について、一定程度の基準となる可能性がある。
 生業の後は、千葉・群馬訴訟の東京高裁判決が続くだろう。本年は、原発被害者訴訟における大きな節目になりそうだ。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.02.05更新

藤田弁護士の紹介は、こちらからご覧下さい。

1  収蔵庫への浸水
  昨年報告した「川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件」の川崎市市民ミュージアムの全収蔵庫が、台風19号の大雨により浸水した。市民ミュージアムの搬入口は、4メートル以上も水が溜まり、収蔵庫内まで2メートルもの浸水となったのである。 この結果、26万点の収蔵品の多くが補修不能となったか、補修不能になると思われる。収蔵品は、①川崎市が巨額の税金を投入し購入したもの、制作者や遺族、管理者から川崎市が②寄贈を受けたもの、あるいは③寄託されているものである。
  収蔵品には、① 文化勲章受章者の安田靫彦の「草薙の剣」(8千万)、ロートレック等、1890年代以降の欧州のポスター925点(4億9千万)、企業のポスター600点余り(1260万)、② 寄贈された「法隆寺観音像の下絵」や「大観先生」の試作等150点。江戸期の肉筆画帳や諷刺漫画家、清水崑等の原画、貴重な雑誌。藤原鎌足の筆など著名な書跡(国宝級)。膨大な数の昔の民具や生活道具等2度と収集できない民俗資料等。③ 寄託されている岡本太郎の母、岡本かの子の直筆原稿、父、一平の肉筆画等。写真界の芥川賞と言われる朝日新聞社主催の木村伊兵衛賞の受賞作品の写真全部(寄託)。ソビエト時代のドキュメンタリー映画(エイゼンシュタインの「メキシコ万歳」も)、日本映画美術監督協会の創立者の一人、黒澤明監督の美術を担当した久保一雄のスケッチ、映画セットの原画等、市民ミュージアムにしかない貴重なものが多数含まれている。


2  浸水・水没の責任
  川崎市は、指定管理者(代表アクティオ株式会社)に収蔵品管理ばかりではなく施設管理も任せている。市民ミュージアムが浸水区域にあることは中原区のハザードマップが事務室に掲示されていたのでアクテイオは当然知っていた。台風19号は河川の氾濫が相次いだ1958年の狩野川台風に匹敵する可能性があると気象庁は10月11日に厳重な警戒を呼びかけ、台風接近後は川崎市が避難指示まで出していた。
   ところが、アクティオも川崎市も、貴重な収蔵品を浸水から守るためにほとんど有効な行動を何もしていない。大雨が降る前に、地下収蔵庫の収蔵品を2階以上に運び上げる作業あるいは別の場所へ退避させる作業を何故行わなかったのか。道路沿いに土嚢とベニア板をブルーシートで覆って、堤防をつくり、その上に土嚢を積み上げていくことを、なぜ行わなかったのか。それ以前に、アクテイオは、これまでの市民ミュージアムの経験、東日本大震災等の経験に学び、いかに減災できるか水害対策を考えていたのか。
    そもそも、アクティオは大規模な博物館の運営経験がなく、本社の管理職は収蔵庫を見ることすらしなかった。アクティオの関心は、イベントと外部の企画による展示の数を増やし集客数を増やすことにしかなかった。つまりは、市民ミュージアムの収蔵品等には興味はなかったのであり、収蔵品の活用、維持管理、水害等に対する減災にも興味がなかった。だからこそ、学芸員らの給与を7割も減額し、大半の学芸員が辞めてゆくことを是とし、それに抗する副館長を「雇い止め」にしたのである。
    このようなアクティオを指定管理者として、収蔵品管理、施設管理を丸投げしてきた川崎市の責任も重大である。


3  川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件と「水害」の関わり
    昨年の報告で、本訴訟の意義は、第1には「雇い止め法理」(労契法19条)を適用し違法無効な雇い止めを許さないことを求める点にあるが、第2には、利益至上主義により、市民の財産であり貴重な文化資源である市民ミュージアムの担う博物館機能を危機に陥れた被告のごとき企業を指定管理者に選任した元凶である指定管理者制度の見直しを本件訴訟を通じて訴えることにある旨を述べた。
  今回の「浸水」は、第2の意義を最悪の形で浮き彫りにしたのである。


4 訴訟の展開
   被告は、「本件雇用契約には更新の期待権は生じる余地がない」「(雇い止めにした理由は、)勤怠、就業規則違反」と主張してはいたが、被告が主張立証責任を負う原告に対する雇止めが本件雇用契約書所定の「雇用期間の更新可否の判断基準」(ⅰ雇用期間満了時の業務量、ⅱ 勤務成績、態度、ⅲ 能力、ⅳ 会社の経営状況、ⅴ従事している業務の進捗状況、ⅵ その他が記載されている。)のいずれに該当するのか具体的事実を主張すらしようとしなかった。しかし、裁判官から、そのまま主張しなくていいのかと強く言われて、様々な「事実=遅刻、通勤に規則違反の自動車を利用等々」を主張し始めた。
    これに対し、原告はことごとく事実をもって反論し大半の被告の主張は論破されている、いずれにせよ双方の主張はほぼ出そろった。あと2期日ほどで尋問手続に入ろうかという段階に来ている。
    アクティオによる違法な雇い止めが断罪されることで原告が救済されるとともに、今回の収蔵品被害により美術館、博物館史上空前の被害をもたらしたアクティオと川崎市、指定管理者制度が見直されるまで奮闘する決意である。              

以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.01.31更新

 西村弁護士の紹介は、こちらをご覧下さい。

1 この間の前進

 この間、昨年11月に、福岡高裁1陣判決が下された。

 同判決では国の責任に関して、防塵マスクの着用、警告表示・掲示、特別教育の義務付け懈怠の違法を認めた。そして懸案の一人親方の責任について、安衛法の保護対象はあくまで「労働者」であるが、国が適切に規制権限を行使していれば、被害の発生を防ぐことができたと評価しうるのであれば、一人親方の関係でも国賠法上の違法を認める余地があるとしたうえで、①曝露の危険性は一人親方を含む労働者全体に及ぶこと、②規制によって享受する利益は労働者と一人親方で変わるところはないこと、③一人親方と労働者の就労実態の同一性から、一人親方に対して賠償責任を負わないと解するのは、正義公平の観点から妥当でないと断じた。

 一方建材メーカーらの責任に関しても、1975年時点での予見可能性、警告表示義務違反を認めたうえで、マーケットシェアが20パーセントを超える場合にはその建材が被災者に到達したと認めることができるとして、被告企業4社の賠償責任を認めた。

 国の責任に関しては、なんと地裁、高裁合わせて11連勝となり、一人親方の責任についても、東京高裁、大阪高裁京都ルート、同大阪ルートに続いて4連勝、また建材メーカーの責任についても、神奈川東京高裁判決、大阪高裁ダブル判決に続いて高裁段階で4勝目の判決となった。

 一方1月30日、神奈川2陣訴訟が結審を迎えた。

 建材メーカーの責任をめぐっては、民法719条1項後段の類推適用による共同不法行為の成立に関し、この間各地で出された高裁判決を踏まえ、メーカーの加害行為の到達については相当程度以上の可能性で足りること、その立証についてはマーケットシェアを活用すべきことを明らかにした。

 最大の焦点である一人親方の責任について、岩手県立大の柴田先生の証人尋問をかちとり、一人親方の就労実態につき、労働者との対比で歴史的かつ実証的に解明して、一人親方勝訴に向け、大きく道を開くところとなった。

 判決言い渡しは、8月28日午後3時と指定された。

 

2 国の対応

 こうした中で、原告を先頭に、一貫して、基金制度の創設による全面解決を求める運動が取り組まれてきた。

 これに対して被告の建材メーカーらは、ほぼすべての企業が交渉に応じ、主要企業のうち11社が、国から制度提案があった場合、前向きに検討することを表明している。

 しかし一方の国は、大阪高裁4民、3民での結審に際しての和解打診、和解勧告を拒否したのをはじめとして、その後もいたずらに控訴、上告を重ねるばかりで、解決に向かう兆しは一向に見られない。

 これは国が司法解決方式を念頭に置いているためであるとみられる。すなわち、国は、仮に来るべき最高裁判決で敗訴しても、当該訴訟で判決に従って支払いを行うのは当然として、2陣以降、さらにはその余の被災者についても、制度を創設して行政対応で救済するのではなく、いちいち提訴をさせ、訴訟上の和解に従って支払いを行う方式を念頭に置いていると考えられる(泉南アスベスト方式)。しかし泉南型被害との決定的違いは、本件建設アスベスト被害はまさに現在進行形の被害で、今なお新た被害者が続々と生まれており、今後の被害者は2万人とも3万人とも言われている。

 これだけの被害者を前に, いちいち訴訟を提起しないと救済を受けられないというのは,救済にとって重大なハードルとなること疑いない。この点、NHKの報道番組『時論公論』でも, 「司法は本来、双方に争いがあるときに紛争の解決を目指すもので, 行政が迅速に救済を行うのが望ましい。司法は行政の補助機関ではありません。」としているとおりである。

 さらに本件被害に対する直接的な加害者である建材メーカーについては、最高裁の判断が出てもこの基準に従ってその余の被災者についても和解解決することは予想できず、結局、建材メーカーの負担を欠いたまま、国のみがその負担部分について国民の血税から被害救済を行うことになる司法解決方式は、あまりに不合理であり、到底国民の理解を得られるものではない。

 

3 今後のたたかい

 現在最高裁には神奈川1陣訴訟をはじめ5件の各地1陣訴訟が係属しており、遅くとも今年中には判決が見込まれている。最高裁に向けては、メーカー責任、一人親方責任に関する学者意見書を提出するのをはじめ、公正判決要請署名を積み上げての要請行動が取り組まれている。

 そしてこの3月には、全国一斉に3陣提訴を行って、被害の広がりをさらにアピールしていくことが予定されている。

 こうした中で、4月17日の東京地裁東京2陣判決とこれに続く8月28日の神奈川2陣東京高裁判決を大きなチャンスとして全面解決を迫り、来るべき年内の最高裁判決に際しては、なんとしてもこれを契機に補償基金制度の創設による全面解決をはかるべく運動、取り組みを飛躍的に強化していくことが求められている。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.01.23更新

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1 事案の概要
 本件は、労働契約法18条「無期転換ルール」逃れに対する裁判である。原告は、日本通運川崎支店で派遣社員の事務職を経て、2013年より、日本通運株式会社に、1年契約更新の有期労働契約で直接雇用された。その後、契約更新は4回されましたが、無期転換申込権が発生する通算契約期間5年のわずか1日前、2018年6月末日をもって、期間満了による雇止めされた。これに対し、雇い止め無効を主張し、横浜地方裁判所川崎支部に提訴した。
 無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として、立法されたものであるが、本件雇止めは、無期転換ルールの法の趣旨を真正面から否定し無期転換を阻止することに目的がある。


2 雇止め法理の形成・発展に逆行する不更新条項
 本件雇用契約書には、派遣を経て最初の直接雇用契約当初から「当社における最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない」という、いわゆる不更新条項が挿入されていた。そもそも、労契法19条において制度化された雇止め法理は、有期労働契約は合意された期間の満了によって当然に終了するという契約法理に対して、解雇権濫用法理という重要な労働法理を尊重して法定更新制度を設けたものである。つまり、合意原則よりは雇用関係の存続保護という要請を重視して、形成された法制度であり、それについて不更新条項による潜脱を認めることは、雇い止め法理の形成・発展に逆行することになる。
 本件訴訟の3つの争点①そもそも更新上限規定が労働契約法18条を逸脱し公序良俗に反して無効②更新上限規定への同意が自由な意思に基づくものではなく無効、以上の論点を前提に、③本件件雇い止めが、雇い止めの無効について定めた労働契約法19条に反して無効であるかである。
 特に、争点①については、国会答弁で示されてきた労働契約法18条の立法趣旨を法解釈に斟酌すれば、使用者が、有期雇用契約に5年以内の更新上限を付して利用することについて、公序良俗違反といえる場合には、更新上限は違法無効と解釈される。意見書をお願いした立正大学准教授高橋賢治先生は、労働契約法は、5年以内の有期労働契約の利用はいずれの場合も許されるという趣旨で濫用防止規定があえて設けなかったのではなく、「解釈は後の判例により論理的に決せざるを得なくなる」と指摘している。


3 契約書の形式的文言を突破する必要
 2018年以降、全国で、本件と同様の無期転換逃れを争う裁判が提訴・係争され、今後、各地の裁判所の判断により、労働契約法18条に関する、新たな労働法理が創出されていくなか、本件裁判の帰趨も、日通のみならず広く非正規労働者の将来も左右する結果となる。非正規労働事件の運動展開は困難があるが、全川崎地域労働組合及び国民救援会神奈川支部を中心に支援共闘会議が結成され、署名5000筆を裁判所に提出するなど、運動を広げている。
 本件のように、当初より不更新条項が契約書に記載されていた内容でも、立場の弱い労働者は契約締結せざるを得ない労働者は潜在的に多数存在する。契約書の形式的契約文言の壁を事実と道理に基づく主張で突破してきた歴史が、有期契約の労働者を救済する判例法理形成の歴史である。これにならい、労働契約法18条の趣旨に適った新たな判例法理を作り出すため、全力を尽くす決意である。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2020.01.22更新

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 本件は、2018年4月、日立製作所の課長職であった原告に対する面談による退職強要、それを拒否した原告に対する退職強要終了後のパワハラ行為、及び査定差別に対し損害賠償をもとめ横浜地方裁判所に提訴した事件であり、本年3月24日に判決日を迎える。


1 電気リストラと日立製作所における退職強要・査定差別
 日本の電機産業は、輸出競争力を低下させ,事業の撤退や縮小海外資本への売却が目立つようになった。また、残った事業分野においても、今後の成長は不確かとなっている。このような中で、2008年のリーマンショック以降、2017年3月1日までに、公表されただけでも36万378人が人員整理の対象となった。しかも、これらの人員削減は、実態は労働者への押しつけであるものの、希望退職という形式を取って行われるため、社会問題化しにくく、殆どの国民の知らないところで大量のリストラが敢行されている。
 赤字や倒産の危機を理由にリストラをしていた企業が、経営危機を脱して、黒字に反転した後も、リストラを継続し続けているというのが実態である。これは、日本の大手電機メーカーが、多角的に事業展開する企業複合体(コングロマリット)から、事業の選択と集中により、少数の事業に注力するという方針に変化し、少なくない事業から、次々に撤退していることに伴って生じているものである。
 日立製作所は、高い利益目標をかかげ、それを達成するために「常時リストラ」「黒字リストラ」とでもいうべき政策を強引に進めている。日立製作所の原告に対する退職強要も、全社的な組織的意思決定に基づいて行われた脱法的なリストラである。原告が電機情報ユニオン労働組合に加入して抗議したことにより、日立製作所は、原告に対する退職強要面談は終了させたものの、その後も、原告に対して業務遂行に対する注意を、晒し者状態で行うなどパワハラ行為を行ったり、さらには、一時金査定において低評価を行い続けて、原告に転職を決意させようとし続けている。


2 違法な退職強要
 本件退職面談は、面談の機会に、圧倒的な労使の力関係の下で、労働者の権利を否定し、労働者保護法体系に明らかに反する不合理な考え方を一方的に押しつけて、原告に退職を迫ったパワハラ行為が行われている。すなわち、侮辱的言辞・仕事の取り上げ・名誉感情の不当な侵害、退職表明を行うまで継続される絶望的な繰り返しの面談等、様々なパワハラ的手法を重畳的に用いた退職(転職)の強要が行われた。


3 退職強要としての査定差別
 日立の人事評価制度であるGPM面談及びキャリア面談の名もの下行われた退職面談を境に、同じ原告に対する評価が、明らかに大きく下がっている。
 GPM評価制度は、成果目標と行動目標から構成され、いずれも、上司と共に予め設定した目標に対する達成具合の主観的評価で賃金・一時金査定が行われるものである。それは、自己評価を前提としているとはいえ、最終的・実質的には、上司の主観的評価に依拠するものとなっている。そして、客観的検証が困難な、抽象的評価のため、上司の恣意的評価の余地が大とならざるをえない。原告自身は、一貫して、同様に仕事をしているのであり、本件面談における退職強要を拒否した以外には、本件面談の前後で、他に大きく評価が下がる合理的理由がない。
 そして、本件面談における退職強要の拒否は、日立製作所会社を含む電機産業が業界ぐるみで行っている電機リストラに対する抵抗を意味することになる。したがって、日立製作所会社にとってはあってはならない事態であり、だからこそ、原告が、本件面談による退職強要に必死に抵抗し、屈しなかった時点を境として、判りやすく、本件査定が極端に下げられている。したがって、本件減額査定は、不当な退職強要の中止を訴えて、会社に残ることになった原告に対し、形を変えた「退職強要」が行われていというべきである。


4 変容する日本型雇用に対する抵抗
 日立製作所出身の日本経団連中西宏明会長は、「終身雇用は制度的疲労している」等度々発言し、2020年の経団連春闘方針でも、既存の日本型雇用の見直しを示している。この経団連の示す方針の意味するところが、企業を雇用責任から免れさせ、無法図なリストラを許容し、労働者の権利を侵害する方向であることは、本件においてすでに日立製作所が行っていることからも明らかではないか。
 判決を機に、社会に対して電気リストラの実態を明るみにし、雇用の破壊に対する歯止めとしたい。 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

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