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2021.12.10更新

 2021年11月30日、横浜地方裁判所川崎支部は、一般財団法人NHKサービスセンター(以下「法人」といいます。)の行った原告の雇用継続拒否を有効として、原告の労働者としての地位の確認を認めず、かつ法人が原告に対する安全配慮義務を怠ったとはいえない旨の不当判決を言い渡しました。

 

1 提訴に至る経緯
 原告は、2002年4月から、1年契約更新で、法人の運営するNHK視聴者コールセンター(現NHKふれあいセンター(放送))において視聴者対応を行うコミュニケータとして採用されました。その後、原告は16回にわたる契約更新を経て、2019年には無期雇用へと転換するに至りました。
 もっとも、原告は、無期転換を果たしたその年、2019年末をもって定年退職となり、その後の雇用継続を拒否されました。また、同コールセンターでは、視聴者からの問合せに名を借りた暴言やわいせつ発言を内容とする電話が多く寄せられ、原告を含むコミュニケータは精神的負担を抱えていたものの、法人は、そのような迷惑電話に対しても、切断したりせずに丁寧に対応することをコミュニケータに求め、コミュニケータの精神的負担を減らす措置を十分に講じてはきませんでした。これに対し、原告は、労働者としての地位の確認及び安全配慮義務違反を主張し、本件訴訟を起こしました。

 

2 今般下された不当判決の内容
 しかしながら本判決は、地位確認について、雇用継続の拒否に客観的合理的理由及び社会的相当性があるとして、本件雇用継続拒否を有効と判示しました。
 原告は16回も更新されるほどに真面目に業務に取り組んで来たにもかかわらず、本判決は、原告の視聴者対応について、一つを取れば些細なものと見得る余地があるとしながらも、法人の主張を前提に原告の職場からの排除を容認しました。
 また、本件コールセンターにおいて、わいせつ発言や暴言を内容とする迷惑電話が横行している職場環境には背を向けて、法人の安全配慮義務を認めず、労働者を捨て駒のように扱う法人の姿勢を追認する判断を行いました。

 

3 社会的にもセクハラ・カスハラへの対策の検討が進められていること
 昨今ハラスメントへの意識は向上しており、厚労省もセクハラ、パワハラ等に対する指針を発出しており、いわゆるパワハラ防止法が成立・施行されるに至っており、これに加えて、2021年1月21日からは、国において、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」が設置され、カスハラに対する対策の検討が進められています。
 近年、我が国において、セクハラ・カスタマ―ハラスメント(カスハラ)等のハラスメントを防ぐべき社会規範が現在進行形で形成されているなか、本判決はコミュニケータも人格を持つ個人として尊重されることは当然であるとしながらも、社会の流れに逆行し、接客業にあることを理由にハラスメントを受忍すべき判断をしたものであり、セクハラやカスハラに苦しむ多くの労働者を見放すきわめて不当な判決です。
また、法人は、迷惑電話に対する法的措置を怠った理由としてNHKの最終的な判断に基づくものである旨述べていました。公共放送であるNHKの対応は、法人によるセクハラ・カスハラ放置の原因となっていたのであって、決して許されてはなりません。

 

4 おわりに
 原告・弁護団・全川崎地域労働組合は、本判決の重要な意義を大きな力とし、最終的な原告の救済、ひいては高年齢者の雇用を守り、職場におけるハラスメントに対する適切な対処が行われるよう、今後も闘いぬく決意です。ご支援お願いいたします。
 弁護団は当事務所の川岸卓哉弁護士、畑 福生弁護士です。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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