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2016.08.17更新

 3月11日に発生した東日本大震災によって、東京電力福島第一原子力発電所で発生した事故は、レベル7という最も深刻な事態に陥っている。何も知らされずに放射線に被曝させられ、着の身着のままで避難させられ、故郷の地と生活の糧を失い、しかもこの先、いつ戻れるかわからない、そんな被災者の蒙った損害は、誰が賠償するのだろうか。

■ 地域再生・生活再建を
 原子力損害の賠償に関する法律は、被害者の保護と原子力事業の健全な発達に資することを目的として、原子力事業者である東京電力に無過失責任を課している。そして東京電力との賠償交渉の目安とするため、原子力損害賠償審査会で指針を作成しており、8月5日に中間指針が発表された。

 この中間指針では、避難対象区域から避難した人の損害や、農林水産物・観光業に対する風評被害などが対象とされている。今後は、避難対象区域外から避難した人の損害についても、検討される予定である。

 ただこの指針では、損害賠償に焦点がおかれているため、地域再生・生活再建という被害者の原状回復の視点が全く欠けている。街の八百屋さんは、店を作り直す費用を賠償してもらっても、街が復活して人々が生活するようにならなければ、商売にならないのである。

 この他、地方公共団体が行なう除染費用の賠償や、放射線被曝による中長期的な健康管理も実施していかなければならない。

■ 電気料金や消費税に転嫁させない運動を
 では、これらの賠償資金はどこから出るのか。原子力事業者は、万一の事故のために一種の保険をかけることになっている。しかし、この保険から出るのは1基あたり1200億円に過ぎず、10数兆円規模といわれている今回の被害賠償額には遠く及ばない。

 そこで、原子力損害賠償支援機構というのを作り、国や関西電力等他の電力会社も協力して損害賠償をする仕組みが考案された。しかし、東京電力の加害責任を明確にしないままの支援機構であるため、最終的に、電気料金や消費税の値上げという形で私たち国民が賠償資金を負担させられるおそれが大きい。そんなことをさせないよう、しっかり監視していかなければならない。

■ 脱原発の社会を
 これまで国の安全神話に騙され、私たちは原子力発電の問題を深刻に受け止めてこなかった。しかし、今回の被害の甚大さ、広汎性、長期性を目の当たりにし、原子力発電は止めなければならないと真剣に考える。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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