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2016.08.17更新

7月10日、
資生堂・アンフィニ裁判の判決がでました ! !

「一部勝訴」を勝ち取りました。
(アンフィニの社員としての地位を認めるものです)

資生堂・アンフィニ事件地裁判決のご報告
~解雇・雇止めを無効とする判決がでました!!

1 はじめに
 今年7月10日、横浜地裁第七民事部(阿部正幸裁判長)は、資生堂鎌倉工場で口紅製造に従事してきた女性労働者七名に対する解雇・雇止めは、無効であるとし、現在も請負元会社であるアンフィニの社員たる地位があることを認め、未払い賃金と今後の賃金支払いを命じる判決を言い渡しました。一方で、同判決は、原告らと資生堂との間に労働契約があることを認めませんでした。

2 資生堂・アンフィニ事件とは
 原告らは、長い人では9年もの間、資生堂鎌倉工場口紅製造ラインで働いてきました。
 その間、所属会社と契約形式は、
 リライアンス(請負)→コラボレート(請負)→アンフィニ(派遣)→アンフィニ(請負)
 と替えられてきました。
 もっとも、原告らは、その間一貫して、資生堂の正社員と渾然一体として働き、資生堂の正社員から直接指揮命令を受け続けてきました。
 2009年4月、資生堂が発注量約四割減の減産通告を行った直後、アンフィニは、原告らとの労働契約の期間を、同年末から5月末日に書き換え、5月17日には原告のうち五名を含む22名を期間満了前に整理解雇、5月末に原告のうち2名に対し、雇止めを行いました。
 この解雇・雇止めは無効であるとして、資生堂と直接雇用関係にあること、仮にそれが認められない場合、アンフィニと労働契約があることの確認と、未払い賃金の支払いなどを求めて、2010年6月に提訴したのが、本事件です。

3 解雇は無効
 まず、本判決は、原告ら5名に対する整理解雇について、無効としました。
 そもそも、原告ら5名に対する解雇は、契約期間中のものですから、「やむをえない事由」(労働契約法17条1項)がなければできないものです。
 本判決は、「早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破たんしかねないような危機的な状況であったということはできず、(中略)人員削減の必要性の程度が高度であったとまではいえない」とし、また、原告らに十分な説明のないまま契約期間短縮の合意をさせているなど解雇回避努力義務を尽くしたとは言えず、手続きの妥当性も欠くとして、「やむを得ない事由」は認められないから、解雇は無効であるとしました。

4 雇止めも無効
 次に、雇止めについて、原告らとアンフィニとの有期労働契約は、アンフィニが参入する前後を通じて、更新されつづけていることなどから、「雇用継続への合理的期待を有していた」とし、解雇権濫用法理を類推適用するとしました。その上で、高度の人員削減の必要性があったとまでは言えないなど、上記解雇を無効と判断したのと同様の理由から、雇止めも無効であるとしました。
 リーマンショック以降、いすゞ事件東京地裁判決や日産事件横浜地裁判決など、有期労働契約の「雇用継続への合理的期待」を限定し、生産計画 の変動や、受注量減少があったことのみをもって、雇止めの必要性を認める判決が相次いでいましたが、本判決は、これらの不当な判決の流れを変が相次いでいましたが、本地裁判決は、これらの不当な判決の流れを変える画期的な意義があると考えています。

5 資生堂との地位確認を認めず
 他方で、本判決は、契約書上雇用主となっているのはアンフィニであることや、解雇・雇止めの後、原告らが労働組合をとおして団体交渉を求めたのはアンフィニであることなどといった形式的な理由だけで、資生堂との間の黙示の労働契約の成立を認めず、資生堂との雇用関係を認めませんでした。
 前述したとおり、資生堂は、所属会社・契約形式を転々とさせながら、一貫して、正社員が担うべき基幹的恒常的業務である口紅製造を、自らの指揮命令下で原告らに担わせてきました。
 弁護団は、証人尋問等で、資生堂が作成した「生産日程表」や「標準書」によってベルトの速度、細かい作業手順や時間などを決められ、それに則って口紅製造を行っていたことや、原告らが新製品製造のテストに参加していたこと、資生堂から技術指導を受けていたことなどを立証しました。しかし、判決では、これらの事実を認定しながら、「これらは、生産量及び品質管理等の確保の観点から必要な措置である」から、「労働契約関係があるのと同視することできるような指揮命令をしていたとみることはできない」としたのです。
 資生堂は、このような直接の指揮命令を行っていただけでなく、アンフィニが参入する際には、誰をどの会社に移籍させるかや、賃金などの労働条件などをすべて決定していました。偽装請負から偽装派遣、再び偽装請負へと、資生堂が労働者派遣法の根幹たる常用代替防止原則を組織的に脱法してきたのは明らかですから、原告らと資生堂との間に黙示の労働契約が認定されるべきです。

6 未払い賃金を半額に減額
 さらに、本判決は、バックペイおよび判決確定までの賃金支払いを平均賃金の半分しか認めませんでした。原告らは、時給労働者だから労働時間で賃金が決まる、解雇・雇止め後、受注量が二分の一程度になり、それに伴い、工数も減少しているから、解雇・雇止めされずに働いていても受け取れた賃金は二分の一だ、としているのです。
 契約書上、労働時間が決められており、アンフィニが真に独立した請負会社であるならば、原告らの賃金を確保すべきことは当然です。このような判断は、いまだかつてない異様なものであって、到底許されるべきものではありません。

7 「一瞬も 一生も 美しく」
 原告らは、日本を代表する化粧品メーカーである資生堂で、しかも、主力商品である口紅の製造に従事することに「誇り」を持って働き、高い技術を提供してきました。
 しかし、資生堂は、原告ら女性労働者を切り捨て、そればかりか、2013年1月、鎌倉工場を、「企業の構造改革」のため、2015年に閉鎖すると発表しました。鎌倉工場で働く約700名の労働者(多くは女性)を失業に追い込もうとしているのです。
 資生堂は、「社会と、お客さまと、そしてすべての人が『一瞬も 一生も 美しく』あるように」と、宣言しています。しかしながら、その実態を見れば、「儲けるためには、労働者も地域経済も犠牲になって構わない」という経営姿勢であることは、明らかです。
 現在、全労働者の約4割を派遣労働者、請負労働者などの非正規労働者が占め、そのうち約7割を女性が占めています。神奈川では、女性労働者の約57%が非正規労働者として働いています。この裁判闘争は、女性労働者が、人間としての尊厳や働く誇りを取り戻し、そして、女性労働者を物扱いし、安易に切り捨てる大企業の経営姿勢を断罪し、雇用責任を果たさせる闘いです。
 闘いの場は、東京高裁へうつりますが、引き続きみなさんのご支援をお願い申し上げます。

【弁護団メンバー】
 藤田温久、川口彩子、石井眞紀子、小野通子、中瀬奈都子 ほか

投稿者: 川崎合同法律事務所

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