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2023.11.08更新

川口彩子弁護士については、こちらをご覧下さい。

kawaguchi   

 

はじめての調停
 調停の申立てをすると、1か月後くらいに期日が設定され、裁判所に行く日が決まります。弁護士がついている場合も、ついていない場合も緊張しますよね。
 今回は、初回の調停のイメージをご紹介します。

 

服装
 ふだんの服装で大丈夫です。普段着でもスーツでも可です。スーツを着用していないからといって不利にみられることはありません。

 

待合室
 待合室は、申立人待合室と相手方待合室に分かれており、それぞれ離れたところにあります。ただ、同じフロアにあることも多いので、相手と顔を合わせたくない場合は時間をずらすなどして早めに待合室に入るようにするとよいでしょう。
 呼出時間になると調停委員が呼びにきます。最近は個人情報保護のため、事件番号で呼ばれることが多いです。あらかじめ自分の事件番号を確認しておきましょう。

 

調停委員会
 男女の調停委員と裁判官の3人が、調停委員会を構成し、あなたの調停を担当します。部屋にいるのは調停委員だけですが、裁判官も事前事後に報告を受け、適宜、調停委員と相談しながら案件を進めていきます。
 調停委員は、裁判官ではありません。研修を受けた民間の方が調停委員を務めています。法律上調停委員は40歳以上と定められていますが、60代~70代の方が多いイメージです。家事調停の場合は、男性と女性が1人ずつ調停委員として担当します。原則として、案件が終わるまで同じ調停委員が担当します。

 

調停室
 待合室で呼ばれると、調停委員が調停室まで案内してくれます。代理人として弁護士がついている場合は一緒に調停室に入れますが、弁護士以外は調停室に一緒に入ることはできません。(通訳が必要な事件の通訳さんは別)
 調停委員と向かい合って座ると、最初に本人確認をされることが多いです。免許証等を持参しておくと安心です。
 本人確認が終わると、調停委員の自己紹介、調停のガイダンスにうつります。ガイダンスでは、調停委員には守秘義務があること、当事者も録音録画等は禁止されていること、調停の仕組みや話し合いがまとまった場合などについての説明があります。

 

調停のしくみ
 調停では、申立人と相手方とが同じ日に呼ばれますが、原則として顔を合わせることはありません。初回の調停では、まず申立人のほうから話を聞かれます。20分~30分で交代となり、元の待合室で待っていてくださいと言われます。申立人が待合室に戻ると、相手方が調停委員から調停室に呼ばれます。そこで、調停委員の方から、適宜、申立人の主張を相手方に伝え、相手方の意見を聞かれます。相手方の方も20~30分で交代となり、元の待合室に戻るよう言われます。その後、再度、申立人が呼ばれ、相手方の主張を教えてもらいます。
 このように、調停では伝言ゲームのように話が進みます。調停で相手に会えるかもと期待している方もいらっしゃるかもしれませんが、上記のとおり原則として、相手と直接話をする場面はありません。
 初回の調停ではそれぞれ平等に20分~30分かけて話を聞いてくれますが、回数を重ねてだんだん調停が煮詰まってくると、どちらか一方当事者の話が長くなることもあります。解決のために必要な時間ですので、ご了承ください。

 

調停のときに注意すること

(1)自分ばかり話さない
 上記のとおり、調停では20分~30分をめどに交代し、元の待合室に戻らなければなりません。この時間でお話しできることは限られています。家事事件だと、どうしてもいろいろな経緯がありますから、説明しようとすると長くなるのはやむを得ないことではあります。ですが、それをできるだけコンパクトにまとめ、調停委員とできるだけコミュニケーションを取ることが重要になります。調停委員も時間を意識しながら調停を運営しています。こちらが話したい話ばかりしていると、調停委員が聞きたいことが時間内に聞けずにイライラしてしまいます。調停委員からの質問に端的に答えていけば、調停委員として関心をもったこと、重要と考えている点をたくさん質問してくれて、理解を深めてもらえます。ぜひ、調停の際は、質問に端的に答えることを心がけてください。


(2)調停委員は相手の味方というわけではない
 自分のターンが終わって相手のターンとなり、再度調停室に呼ばれます。そのときに、調停委員は相手が話した内容を伝えてくれます。
ここで陥りがちなのは、調停委員から「相手は〇〇と言っていましたよ」と言われると、まるで調停委員が相手の言い分を信じてしまい、相手の側についてしまったかのように感じてしまうことです。しかし調停委員は、ただ単に相手が言ったことを伝えているだけなのです。悪気はありませんから、変に落ち込んだり、疑心暗鬼にならないようにしましょう。
また、調停委員が伝えてくれる相手の言い分に対して、逐一その場で反論をしてしまうと話が脱線したり、進まなくなってしまいます。調停委員が相手の言い分を伝えているときは、まずは黙って全部聞き、話がひととおり終わったところで反論するようにしましょう。



初回調停の終わり
 調停の初回は、相手の言い分を把握したくらいのところで終わります。本格的なすり合わせは次回以降になることが多いです。あまり進まなかったと感じるかもしれませんが、まずは第一歩を踏み出せたことが重要です。
 次回の調停は、ひと月からひと月半後くらいになります。次回の日程は、調停の日に全員の予定をすり合わせて決まります。弁護士がついている場合は、今回の調停の結果をふまえ、よく打ち合わせをして次回に臨みましょう。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2023.07.03更新

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nakase

 

 離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
 しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
 では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。 

 

◆財産分与とは?
 財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
 婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
 財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
 財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。

 基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
 ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。

 

◆別居前にできること
 そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
 通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
 もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。

 

◆裁判所を通して行う財産調査
 では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。
 夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
 そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
 調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
 調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
 ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
 例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
 その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
 私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。

 

◆別居前にある程度把握しておこう
 このように裁判所に調査嘱託を認めてもらうためにも、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
 川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
 財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。

 弁護士 中瀬奈都子

投稿者: 川崎合同法律事務所

2023.06.01更新

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hoshino
    
第1 空き家問題とは


1 空き家がどれくらいあるか


 全国に848万9千戸が空き家があり、空き家率13.6%(平成30年 総務省統計局)となっている。
 川崎市の空き家は7万3800戸で空き家率9.5%(平成30年 川崎市)で空き家率とほぼ横ばいである。もっとも、空き家の内、67.3%は業者等によって管理されている。長期不在などの管理されていない可能性の高い空き家は、空き家の内の32.2%と近年急増している。川崎市では、多摩区、中原区、川崎区の順に空き家数が多い。


2 空き家・空地の何が問題か


 管理が行き届かないことによる、近隣・地域への悪影響
(家屋の倒壊、草木・雑草の繁茂、害虫・猫・ネズミ等の繁殖、不審者のたまり場になる、放火の危険、ゴミ屋敷、悪臭、不衛生、景観悪化、近隣不動産価値の低下)


3 空き家増加の原因


① 核家族化による住宅の増加に加えての少子高齢化
② 新築志向からくる新築住宅の大量供給
③ 空き家を取り壊した時の負担増
 数百万円の解体費用、小規模住宅用地の特例除外による固定資産税の増加(約6倍)


第2 問題が起きた場合はどうする?


1 だれに請求するか(権利関係の確認)


 空き家・空地等によって被害を受けた場合は、空き家の所有者等に必要な処置を請求することになる。しかし、誰に請求すればいいのか、どうやって調べるのか。


(1)登記名義人を調べる


 法務局で登記事項証明書を取得し調査する。
 未登記建物については、市町村から固定資産評価証明書を取得することも考えられる(ただし、一般的には入手できない)


(2)登記名義人が死亡している場合


 住民票の除票や戸籍全部事項証明書を使って相続人を調査する。ただし、自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要があること説明する必要有り。
 相続人を調査し全員に請求する。


(3)空き家の相続人がいない場合


 利害関係を有する者なら相続財産管理人の選任を申立てることができる。相続財産管理人が空き家を管理し場合によっては取り壊すことができる。
 ただし、相続財産管理人は、家庭裁判所が候補者にとらわれず選任し、申立人に予納金を納付させる(20万円~100万円くらい)。申立人や関係者が相続財産管理人になる場合は、報酬を予め放棄することが多い。
 相続財産管理人の選任までは必要ないものの、相続放棄によって裁判をする必要がある場合には特別代理人の選任を申し立てることも考えられる(こちらの方が予納金は安め)。


(4)土地と建物の所有者が異なる場合


 建物を管理している人が一般的には土地の管理を行っている。したがって、通常は建物の管理者が相手になる。


(5)空き家が賃貸の場合


 1次的には、空き家の占有者である賃借人、しかし、朽ちた空き家を放置しているなど場合は空き家の所有者たる賃貸人にも責任がある場合もある。


(6)空き家の所有者の判断能力に問題がある場合


①成年後見人の選任をしてもらう。
②親族から管理の委任を受ける
③事務管理(緊急時に他人の財産の管理をする)


(7)所有者が行方不明の場合


 不在者財産管理人の選任を申し立てる。やはり、家庭裁判所が候補者にとらわれず選任し、申立人に予納金を納付させる(数十万円~100万円くらい)。
不在者財産管理人の選任までは必要ないものの、相続放棄によって裁判をする必要がある場合には特別代理人の選任を申し立てることも考えられる(こちらの方が予納金は安め)。


2 何を請求するか


(1)隣地との境界を確認したい


①当事者間の協議。民事調停、②筆界特定制度、③境界確定の訴え、④所有権確認訴訟


(2)空き家がこちらの敷地にはみ出している


 所有権に基づく妨害排除請求権として撤去を求める。ただし、時効取得。権利濫用。


(3)隣の家が傾いてきた


 所有権に基づく妨害排除請求権としての傾斜防止措置を求める。仮処分も。
 著しい傾斜(20分の1超)等があれば、空き家対策特別措置法に基づく処置を促すことも


(4)隣との間に塀を作りたい


 共同の費用で塀を設けることができる。話会いが整わない場合は、板塀又は竹垣その他これに類する材料で高さ2mのものとすると規定されている。
 したがって、どうしても話し合いがまとまらないときは、自分の敷地に自分の費用で塀を建てるか、隣の所有者に対して設置協力を求める裁判を提起することになる。


(5)隣から枝や根が越境してきている


 枝は、切除させることができる。根は切り取ることができる。ただし、普通は撤去を要求することになる。


(6)隣の空き地の下にガス管・水道管を埋設したい


 基本的には所有権は地下にも及ぶ。しかし、下水道法11条1項で他人の土地を使用しなければ、下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは下水管については承諾不要とされている。これは、下水以外の配管について類推適用される。


(7)空き地・空き家からのごみに困っている


 基本、土地をどのように使うのかは自由。何も請求出来ないことが多い。ただし、隣の敷地にゴミがはみ出して来ているような状態で、所有者がなんらの対策もとらない場合は、不法行為により損害賠償請求出来る場合がある。


(8)空き家からの火事


漏電等については空き家の所有者に請求できる。ただし、失火責任法の適用がある場合もある。
第三者による放火の場合は、基本的に空き家の所有者に請求出来ない。しかし、施錠していない、燃えやすい物を放置するなどしていた場合は空き家の所有者の責任も考えられる。


(9)空き家に不審者が出入り


 法的処置は難しいが、管理をお願いする。管理の委任を受ける。警察に通報するなどの方法が考えられる。


(10)空き家による不動産価値の下落


 多く主張されるがほとんど認められない。ただし、受任限度をこえる不利益が生じ、住宅価格が相当下落した場合に下落相当額の損害賠償を認められる場合も考えられる。


第3 空家対策特別措置法

何ができるようになったか


① 空き家等の調査・立ち入り
② 固定資産税情報の利用
③ 特定空家等の所有者に対する助言指導
④ 特定空家等の所有者に対する勧告(固定資産税の特例がなくなる)
⑤ 特定空家等の所有者に対する命令(50万円以下の過料)
⑥ 特定空家等の所有者に対する行政代執行
⑦ 特定空家等の所有者等が不明な場合の行政代執行(略式代執行)

 

※「特定空家等」

①そのまま放置すると、倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態のもの
②そのまま放置すると、衛生上著しく有害となるおそれのある状態のもの
③適切な管理が行われていないことで、著しく景観を損なっている状態のもの
④その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態のもの


以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2023.02.28更新

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 民法・不動産登記法等の改正等 その2 ~共有物の管理の範囲の拡大・明確化~改正民法等の施行が迫っています。共有物の管理等でお困りごとがございましたら、ぜひ弁護士にご相談ください。

 

1 はじめに


 2021年4月21日、民法・不動産登記法等の改正等がなされました。この改正等の内容は、多くの市民の方に影響を与える大改正です。ただ、その改正点等の内容は、多岐にわたります。そこで、今回は、民法の共有物の管理の範囲の拡大・明確化されたことについて、解説いたします。


2 義務の明確化

 ⑴ 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
  現行民法では、単独で占有権原がない共有者が共有物を占有した場合、他の共有者に対し、いかなる義務を負うのかについて、明確になっていませんでした。
  今回の改正では、不必要な紛争を防止するために、この義務の内容を明確にしました。


 ⑵ 改正民法では、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除いて、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うということになりました(新民法249条2項)。
  さらに、共有物を使用している共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならないことが明記されました(新民法249条3項)。遺産共有の場合も、相続の承認をした共同相続人は、遺産を使用するに際して、善良な管理者の注意義務を負うことになりました。なお、熟慮期間中は、従前のとおり、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理すれば足ります(新民法918条)。


3 管理行為の範囲に関する改正


⑴ 現行民法は、共有物に変更を加える場合、共有者全員の同意が必要とされていました。ですが、これを全てに適用すると、実質的には、共有者に与える影響が小さい場合であっても、反対者がいれば変更ができなくなり、円滑な共有物の利用、管理に支障が生じる場合がありました。
  そこで、改正民法では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更(以下「軽微変更03」といいます。)は、各共有者の持分の価格の過半数で決することができるものと規定されました(新民法251条1項、252条4項)。「形状の変更」とは、その外観、構造等の変更を、「効用の変更」とは、その機能や用途の変更のことをいいます。いかなる場合に、軽微変更にあたるのかについては、変更箇所及び範囲、変更行為の態様及び程度等を総合して判断されます。具体的に、舗装行為や大規模修繕工事は、原則として、軽微行為にあたると考えられます。


⑵ また、現行民法のもとでは、共有物に対する賃借権その他の使用を目的とする権利(以下「賃借権等」といいます。)の設定は、原則として、管理行為であり、持分の価格の過半数で決することができるとする判例がありました(最判昭和39年1月23日集民71号275頁)。ですが、これでは、長期間の賃借権等の設定がなされた場合、共有者による共有物の使用、収益等が制約されるので、全員の同意が必要であると考えられていましたが、その区別の基準が不明確でした。
  そこで、改正民法では、一定の期間を超えない短期賃借権等の設定を除く、賃借権の設定等は、共有者全員の同意が必要になるとされました(新民法252条4項)。具体的に一定の期間を超えない短期賃借権等の設定とは、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等については10年、それ以外の土地の賃貸借等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6ヶ月を超えないものがその対象となります。ここで注意しなければならないこととして、建物所有目的の土地賃借権等の設定、建物賃借権の設定が挙げられます。まず、建物所有目的の土地賃借権等の設定は、仮に、契約で存続期間を5年以内と定めても借地借家法により、存続期間が30年となってしまうので、一時使用目的である場合を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法3条、25条)。また、建物賃借権の設定も、仮に、契約で存続期間を3年以内と定めても、借地借家法により、正当の事由があると認められない限り、契約の更新をしない旨の通知をすることができない以上、不更新条項付定期建物賃貸借、取り壊し予定の建物賃貸借、一時使用目的の建物賃貸借を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法28条、38条1項、39条1項、40条)。


4 施行日と経過措置
 

 今回の民法等の改正は、改正された部分との関係で施行日が異なりますので、注意が必要です。なお、不動産登記法の改正に関する部分を除く民法の改正部分については、2023年5月1日から施行されます。
 それ以外にも、今回の民法等改正において、個別に経過措置が定められていますので、個別具体的に、改正された民法等が適用されるかどうかについて、確認する必要があります。基本的な考え方は、施行日以後は、既に生じている権利関係についても改正後の規定が適用されることを前提にして、経過措置を講ずべき規定が個別に定められています。


5 ご不明な点があれば、ご相談へ


 以上のとおり、共有物の管理に関する基本的な改正事項に絞って、解説してまいりましたが、これまでの現行法の考え方を踏まえる必要や他にも留意すべき改正点がございますので、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.09.06更新

小野通子弁護士については、こちらをご覧下さい。


 遺言書は書いた方が良いとは何度も聞いているし、「いつか書かなきゃ」とは思ってはいるけど …

 遺言書の作成が先延ばしになっていませんか?

 配偶者や子ども達に争いを残さない為にも、今、ちょっと頑張ってみませんか?
 2020年7月から、自筆証書遺言書保管制度が開始され、遺言書の作成・保管方法に選択肢が増えました。自筆証書遺言書保管制度の最大のメリットは、相続人等に遺言書の内容を知らせる通知制度があることです。この制度では、遺言書を作成するのはあくまでご本人ですので、遺言の有効性(作成時に遺言能力があるか等)については公正証書遺言より劣りますが、遺言書が紛失してしまい、誰にも発見されないリスクについては回避できる可能性が高いといえます。
 有効性に間違いのない遺言書を作りたい! という方は、ちょっと費用がかかりますが、従来通り公正証書遺言をおすすめします。
 遺言書は、誰にも気づかれずに、何度でも書き直しができます。

 ご興味を持って頂けたら、ぜひ、お気軽にご相談にいらしてください。

遺言書・小野

投稿者: 川崎合同法律事務所

2022.06.24更新

 山口毅大弁護士については、こちらをご覧下さい。

1 はじめに

 2021年4月21日、民法・不動産登記法等の改正等がなされました。この改正等の内容は、多くの市民の方に影響を与える、大改正です。ただ、その改正点等の内容は、多岐にわたります。そこで、今回は、相続土地国庫帰属法の要点について、解説いたします。


2 相続土地国庫帰属法の概要

  相続土地国庫帰属法とは、簡単にいえば、一定の要件のもとで、取得した土地を国庫に帰属する制度です。


  その趣旨は、次の点にあります。すなわち、相続等によって土地を取得した方は、特に積極的な土地の利用をするつもりがないのに、土地の管理について、責任を負わなければならないこと、所有者不明土地を発生させる原因となることから、一定の限度でその負担から解放させる方法を認める必要性が高いという点にあります。他方で、過度な管理費用等が国に転嫁されること、モラルハザードが発生することを防止する必要があります。そこで、相続または相続人に対する遺贈(以下「相続等」といいます。)により取得した土地のうち、一定の要件を満たすものに限定した上で、法務大臣が要件を確認して、承認するということになりました。


3 承認申請をすることができる方

  上記趣旨から、相続等により、取得した者に限って、承認申請権を与えています。


4 国庫帰属が認められるためには(国庫帰属が認められない土地の要件)

  国庫帰属が認められるには、国庫帰属が認められない土地に該当しない必要があります。
  まず、通常の管理または処分をするために、過分の費用や労力を要する土地を類型化し、これらの土地に該当する場合には、却下事由としています。


  具体的には、①建物の存する土地、②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地、③通路その他の他人による使用が予定されている土地として政令で定めるものが含まれる土地、④特定有害物質により汚染されている土地、⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地です。


  また、土地の種別や現況、隣地の状況等から、実質的に通常の管理または処分をするために、過分の費用や労力を要する土地の類型化し、これらの土地に該当する場合、不承認事由とされています。


  具体的には、①崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの、②土地の通常の管理又は処分を阻害する有体物が地上に存する土地、③除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地、④争訟によらなければ通常の管理又は処分を行うことができない土地、⑤その他、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地です。


5 申請手続

  承認申請は、管轄する法務局や地方法務局に対して行います。具体的には、相続土地国庫帰属法では、①承認申請者の氏名又は名称及び住所、承認申請にかかる土地の所在、地番、地目及び地積を記載した申請承認書、②添付書類を提出することになります。ただし、具体的な方法、添付書類については、今後、法務省令で定めることになります(2022年3月時点)。


6 申請後

  申請後、審査手続が進み、却下処分、不承認処分又は承認処分が出され、通知されます。


7 留意事項から負担金

  承認があったとき、承認申請者は、承認があった土地に着き、管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して、政令で定めるところにより算定した負担金を、負担金の額の通知を受けた日から30日以内に納付しなければなりません。


8 施行日

  相続土地国庫帰属法は、2023年4月27日から施行されます。


9 総括

  このように、相続土地国庫帰属法を利用するためには、要件が厳格であり、政省令で委任されている事項があり、今後制定される通達を見なければ、取扱いが不明な点もございます。この制度を利用するに際しては、不動産や相続に携わる弁護士に、一度ご相談されることをお勧めいたします。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.07.12更新

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 賃貸のマンション・アパートに住んでいる人は多いですが、不動産賃貸は、普通の人は頻繁にする契約でないためトラブルや不安になることもあります。しかし、基本的な知識があると不安は大きく軽減されます。そこで、知っておきたい基礎知識をご紹介します。


土地を借りて自分の家を持っている人はこちら(借地トラブルのケーススタディはこちらをご覧下さい。)

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目次
第1 基礎的法律知識 
1 賃貸借のはじめに 
(1) 準備するお金は家賃の6ヶ月分が目安 
(2) 保証人は必要? 
2 契約更新 
3 賃貸借の終わり 
(1) 賃貸物件を明け渡す場合の手続き 
(2) 大家さんから明け渡しを求める場合 
(3) 契約の解除 
4 契約の終了後の精算 
(1) 敷金のもつ意味
(2) 敷金から差し引けるお金(原状回復義務) 
5 賃料が高すぎる、安すぎる。そんなときは 
(1) 傾向 
第2 弁護士に相談するメリット 

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第1 基礎的法律知識


1 賃貸借のはじめに


(1) 準備するお金は家賃の6ヶ月分が目安
 賃貸住宅の入居の際に必要なお金は様々ですが、首都圏では、礼金が2ヶ月、敷金が2ヶ月、仲介手数料が1ヶ月、前家賃1ヶ月が賃貸借契約の時に必要なことが多いです。しかし、その他にも火災保険料や損害保険料、家賃保証の費用がかかる場合もありますので、余裕をもった予算が必要です。


ア  礼金とは?
 賃貸住宅に入居するとき、大家に対して支払うお金です。礼金は、賃貸住宅から退去しても戻ってきません。礼金の額は物件によって異なりますが、およそ家賃の1~2ヶ月が相場です。近年は礼金ゼロの物件も増えています。礼金を支払うのは、賃貸借契約を締結するときです。


イ  敷金とは?
 将来、大家に損害を与えた時のために、入居時に大家に預けるお金が敷金です。敷金はあくまでも預けておく金銭ですから、原則的に退去するときに戻ってきます。ただし、家賃を滞納している場合や、入居者の負担で部屋を補修する必要がある場合には、その金額が敷金から差し引かれることになります。首都圏では、敷金の額はおよそ家賃の2~3ヶ月です。一部地域では家主に預け入れた敷金(保証金)の一部を退去時に償却する「敷引」と呼ばれる制度を採用している場合もあり、この場合は敷金の一部が礼金のような取扱いになります。


ウ  仲介手数料とは?
 仲介手数料は、家主と入居者との仲立ちをしている不動産会社に支払う報酬です。法律で最大でも家賃1ヶ月分に消費税を加えた1.1倍以内と決められています。実際には、1.1ヶ月分を請求されるケースが多いようです。近年は、仲介手数料は原則0.5ヶ月分という裁判の判断も出ています。0.5ヶ月という場合も増えると思われます。また、不動産会社から直接に賃貸物件を借りる場合は必要ありませんので仲介手数料ゼロとなります。


エ  前家賃とは?
 前家賃とは入居を開始する月の家賃を契約時に払うことです。建物賃貸借契約は、翌月分の家賃を先に払う契約になっている場合が多いので、契約の時点で入居開始月の家賃を前もって支払います。なお、月の途中から入居する場合は、前家賃として、その月の日割り家賃と翌月分の家賃を、一緒に支払うことが多いようです。


(2) 保証人は必要?
 賃貸借契約締結の場合、保証人が求められることが多いです。近年は保証会社による保証が求められることが多くなっています。破産等していると保証会社の審査が通らないこともあるので、心配な方は契約の条件等に注意してください。


2 契約更新


 賃貸借契約は2年ごとに更新することになっている場合が多いです。家主と借主が、合意によって、契約を更新する場合は、更新契約書を作成します。

ギモン 仲介手数料を払わなければいけない?
 更新の際に、仲介手数料を要求する業者がいますが、家主の立場で建物を管理している業者が、借主に対して、更新の際の仲介手数料を要求することは許されません。


ギモン 大家さんから更新を拒絶されたら出て行かなけれいけない?

 貸主が拒絶しても借主は原則的に更新することができます。これを法定更新といいます。法定更新とは、一定の要件を満たす場合に、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる制度です。不安な場合は、弁護士に相談してください。
 なお、更新契約書を作成しなくとも、契約は更新できます。

 

*注意* 定期借家契約に注意してください
 賃貸借契約の内、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことの約束を含むものを定期借家契約といいます。定期借家契約には、書面にしなければいけない、契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならないなど、法律上の要件がありますが、有効な場合は更新が認められず、期限が来たら賃貸物件をいやでも明け渡さなくてはいけない場合が出てきます。したがって、契約更新時に定期借家契約にならないように注意してください。
わからない場合は、弁護士に相談してください。

 

ギモン 更新料は払わなければいけない?
 契約に、更新料の支払が規定されていなければ、借主に更新料の支払義務はありません。もっとも、最近の借家契約では、更新料支払約定の規定が存在することが多くなっています。
 仮に更新料の支払約定があるのにもかかわらず借主が支払わない場合には、賃借人の債務不履行として、契約解除の理由になる場合があります。
 詳しくは弁護士にご相談下さい。

 

3 賃貸借の終わり

(1) 賃貸物件を明け渡す場合の手続き


① 退去の通知
 退去することを決めたらまず、退去の通知が必要です。入居時に取りかわした契約書に目を通し、退去通知の「時期」と「方法」について確認してください。法律上は6ヶ月前までに通知するようにされていますが、一般的に退去通知は退去の1ヶ月前までに通知すれば大丈夫な場合が多いのですが、1ヶ月以上前に通知しなければならないケースもありますので注意してください。通知が遅れると、明け渡し後も契約が終わってないとして家賃を請求される場合があります。
 通知の方法も、電話のみでいいのか書面の提出が必要なのかを確認しましょう。


② 引越し日の連絡
 引越し日が決まったら、不動産会社への連絡を忘れずにしましょう。この時、退去の立会いの日時を決めることが多いようです。


③ 引越し
 引越しまでに水道・電気・ガス・電話・インターネットの終了手続き(もしくは転居手続き)は終えておきましょう。


④ 退去の立会い
 部屋を明け渡す前に、管理会社や貸し主と室内のキズや汚れ等のチェックを行うことが多いです。


⑤ 鍵の返却
 鍵の原本と、合い鍵をもらっている場合は不動産会社に忘れずに返却します。合い鍵を返却しないと、防犯上鍵交換費用を求められることがあります。


⑥ 敷金精算
 敷金から契約書で定められている各種費用が差し引かれ、残金が返還されます。


(2) 大家さんから明け渡しを求める場合

 家主側からの解約には「正当事由」の存在が必要です。
 期間満了に伴う契約の解除には、上記の①6ヶ月前の解約通知と、②「正当事由」の存在が必要です。なお、法定更新によって期間の定めのない契約になっている場合でも同様です。


 「正当事由」の有無は、以下のことを考慮して判断されます。


①賃貸人、賃借人の双方が土地、建物を必要とする事情
②借地、借家に関する従前の経過(賃貸料滞納の有無、用法違反の有無など)
③建物の利用状況、現況(老朽化)
④財産上の給付の申出(立退き料など)


 むずかしい判断になるので、弁護士に相談されることをお勧めます。


(3) 契約の解除
 借主が家賃を払わなかったり、部屋を故意に傷つけたりして債務不履行(賃料の未払等の重要な契約違反)があった場合、家主側から契約を解除する場合があります。
 ただし、賃貸借契約は継続して存在する契約であって、当事者間の信頼関係により維持されていますので、1回程度の些細な賃料の不払いが直ちに契約解除が認められる訳ではありません。
 不払い回数だけでなく、不払い額、不払いに対する当事者の態度等を勘案して、当事者間の信頼関係が崩れるに至ったかどうかにより、解除の可否が判断されます。
契約が解除出来るかどうかも難しい判断になりますのでこれも弁護士に相談されることをお勧めします。


4 契約の終了後の精算
(1) 敷金のもつ意味
 敷金は、賃借人が賃料を滞納したり、賃借人が不注意等によって賃借物に対して損傷・破損を与えた場合等の損害を担保するために、賃借人から賃貸人に対して預け入れるものです。


(2) 敷金から差し引けるお金(原状回復義務)
 原状回復義務とその範囲(居住用建物を中心として)については、大まかにいうと、「経年劣化に伴う通常(自然)損耗」については原状回復の義務はありません。
 また、借主の退去後の「ハウス・クリーニング」「鍵の取り替え」など、新たに賃貸をするための必要経費は、原則、家主の負担となります。
 なお、退去時の原状回復の費用負担の振り分けについて、国土交通省が、下記のようなガイドラインを発表しています。

原則として賃貸人が負担:
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの(例:家具の設置による跡、電気焼け、日照や雨漏りなどで発生した床の変色等)


原則として賃借人が負担:
賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)(例:引越し作業で生じた傷、不注意による床の変色、壁等の釘穴、ねじ穴等)

参考)国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)


*注意* 原状回復に関する退去の際のトラブルを予防するために
 入居時の状況を、写真撮影しておきましょう。特に、中古建物に入居する際は、原状を把握しておくために有用です。

 

5 賃料が高すぎる、安すぎる。そんなときは
 賃料増減額請求で不当に高かったり、安かったりする場合は、裁判所を利用して賃料を変えることが可能です。


(1) 傾向
 従前は賃料増額請求がほとんどでしたが、バブル崩壊後は、減額請求が増加しました。
また、建物の築年数が重なっていくので、借主としては原則的には、「せめて、現状維持を」と主張しておくのが賢明でしょう。また、建物の維持管理、修繕要求とも関連して、増額請求に対処しましょう。


(2) 紛争の解決手段
 また、法改正によって、賃料の増減額に関して、紛争が生じた場合には、いきなり裁判で争うのではなく、まず簡易裁判所で調停を申立てることが必要となりました。
(自主交渉→調停→裁判という流れとなります。)


*注意* 貸主から、賃料(家賃)の値上げ請求をされたら?
 適正な増額請求かどうかを見定めて交渉をする必要があります。
 もし、これまでの賃料を提供して、家賃が受け取りを拒否した場合、賃料の未払という債務不履行にならないよう、法務局に供託をしておきましょう。


第2 弁護士に相談するメリット


 賃貸借は、ある程度の知識がないと、不利な結果になることがあります。弁護士に相談する事で、どうしたらいいという不安な状況から抜け出せると思います。
 契約の内容によっては取り返しのつかないことになる場合もあり、契約時や問題が起きた時など、こまめに弁護士の助言をもらっておくことが、トラブルの防止のために大事です。
 住まいの問題は、精神的にも負担になることが多いので、早めに弁護士に相談することで気持ち的にも楽になることが多いです。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.05.07更新

 婚姻費用については、こちらをご覧ください。

 離婚したい!となったときに、一番に頭に浮かぶのはお金の問題ではないでしょうか。
 別居期間中の生活費、養育費、財産分与、年金分割、不貞行為やDVなどの慰謝料・・・後悔することがないよう、相手方としっかり話し合い、納得のいく合意を形成する必要があります。
 今回は、養育費について取り上げます。

 

■「養育費」とは?

 

 未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。
 夫婦が離婚する際、未成年の子どもがいる場合、その子どもの親権者をどちらかに決めなければなりません。
 親権者にならなかった親も、子どもの親である以上は、扶養義務があり(民法877条1項)、離婚をしても養育費を分担する義務があります。
 その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。
 子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として「養育費」を請求することができますが、通常は、子どもの親権者が他方に対して、「養育費」の支払いを求めます。

【ポイント】
・離婚をしても、親であることは代わらないので、親権者でない親も養育費を分担しなければならない。

 

■「養育費」はいくらもらえるものなの?金額のほかに決めるべきことは?


● それでは、離婚後、親権者になって子育てをするとして、相手方にどれくらい「養育費」を支払ってもらえるでしょうか。
 基本的には、「婚姻費用」を決める場合と同じです。
 いくらにするかは、夫婦で自由に決められます。
 まずは、夫婦間で話し合いをし、協議で決まらなければ、調停の手続の中で、金額や支払方法を話し合うことになります。通常は、離婚条件を決めるにあたって「養育費」についても話し合うため、離婚調停を申し立てて、その中で話し合うことが多いです(養育費を決めずに離婚をして、後で養育費分担の調停を申し立てることもできます)。
 もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、離婚訴訟の中で(あるいは養育費分担の審判手続の中で)、裁判官に決めてもらうことになります。
 調停、審判、訴訟といった裁判所の手続きを利用する場合、「養育費」は、裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用算定表」をもとにして、計算することになります。
 そのため、夫婦間で話し合う際にも、合意に至らず裁判所の手続きにうつることを想定して、「算定表」をもとに決めることが多いです。 

 

● 「養育費・婚姻費用算定表」が2019年12月23日に改定されました!
 2019年12月23日に新しい「養育費・婚姻費用算定表」が公表されました。
 最新の統計資料に基づいて更新されたもので、従前の「算定表」よりも、一般的には増額されています!
 ★新しい「算定表」はこちら!

 

● 新しい「算定表」を見てみましょう
 「算定表」の見方は、まず子どもの人数と年齢に合った表を選び、義務者(支払う側の配偶者)の年収欄と権利者(支払われる側の配偶者)の年収欄が交差する点を確認します。そこに書いてある金額が、標準的な「養育費」の額です。
なお、年収については、給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見ることになります。

例:会社員の夫 年収400万円  パートの妻 年収 75万円 
  子ども 6歳 離婚後、妻が親権者として子育てする場合


→ まず、表1を見ます。


 縦軸(義務者の年収/万円と記載されている軸)の左側の数字で「400」のところから右方向に線をのばします。横軸(権利者の年収/万円と記載されている軸)の下側の数字で「75」のところから上に線をのばします。この二つの線が交差する、「4~6万円」が、義務者が負担すべき婚姻費用の標準的な月額を示しています。

 

● いつまで支払ってもらうか(成人まで、と諦めないで)
 「婚姻費用」と違って、「養育費」の場合、支払いの終期を決める必要があります(「婚姻費用」はその概念からおのずと、終期は「別居又は婚姻関係を解消する時」と決まります)。
 養育費分担義務の対象である子どもとは、未成熟子、つまり、自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいうとされています。
 一般的には、成人して働く能力があれば未成熟子とは言えませんが、心身の障害によって働けない場合は成年に達していても未成熟子と言えますし、夫婦の収入や学歴、社会的地位から子どもが大学に進学してしかるべき場合は大学生も未成熟子と言えます。
 夫婦双方が大学を卒業しており、離婚時の子どもの年齢からして進路がある程度明確になっているケースの場合、大学に進学することを前提に終期を決めるケースが多いです。
 その場合、「子どもが大学を卒業するまで」という決め方ですと、浪人や留年等によって卒業する年がのび、終期をめぐる争いが生じかねません(また、不特定な文言にすると、強制執行する際に問題になり、強制執行できないということもありえます)。そのため、「22歳に達した後に到来する3月末日まで」などと明確に決めておくことをおすすめします。
 子どもの心身の状況や就学状況はまちまちです。その子に応じた終期を決めることをおすすめします。終期をどう決めるかや、後に争いにならない文言の定め方は、お子さんのことだからこそ、とても重要です。是非、弁護士にご相談ください。
【ポイント】
・養育費の支払終期は、必ず成人までというわけではない。
・子どもの心身の状況や就学状況、親の学歴等によって、成人時を超えた終期を決めることも可能。
・後に争いにならないような文言にしておくことも重要。弁護士にご相談を!

 

■養育費を支払ってもらえない!とならないように出来ること

 

 法務省の検討会議が、2020年にまとめた報告書では、母子世帯が離婚した父親から養育費を受け取っている割合は、なんと24%とされており、養育費の不払い解消策は、法制審でも論点になっているほどです。
 では、せっかく決めた養育費を支払ってもらえない!なんてことにならないように、対処することはできないでしょうか。
 調停や裁判といった裁判手続で決まった場合には、裁判所が作った調停調書や和解調書、判決書をもって、強制執行することができます。つまり、支払義務者の預貯金や給料などを差し押さえて、そこから直接回収するということができます。
 では、裁判所の手続を使わず、話し合いで決めた場合はどうでしょう。
 単なる「合意書」では、不払いが生じたときに直ちに強制執行することはできません(裁判手続を経る必要があります)。そこで、合意内容を、強制執行認諾文言を入れた「公正証書」にすることをおすすめします。
 公正証書は公証役場の公証人が作成する公的な契約書です。最大のメリットは、「強制執行認諾文言」を入れておけば、調停調書や和解調書、判決書と同じく、直ちに給与の差押え等の強制執行ができるという点です。
 公正証書を作成する際には、公証人に対し、作成費用を支払うことになります。公証人手数料は公正証書に載せる条件(養育費、財産分与、慰謝料など)の金額によって計算される仕組みになっています。概ね数万円程度の費用にとどまりますので、安心のために作成することをおすすめします。
 公正証書を作る際に、きちんと、強制執行が可能な文言にしておくこともお忘れなく。文案の作成と公証人とのやりとりを弁護士にご依頼いただくことも可能です。

【ポイント】
・協議で養育費を決めた場合は、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておく。
・公正証書の案の作成は、ぜひ弁護士にご依頼を!

 

 川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。     
 女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
 ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

弁護士 中瀬 奈都子

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.04.19更新

山口毅大弁護士については、こちらをご覧下さい。

 【目次】

1 ご家族が亡くなられた後にすべきことは?
2 まずすべきことは?遺言書の確認、相続人の確定、遺産(相続財産)の確定
3 遺言書の確認とは?
4 相続人の確定とは?
5 遺産(相続財産)の確定とは?
6 遺産(相続財産)の分け方~遺産分割協議とは?
7 遺産分割調停とは?
8 遺産分割審判とは?
9 共有物分割訴訟とは?
10 相続放棄の方法は?
11 相続税の申告期限は?
12 遺留分とは?
13 寄与分とは?
14 特別受益とは?
15 わからないことがあったら?

1 ご家族が亡くなられた後にすべきことは?
 ご家族が亡くなった後、遺産相続について、どのようにすればいいのかわからない方も多いと思います。
 きちんと対応しないと、あとで相続をめぐって、争いになってしまうこともあります
 そこで、今回は、遺産相続をテーマに、ご家族が亡くなった後にすべきことについて、説明します。


 やるべきことは,
  遺言書の確認
  相続人の確定
  遺産(相続財産)の調査・確定(遺留分,寄与分,特別受益等の確認も含む。)
  遺産分割協議


 場合によっては,
  遺産分割調停
  遺産分割審判
  共有物分割訴訟
  相続放棄
  相続税の申告
  遺留分侵害額請求(旧法:遺留分減殺請求)
などが挙げられます。


2 まず、すべきことは?遺言書の確認、相続人の確定、遺産(相続財産)の確定
 まず、はじめにやらなければならないことは、
  遺言書の確認
  相続人の確定
  遺産(相続財産)の確定
です。
 その上で、遺産(相続財産)をどう分けるか話し合って行く必要があります。

3 遺言書の確認とは?
 被相続人(亡くなられた方)が遺言書を作っていたか否かを確認する必要があります。

 遺言書には、いくつか種類がありますが、実際に作られている主な遺言書は、
  自筆証書遺言
  公正証書遺言
があります。
 自筆証書遺言は、被相続人(亡くなられた方)が自署にて作成した遺言です。公正証書遺言は、被相続人(亡くなられた方)が公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
 自筆証書遺言の場合、相続人に対し、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続である検認を経なければなりません。具体的な手続は、遺言書の保管者または遺言者を発見した相続人が遺言者(亡くなられた方)の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。検認しないまま、遺言を執行したり、遺言書を開封した場合、5万円以下の過料に処せられる可能性や偽造、変造したと言われる可能性がありますので、注意しましょう。
 有効な遺言書が作成されていれば、遺言書に記載された内容に従って遺産(相続財産)を分割して、相続手続を進めていきますが、遺言書がない場合、あるいは、あっても形式等に不備があって、遺言が無効になってしまう場合は、相続人全員で遺産をどのように分けるかについて話し合うこと(遺産分割協議)が必要になってきます。
 なお、遺言書があっても、相続人全員が、遺言内容と異なる分割方法について同意すれば、遺言内容と異なる分割をすることができます。

4 相続人の確定とは?
 相続人の確定とは、相続人が誰であるかを確定することです。これをきちんとしておかないと、遺産分割協議書(簡単にいうと、遺産の分け方について決めた文書)を作ったあとに、遺産分割協議が無効になってしまう危険があるからです。
 相続人の確定の具体的な方法は、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍を取り寄せることです。取り寄せた戸籍を見て、相続人が誰であるかを確定してきます。
 このように戸籍を調査するのは、相続人が知らない被相続人(亡くなられた方)の子どもがいる場合等があるからです。
 相続人の範囲は、


  第1順位 被相続人(亡くなられた方)の配偶者、子ども
  ※ 子どもが先に亡くなっている場合、その子ども(孫)(代襲相続)
  ※※ 子どもとその子ども(孫)も先に亡くなっている場合、ひ孫(再代襲相続)
  第2順位 被相続人(亡くなられた方)の父母
  ※ 父母が先に亡くなっている場合、その父母(祖父母)
  第3順位 被相続人(亡くなられた方)の兄弟姉妹
  ※ 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子ども(おい、めい)
  ※※ 昭和55年以後は、兄弟姉妹について再代襲相続はありません。
 です。


 相続関係図を作成しておくと、便利です。

5 遺産(相続財産)の確定とは?
 遺産(相続財産)の確定とは、被相続人(亡くなられた方)の残した財産を明らかにすることです。
 遺産(相続財産)に含まれる主な財産は、
  預貯金(従来は、当然承継されると考えられてきましたが、判例変更がありました。)
  現金
  不動産
      不動産賃借権(借地権等)
  有価証券(株式等)
  動産(貴金属類、自動車等)
  債務(借金など)
等です。
 なお、生命保険金は、民法上、遺産(相続財産)に含まれないので、注意が必要です。
 遺産(相続財産)目録を作成すると便利です。
 遺産(相続財産)がわからない場合、ある程度調査することで、分かる場合があります。たとえば、被相続人(亡くなられた方)の不動産については、市区町村の固定資産税課で「名寄帳」を入手すれば、その区域での被相続人(亡くなられた方)名義の不動産がわかります(東京23区の場合には、都税事務所になります。)。また、預貯金は、被相続人(亡くなられた方)が利用していた、あるいは利用していたと思われる金融機関に照会することで確認できます。
 他の相続人が勝手に被相続人(亡くなられた方)の預貯金等を引き出す可能性があって、あとで取り戻すことが難しいことが予想される場合には、予め金融機関に被相続人(亡くなられた方)が死亡したことを届け出ておくことで、勝手に引き出させないようにすることができます。
 遺産の評価は、実務上、現実に分割する時点(遺産分割時)となります。なお、寄与分、特別受益(寄与分、特別受益については、のちほど説明致します。)が問題となる場合には、みなし相続財産を算出する必要がありますので、その場合には、相続開始時の評価も必要になります。
 遺産の評価方法で、相続人のもらえる財産額が大きく変わってくることがありますので、遺産の評価方法について、疑問がある方は、弁護士にご相談ください。

6 遺産(相続財産)の分け方~遺産分割協議とは? 
 相続人と遺産(相続財産)の確定が終わったら、相続人の間で、遺産(相続財産)をどのように分けるか話し合う必要があります。これを遺産分割協議といいます。
 話し合いの結果、相続人間で合意ができた場合には、遺産分割協議が成立したということになります。
 遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続人だけでも作成することができますが、不動産や預貯金等がある場合、遺産分割協議書の記載が不十分であると、名義変更や払い戻し等ができない場合があります。その場合、改めて、作成し直す必要があります。
 このような事態にならないように、遺産分割協議書作成にあたっては、弁護士にご相談されることをおすすめします。主に注意すべきポイントをいくつか示すと
 ①不動産の表示は、全部事項証明書に基づき正確に記載すること
 ②銀行預金口座は、口座のある支店名も明示すること
 ③相続人の住所は、印鑑登録証明書の記載に合わせ、同一の記載をすること
 ④相続人の真意と人違いでないことを明らかにするために、相続人全員が署名して登録済の印鑑(実印)で押印し、全員の印鑑登録証明書を添付すること
 等が挙げられます。

7 遺産分割調停とは?
 相続人間での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停は、裁判所を利用した話し合いで、調停官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が、遺産分割の方法について、相続人の考えを確認しながら、争点を整理して、合意に向けた話し合いをしていきます。


 申し立てるにあたって、必要なものは、具体的には、
  ①遺産分割調停申立書
  ②被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍
  ③被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している者がいる場合、その子(及び代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍
  ④相続人全員の住民票または戸籍附票
  ⑤遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写し等)
  ⑥相続関係図
  ⑦その他裁判所から求められた資料
があります。


 申立人は、相続人で、申立先は、相手方の住所を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所です。申立費用は、収入印紙1200円と予納郵便切手(各裁判所によって異なります。)です。
 遺産分割調停は、当事者だけでもできます。しかし、調停において、単にご自身が言いたいことを述べているだけでは、自らの希望を実現することは難しいでしょう。法律の知識を前提に、事実を論理的に主張する必要があります。
 ですので、仮に、相手方に弁護士が付いていなくても、弁護士にご依頼されることがおすすめです。

8 遺産分割審判とは?
 遺産分割調停での話し合いがまとまらず、調停が不成立に終わった場合、その事件は、遺産分割審判手続に自動的に移行します。審判手続中でも、話し合いがまとまれば、調停が成立しますが、話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所によってどのように遺産分割をすべきか審判が出されます。
 遺産分割審判手続では、訴訟のように、それぞれの相続人が書面で、主張を行い、主張を裏付ける資料を提出することになります。
 その段階では、多くの場合、適切に法律上の主張をする必要があるので、弁護士にご依頼されることをおすすめします。

9 共有物分割訴訟とは? 
 遺産分割審判で、遺産である不動産について相続人全員の共有とする審判が下されることがあります。この場合、審判後に、共有物分割訴訟を経なければ、遺産である不動産は、相続人全員の共有のままになってしまいます。このような審判が下されると、遺産である不動産を分割するために、さらに時間と費用がかかる場合があります。
訴訟ですので、それぞれの相続人が書面で、主張を行い、主張を裏付ける資料を提出することになります。その段階では、多くの場合、適切に法律上の主張をする必要があるので、弁護士にご依頼されることをおすすめします。

10 相続放棄の方法は?
 遺産を調査した結果、債務(借金、未払い金等)しかないということもあるでしょう。債務の相続をしたくない場合、相続放棄を行う必要があります。相続放棄をすれば、はじめから相続人とならなかったとみなされます。
 もっとも、プラスの遺産もある場合には、相続放棄をしてしまうと、プラスの遺産も相続できなくなるので、注意が必要です 。
 具体的な相続放棄の方法は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することでできます。この相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。もっとも、被相続人(亡くなられた方)の遺産(相続財産)の調査のため、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長を求めることができます。また、万が一、3か月が経過しても、遺産(相続財産)が全く存在しないと信じた場合には、相続財産の全部もしくは一部を認識した時または通常認識しうる時から期間を数えます。

11 相続税の申告期限は?
 相続税の申告期限は、相続開始後10か月です。もっとも、その間に、遺産分割協議がまとまらないことがあるでしょう。その場合には、未分割として相続税申告します。なお、事業収入がある場合、4か月以内に所得税の準確定申告をする必要があります。

12 遺留分とは?
 遺留分とは、兄弟姉妹及びその子以外の法定相続人に対して認められた、被相続人の意思によっても奪えない相続分のことです。父母等の直系尊属のみが相続人の場合には、1/3それ以外の場合には1/2となります。 
 遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます(遺留分侵害額請求)。
※ 旧法:遺留分減殺請求。
 遺留分権利者が、自分のために相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内にしなければ、遺留分侵害額請求権は、時効によって消滅するので、注意が必要です。また、相続開始から10年経過すると、事情のいかんを問わず遺留分侵害額請求をすることができなくなるので、こちらも注意が必要です(除斥期間)。さらに,遺留分に関する権利行使によって生じた金銭債権については,通常の金銭債権と同様の消滅時効がかかります(債権法改正法施行前においては,10年,施行後においては,5年の消滅時効にかかります。)。
 遺言書がある場合、遺留分が侵害されていないか確認することが必要となります。

13 寄与分とは?
 共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与した者がいる場合、この特別の寄与を考慮し、この者に対して特別に与えられる相続財産への持ち分のことを寄与分といいます。単なる精神的な支援だけでは、寄与分の対象になりません。典型例としては、被相続人の事業に関する事業に関する労務の提供、被相続人の事業に関する財産上の給付、被相続人の療養看護が挙げられます。
 法律で定められた義務の履行としての行為は、たとえ、「被相続人の財産の維持・増加」に貢献したとしても、それが当該義務により通常期待されている範囲内のものを超えるものでなければなりません。また、寄与行為に対する対価や補償を受けていないこと(無償性)、特別の寄与によって、被相続人の財産が維持されたり、増加されたりすること(因果関係)が必要となります。
 寄与分の額は寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を斟酌して決定されます。
 実際に、寄与分があるのかどうかについて確認する必要があります。

14 特別受益とは?
 遺贈のほか、婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として、被相続人から共同相続人に贈与された財貨のことを特別受益といいます。
 被相続人が相続開始時において有していた財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産と見なし、これを法定相続分率で割った相続分を算出し、この相続分から遺贈又は贈与の価額を控除した残額が具体的相続分となります。
 実際に、特別受益があるのかどうかについて確認する必要があります。

15 わからないことがあったら?
 これまでご説明してきたように、遺産相続は、専門的な知識が必要とされるので、当然、ご自身の事案に応じた適切な進め方や解決方法等がわからないことがあると思います。
 その場合、お一人で悩まれることなく、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

ご相談をご希望の方はこちらから、お問い合わせください。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.04.08更新

川岸卓哉弁護士については、こちらから。 

 

  新型コロナウイルスの影響は、働く人の雇用分野にも影響が大きく、生活が脅かされています。しかし、どさくさに紛れて違法な解雇をしたとしか言いようがないような事件も散見されます。例えば、長年正社員として働いていた職場で、コロナの影響で会社の事業が縮小したため、整理解雇さたというご相談はよくうけます。


 しかし、労働契約法16条では,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合,権利を濫用したものとして無効となる」と規定されています。そして、本件解雇は,通知人に何らの責任がない,経営上の理由による整理解雇であり,整理解雇の四要件(人員削減の必要性,解雇回避努力義務,人選の合理性,手続の妥当性)がなければ,違法,無効となります。

 

 解雇の理由について,コロナの影響による当期の売り上げの低下や、事業の縮小等が解雇理由として説明されても、その営業利益の推移に関する資料だけでは、貴社において人員削減の必要性がやむを得ないものであるとは認められません。会社が,雇用調整助成金の申請,貴社代表者及び通知人の賃金減額等を含めた人件費の削減、減額希望退職の募集等といった解雇回避努力義務を尽くしている必要があります。


 また,人選の合理性も、事業縮小する事業以外も当然業務担当が可能であるる場合には、通知人が解雇対象とされるのは不合理といえます。


 さらに,解雇に際して,十分な説明をせず,突然,解雇を通知するような場合にも問題です。


 以上のような事情であれば、解雇が整理解雇四要件を満たさず,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当といえないものであって,違法かつ無効であることがあります。


 コロナが理由で解雇されても、泣き寝入りせずにまずは一度弁護士にご相談ください。

 

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

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