トピックス

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2021.09.27更新

 当事務所の所員である篠原義仁弁護士が2021年8月26日、永眠いたしました(享年77歳)。これまで篠原弁護士と親交いただいたご依頼者の皆様と関係者の皆様に、生前のご厚誼に深く感謝するとともに、謹んでご報告申し上げます。

 篠原弁護士は当事務所を草創期から支えながら、川崎公害裁判で事務局長として裁判闘争の中心的役割を果たし、今日まで、川崎から公害をなくすため、まちづくりに関わり続けてきました。公害根絶への情熱は全国にも及び、全国公害弁護団連絡会議の結成以来、事務局長、幹事長を歴任して全国的な公害被害者運動の団結と統一のために活躍しました。
その他にも、日本鋼管、東京電力両人権裁判をはじめとした大企業相手の労働事件や、市民オンブズマンや9条かながわの会など市民的分野での活動など、その足跡は一言では語り尽くせません。

所員一同、長年にわたって、国や大企業に対峙し、弱者救済と社会正義の実現に尽力してきた故人の遺志を受け継ぎ、執務に邁進して参る所存です。


2021年9月
川崎合同法律事務所

【略歴】
1970年4月 弁護士登録(神奈川県弁護士会)
1972年1月 全国公害弁護団連絡会議結成以来、事務局次長、事務局長、副幹事長、幹事長などを歴任
この間、大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議事務局長に就任
2004年3月 全国公害弁護団会議代表委員に就任
1977年5月 かながわ市民オンブズマン代表幹事(~2001年5月)
1998年8月 かわさき市民オンブズマン代表幹事(~2012年6月)
2000年10月 自由法曹団幹事長(2000年10月~2001年10月)
この間、自由法曹団神奈川支部幹事長に5期就任
2011年10月 自由法曹団団長(~2014年10月)

 

 篠原弁護士の葬儀に際し、写真家の小池汪様が、篠原弁護士が環境庁(当時)の前で演説する様子を撮影した動画をYouTubeにアップロードしてくださいました。小池様に感謝申し上げるとともに、皆様にも、在りし日の篠原弁護士の姿をご覧頂きたく、ご紹介します。

 ↓こちらからご覧下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=dhJE8v4y4Po&t=32s

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.09.09更新

  渡辺、川岸、中瀬が弁護団員として活動している「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟を含む原発事故の被害救済を求める訴訟について、最高裁に対する公正な判決を求めるオンライン署名を開始しました。


https://chng.it/9GVxwQ2D4D

ぜひ署名&拡散のご協力をよろしくお願いいたします。

◇◇◇

 福島原発事故の被害者が、国と東京電力を被告として、原発事故の責任を問い、被害救済を求めている3つの裁判が、最高裁判所第2小法廷に係属しています(「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟、原子力損害賠償群馬訴訟、福島第一原発事故損害賠償千葉訴訟)。

 高等裁判所では、2つの裁判で国に責任があるとの判決が出され、1つの裁判では国には責任がないとされました。そうしたことから、最高裁では、原発事故の責任が、東京電力についてはもちろん、国にあるのかが大きな争点となっています。

 原発事故前に、大地震が起き、それによる津波が福島第一原発の敷地内に襲来する危険性を予測しえたのか、予測しえたとして対策を採っていれば事故を回避することができたのかが判断のポイントとなります。国の責任を認めた判決は、いずれも事故前に予測できたとし、対策を採っていれば事故を回避できたと判断しています。

 そして、事故前に予測できたどうかを評価するにあたっては、人々の生命や健康が、企業の経済活動の利益よりも優先されるという風に考えるかどうかが、判断の分かれ目となります。

 最高裁で、国と東京電力に責任があると判断されると、以下のような可能性が出てきます。

 

① 原告が救済されるだけではなく、原告になっていない被害者の方々にも、救済立法がなされるなどによって、救済策が広がる可能性が出てきます。

 

② 国に原発事故についての責任があることが確定し、現在の原発に対する規制のありかたや原発政策の見直しにつながる可能性が出てきます。

 

 私たちは、人々の生命や健康と企業の経済活動の利益が天秤にかけられることがあってはならないと考えています。そして、最高裁が私たちと同じような価値観に立つことを求めています。

 そのため、最高裁に対して、公正な判決を求める署名を取り組むことにいたしました。以下が、要請文となります。また、応援メッセージもいただきましたので、要請文に続けて掲載しています。そちらもぜひご覧ください!

 署名にご協力ください!!

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.08.01更新

 2021年1月8日、当事務所の創設者のひとりである根本孔衛弁護士が95歳で亡くなりました。これまで根本弁護士と親交のあった依頼者と関係者の皆様にご報告申し上げます。

 根本弁護士は、「地域に根ざした活動」を合言葉に、1968年4月に当事務所を開設しました。以来、当事務所は、「自由・人権・統一」の理念の実現をめざして奮闘し、2018年4月には開設50周年を迎えることができました。
 根本弁護士の活動は、多岐にわたり、その取組みそのものは、現代に脈々とつながっています。川崎民商弾圧事件は、今の倉敷民商弾圧事件や重税反対運動に、東芝臨時工解雇事件は、今の非正規のたたかい、その立法闘争に、新島ミサイル射爆場事件は、全国各地の基地反対運動に、そして、沖縄違憲訴訟は、辺野古、高江の反基地運動や「沖縄差別」撤廃闘争に、それぞれ連なり、今もって色あせずに今日的課題となっています。

 最後に。根本さん、本当におつかれさまでした。ゆっくりとお休みください。そして、好きな本をじっくりとお読みください。

2021年8月

川崎合同法律事務所

略歴

1925年3月  千葉県五井生まれ
1959年    弁護士登録 第一法律事務所入所
全林野東北の刑事事件、安保6・4事件、新島ミサイル射爆場反対、入会権訴訟等を担当
1965年10月~1967年10月  自由法曹団事務局長
1968年4月  川崎合同法律事務所を本永寛昭弁護士と共に設立
1974年10月~1976年10月  自由法曹団幹事長
1979年4月  横浜弁護士会副会長
 この間、沖縄違憲訴訟、川崎民商弾圧事件、東芝臨時工事件、川崎公害裁判、日本鋼管人権裁判、日本ゼオン配転解雇事件や借地借家事件、民商関連事件等数々の事件を担当。そのほか、自由法曹団神奈川支部支部長、日本弁護士会連合会米軍地位協定小委員会委員長などを歴任。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.07.08更新

いつでも元気(2021年7月号No356、全日本民医連)に、中瀬奈都子弁護士が掲載されました。

「いつでも元気」について、こちらからご覧下さい。

中瀬弁護士の記事のPDFファイル

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投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.07.08更新

アトーニーズマガジン(2021.07.01vol.76-77合併号)事務所探訪に掲載されました。

是非、下記オンライン記事をご覧下さい。

川崎合同法律事務所【事務所探訪】Attoney's MAGAGINE Online

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.06.29更新

 小林展大弁護士については、こちらをご覧ください。

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1 2021年5月17日(月),日本弁護士連合会主催の「行政不服審査法シンポジウム-5年後見直しの課題-」にパネリストとして登壇し,情報公開の分野における審査請求の問題点について報告するとともに,パネルディスカッションもしてきました。


2 この情報公開請求は,マイナンバー違憲訴訟の中で判明したものですが,マイナンバーを取扱う業務については,委託元の許諾を得なければ再委託してはならないこととなっているにもかかわらず(番号法10条1項),委託元の許諾を得ずにマイナンバーを取扱う業務を再委託して,マイナンバーが大量漏えいするという事故が続発したことから,その事故について事実関係を確認するために行っていたものです(現在もまだ情報公開請求の手続は続いています。)。


3 情報公開請求の分野における審査請求の問題点については,主に地方自治体における審査請求手続の問題点を報告しました。具体的には,審査庁において,弁明,反論という形で一通り主張させてから情報公開・個人情報保護審査会もしくは行政不服審査会に諮問している自治体もあれば,弁明書が提出されるとすぐに審査会に諮問してしまい,審査会において反論をさせている自治体があるという手続上のばらつき,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述及び審査会での口頭意見陳述の案内をしている自治体もあれば,同案内をしていない自治体もあるという問題,審査会への諮問後に意見書等の提出の機会を与えている自治体とそうでない自治体があるという手続のばらつき,審査会で口頭意見陳述をしたときの審査会の委員の姿勢の違い等を報告しました。
  また,地方自治体の情報公開請求の審査請求手続については,情報公開条例により,2014年の法改正で導入された審理員による審理制度を適用除外としている自治体が多いですが,審理員による審理制度がなされた自治体については,その審理の経過も報告しました。
  そのほか,審査会の答申と裁決の傾向,審査請求手続における対象文書の追加特定についての問題点,当初不存在とされた文書が実は存在していて後に部分公開決定がなされたという実例等も報告しました。


4 パネルディスカッションにおいては,行政不服審査における論点をいくつかピックアップして,その各論点につき,ディスカッションをしました。


  具体的には,弁明書・理由説明書の記載が不十分ではないかと考えられること,処分庁の主張を基礎付けるような証拠,資料等があまり提出されず,物件提出要求申立(行政不服審査法33条)をすることになることもあること,口頭意見陳述の実情,口頭意見陳述の活発化等といった各論点について,コーディネーター及びパネリストでディスカッションをしました。


5 シンポジウムに向けた準備をするために,自分自身で行っていた情報公開請求及び審査請求を振り返ってみて,手続の相異として興味深い点もあれば,改善が必要ではないかと思う点も見つかり,行政不服審査の実務上の問題点を見つめ直す良い機会となりました。


  特に,口頭意見陳述の活発化,口頭意見陳述を有意義,有益なものとするための努力は,制度を利用する者としての今後の重要課題であろうと考えられます。

以上

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.05.18更新

 2021年5月17日、首都圏建設アスベスト訴訟(神奈川訴訟1陣)において、最高裁判所で、国と建材メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認める勝利判決を勝ち取りました。

 

 首都圏建設アスベスト訴訟は、建築現場における作業を通じて石綿粉じんに曝露し、中皮腫や肺ガンなどの石綿関連疾患を発症した被災者及びその遺族が、国と建材メーカーを相手に訴えた訴訟です。当事務所からは、神奈川訴訟の弁護団団長である西村隆雄弁護士、藤田温久弁護士、小野通子弁護士、星野文紀弁護士、川岸卓哉弁護士、中瀬奈都子弁護士、山口毅大弁護士、小林展大弁護士、畑福生弁護士が弁護団に加わっています。

 

 2008年、国と建材メーカーに損害賠償を求める首都圏建設アスベスト訴訟(東京・神奈川)を提起し、これ続き、2011年には北海道、京都、大阪、福岡の全国各地で、同様の訴訟が提起されました。
原告は、大工・保温工・電工・左官・配管工・解体工などの建設作業に従事し、肺がん・中皮腫・石綿肺などの石綿関連疾患に罹った被害者であり、被告は、国及び石綿含有建材を製造販売した40数社の企業です。
いずれの訴訟においても、国に対しては、石綿の危険性を知りながら、防じんマスクの着用義務付けや製造・使用禁止措置などの規制を怠ったこと、建材メーカーに対しては、危険な石綿建材を製造販売し続け、製造販売にあたり適切な警告表示を行わなかったことなどの責任を追及してきました。

 

 国、メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認めた最高裁での勝利判決は、建設アスベスト訴訟の被害補償基金制度の創設に向けて大きな武器となりました。特に、一人親方等についても、国の責任を認めたという点で、世論、政治に訴える力は極めて大きいものです。

 

 テレビ、新聞等、各メディアで大きく報道されました。



 提訴してからすでに13年が経過しました。この間、全国各地で建設アスベスト集団訴訟が提起され、原告の総数は、今回最高裁判決を受けた4事件を含め、被災者単位で900名を超えていますが、そのうち7割を超える者が亡くなっております。もはやこれ以上の解決の引き延ばしは許されません。


 2020年12月14日、東京1陣訴訟における最高裁判所第一小法廷の上告受理決定により国の法的責任が確定し、同年12月23日、田村憲久厚生労働大臣は、原告代表者を大臣室に招いて謝罪するとともに被災者救済のための協議の場を設けるとの考えを示しました。

 

 国は本最高裁判決を真摯に受け止め、全国の建設アスベスト訴訟を速やかに和解によって解決すべきです。

 

 また、建材メーカーらも徒に訴訟を引き延ばすことなく、早期解決のため、和解のテーブルに着くべきです。

 

 さらに、アスベスト関連疾患による労災認定者はこれまでに約1万8000人に上り、建設業がその半数を占め、石綿救済法で認定された被害者の中にも相当数の建築作業従事者が含まれています。また建設アスベスト被害者が今後も毎年500~600人ずつ発生することが予測されています。


 そこで、これらの被害者が裁判などしなくとも早期に救済されるよう、「建設アスベスト被害者補償基金」を創設することが喫緊の課題となっています。現在、与党建設アスベスト対策PTにおいて協議が進められていますが、国及び建材メーカーは、与党PTと連携し、基金創設に向け最大限の努力をすべきです。

 

 私たちは、「建設アスベスト被害者補償基金」の創設まで、全力を尽くして参ります。

 

 

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.04.23更新

川岸卓哉弁護士については、こちらをご覧ください。

水害提訴行動  

1 提訴の概要


 2019(令和元)年10月12日、多摩川流域に台風19号が襲来した。同台風は、日本各地に大雨をもたらし、多摩川の河川水位も、大雨により大きく上昇した。市内の住家被害は、全壊38件、半壊941件、一部損壊167件、床上浸水1198件、床下浸水379件に及んだ。市内の浸水被害の多くは、市内から多摩川へ注ぐ5か所の排水樋管のゲートが閉じられなかったため、多摩川から市街地へ逆流した泥水が原因で、110haもの広範な地域を浸水させた。
 2021年3月9日、横浜地方裁判所川崎支部へ、川崎市を被告として、原告72名が、慰謝料共通100万円、家屋、家財、休業損害等の損害賠償合計約2億7000万円を求めて提訴した。


2 水害の実相


 雨が降りしきる中、自宅や職場の周囲に濁った泥水が迫り、あっという間に建物内への浸水が始まった。停電による暗闇の中、水に浸かって、あるいは救助隊のボートに乗って、命からがら避難した者。一晩中、自宅が倒壊して流されるのではないかという不安を抱えながら自宅内にとどまった者。いずれも、生命身体への危険に直面し、恐怖した。水が引いた後も、平穏な日常生活に戻るまでに長期間を要した。

 大量の泥水による悪臭の中、室内から泥をかき出し、水没した家財を処分しなければならなかった。その一つ一つに家族の歴史や思い出が刻まれていた。
 一時避難した者は、公民館や体育館などの避難所や仮住まいで不便な生活を強いられ、自宅にとどまった者も、トイレや風呂を利用できない、食事や寝る場所を充分に確保できない、衣類が水没して着るものもままならないといった衣食住にかかる不便に耐えねばならなかった。このように、本件水害は、原告らの財産のみならず、生活環境、家庭生活や職業生活を含む生活基盤を毀損した。憲法13条で保障されている人格権の一内容である、平穏生活権を侵害したのである。


3 川崎市の責任


 川崎市は、「ゲートの「操作手順」に従って、決められた水位の時点では降雨のおそれがあり、ゲートを閉めた場合には住宅地の雨水、汚水が氾濫する可能性があったため、閉めなかった」と説明していた。
そもそも、台風19号は、事前から、その勢力が相当強いものとして警戒呼びかけられていた。当日12日は早くから洪水警報、大雨警報が発令、多摩川上流の小河内ダムも放流が繰り返され、多摩川の氾濫注意情報も発表されたいた。多摩川の水位が度上昇し、ゲート周辺の地盤高に達し、逆流の危険性があることは予測可能の状況であった。
 川崎市の各排水樋管ゲートの「操作手順書」には、ゲートの閉鎖を総合的判断すること、「適宜河川水位を観測し、総合的にゲート開閉を判断する」と明記された。水位が周辺地盤高に達すると逆流の危険性が高まるので、そのような水位に至った場合には、「操作手順」に従って、ゲートを閉めるべきであった。さらにはその後刻々と変化する多摩川の水位と具体的な溢水の状況に応じて、ゲートを閉めるべきであった。にもかかわらず、川崎市当局は、ゲート閉鎖による内水氾濫を恐れるあまり、多摩川の水位の上昇という重大な事実を考慮せず、甚大な被害が拡大したのである。
 他方、同じ多摩川の対岸の東京側の自治体、狛江市、世田谷区、大田区などでは、ゲートを閉めており、川崎市のみゲートを閉めなかった判断のおかしさが浮き彫りになっている。川崎市の新たな操作手順書案も周辺地盤高に達した時点でゲート閉める旨の記載に変更され、「逆流による被害をなくすため、管内水位が付近最低地盤高に達した時点で、排水樋管ゲートを全閉とする」となったことは、責任を自ら認めているに等しい。川崎市の責任は免れない。


4 本件の意義


 多摩川は、古来から「あばれ川」であり、周辺地域は水害に見舞われてきた。
 1914年には、多摩川・川崎側の無堤防地帯での度重なる洪水に耐えかねて、住民数百名が「編み笠」をかぶって神奈川県庁に大挙して押し寄せ、当時の神奈川県知事に直談判をした「アミガサ」事件が起こった。この事件を発端に、住民は、神奈川県、さらには国をも動かし、多摩川築堤が進んでいった。
 多摩川堤防の整備が進む一方、堤防より低い地域では、内水氾濫の被害を受けるようになった。1960年代の急激な都市化とともに、川崎の上丸子山王町地区では、「雨が3粒降れば水たまりができる」と言われるほど氾濫が頻発していた。住民は、地域一体となって運動をおこして川崎市を動かし、1964年に設置されたのが、本件排水樋管の一つ、山王排水樋管であった。設置後、山王排水樋管は、地元の消防団がゲートの開閉をおこない、台風が来る度に多摩川からの逆流を防ぐ役目を全うした。やがて、排水樋管のゲート操作は地元住民から川崎市へ、その責任の所在を移していった。多摩川に沿って広がる川崎市にとって、治水は、市民の生命身体、財産を守るための、最も重大な責務であるにも関わらず、これを怠り、本件水害は引き起こされた。
 多摩川周辺に住む者にとって、治水は、平穏な生活を営むための基礎的な願いであり、要求であり続けてきた。本件訴訟も、原告ら被災者が、「川崎を水害なく安心して暮らせる街」とするため、川崎市の責任を明らかにし、被災者の生活再建と、再発防止を求め提訴したものである。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.04.12更新

川岸卓哉弁護士については、こちらをご覧ください。

【プレスリリース】


日本通運川崎支店無期転換逃れ訴訟 控訴声明

2021年4月12日 
日本通運川崎支店無期転換逃れ訴訟弁護団


 本年3月30日、横浜地方裁判所川崎支部(飯塚宏裁判長)において、日本通運無期転換逃れ訴訟について、原告の雇止めを有効とする不当判決が言い渡されました。これに対して、本日4月12日、東京高等裁判所へ控訴したことをご報告するとともに、以下控訴にあたっての声明をお送りします。


1 本件の概要


 原告は、日本通運川崎支店において、派遣社員を経て、2013年より、1年契約更新の有期労働契約で直接雇用された。その後、契約更新は4回され、無期転換申込権が発生する通算契約期間5年のわずか1日前、2018年6月末日をもって、期間満了による雇止めされた。これに対し、原告は、雇い止め無効を主張し、横浜地方裁判所川崎支部に提訴したものである。
 無期転換ルールは、我が国において増え続ける非正規雇用労働者を、会社が「雇用の調整弁」として差別し使い捨てることへの歯止めをかけ、労働者の雇用の安定を図ることを目的として、立法されたものである。しかし、日本通運の本件雇止めは、無期転換ルールの法の趣旨を真正面から否定し、無期転換を阻止することに目的があった。そのため、本件雇用契約書には、派遣を経て最初の直接雇用契約当初から「当社における最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない」という、いわゆる不更新条項が挿入されていた。

 

2 大企業日本通運に忖度し非正規労働者の切り捨てを容認 法を死文化させる不当判決


 判決は、労働契約法19条の雇用継続への合理的期待について、直接雇用当初から5年の更新上限を認識、合意していたことだけを重視し、同条が定めた考慮要素に該当する事実による期待の合理性を一切否定した、契約書への署名押印のみを重視する形式的判断となった。
 原告が派遣から直接雇用へ切り替わる際に熟慮期間なく5年の更新上限に同意をさせられた経緯から、不更新条項の同意を無効とすることは、本件の特殊性であり、最大の勝負所と考えていた。この点について、判決では、山梨県信用組合事件最高裁判決の射程ではないとしつつも、「自由意思を阻害するか」について判断したうえで、非正規労働者の置かれた立場「労働者としては署名を拒否して直ちに契約関係を終了させるか、署名して次期の期間満了時に契約関係を終了させるか」二者一択を、「短期の登録型派遣か、比較的長期の有期雇用契約か」の二者一択にすり替えて、5年の更新上限に合意しても自由意思を阻害するものではないと認定し、有期雇用契約労働者の置かれた立場に対する理解・共感を欠く判断となった。
 また、判決は、更新上限の公序良俗違反性についても,「次期更新時で雇止めをするような、無期転換阻止のみを狙ったものとしか言い難い不自然な態様で行われる雇止めであれば無効となる」としながら、本件は、労働組合との労使協議を経た一定の社内ルールが「経営理念」を示したと評価され、5年直前の雇止めでも労働契約法18条の潜脱とはいえないと判断した。しかし、その「経営理念」の実態が、正社員組合を共犯関係に非正規使い捨ての合意であり、しかも結果として実態にあわず崩壊している点について、判決は目をつむった。
 本判決は、大企業日本通運に忖度をし、非正規労働者を軽視し、差別的扱いを是認する裁判官の固定観念ともいうべきものが根底にあることが見て取れるものであった。本件のように、当初より不更新条項が契約書に記載されていた内容でも、契約締結せざるを得ない立場の弱い労働者は潜在的に多数存在する。本判決は、労働契約法18条の無期転換ルールを不更新条項によって死文化を是認するもので、原告のみならず同様の立場に置かれた多くの非正規労働者の将来を閉ざす極めて不当な判決である。  
 支援共闘会議は、勝訴判決を勝ち取るべく、川崎駅頭での毎月宣伝や、同じく日本通運を相手に東京で無期転換逃れを闘う原告及びユニオンネットおたがいさまの闘いと連帯し、日本通運の法をないがしろにする暴挙へ、批判の声を広げる運動を積み上げてきた。裁判所宛に早期・公平な判決を求める約1万筆を超える署名を全国各地から集め、提出して要請を行ってきた。また、判決直近には140の労働・市民の団体署名を基に各団体が訴え、幾度にわたり裁判所要請も展開したが、裁判所はこれに応えなかった。控訴審である東京高裁では、原告、弁護団、支援共闘会議のみならず、同じく日本通運を相手に無期転換逃れを争い東京地裁で不当判決を受けた日本通運東京ベイエリア支店事件の弁護団とその支援とも共同し、逆転を目指して闘っていく決意を固めている。


3 2021年度見直しの年を迎える無期転換ルール 改正の方向性


 労働契約法18条の改正附則3項で、「同施行後8年を経過した場合に、施行状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされたものであること。検討の対象は、法第18条、すなわち無期転換ルール全体であること。」とされ本年2021年4月がその8年目を迎え、国民的世論を作り、無期転換ルールを前進させる絶好の契機となる。


(1)法改正の方向 ① 不更新条項の無効化


 この間、無期転換逃れ事件についての各勝訴判決、契約更新の途中から法改正に対応して不更新条項が挿入されたものがほとんどであり、裁判所はその同意への有効性を慎重に判断し、雇止めを無効とした。他方、今後は、本件日通事件のように契約締結当初から更新上限が設けられるものが主流になってくると、裁判例からは、その無効を主張するのは困難となる。立法で、解雇濫用法理を脱法する目的の更新上限を無効化することが、労働契約法18条を死文化させないために不可欠となると思われる。


(2)法改正の方向 ② 無期転換申込権が発生するまでの期間の短縮化 3年へ変更


 労働契約法18条の立法過程では、政府の労働政策審議会で、無期転換申込権発生までの期間を、労働側は3年、使用者側は7年を主張し、政治的妥協として5年と決まった経緯があると聞いている。しかし、日本通運ですら3年で正社員化の新制度を採用しているとおり、無期転換申込権発生には3年で十分と考える。また、多くの企業で、近年は更新上限を脱法意図の強いぎりぎりの5年から、3年に変更している傾向もある。2021年度の見直しでは、あらためて、3年での無期転換を容認する法改正の機運を高めることが求められる。


4 結語


 支援共闘会議及び全国の支援者、原告・弁護団は.約三年間の闘争を支えられたご家族の労苦に敬意を表すると同時に、本不当判決を乗り越え、2000万人ともいわれる非正規労働者の権利を前進させ、本争議の一日も早い解決に向け、全力で闘い抜く決意である。

投稿者: 川崎合同法律事務所

2021.01.25更新

 親から辛い目にあわされてやっとの思いで家から逃げてきた。代わりに親と話してほしいけど、お金がないから弁護士なんて頼めないよね?

 そんなことはありません。

 「子どもに対する法律援助」という制度があります。
(※以下結論をいち早く知りたい方は「☆」の付いた太字の部分だけでも読んでみてください。)

 

1 「子どもに対する法律援助」とは


 日本弁護士連合会という日本の全ての弁護士が登録している組織が、人権救済のために、弁護士から徴収した会費を主な財源とし、法テラスによる民事法律扶助制度や国選弁護制度等でカバーされていない方を対象として弁護士費用等を援助する法律援助事業を行っています。日弁連は、総合法律支援法に基づき、この事業を2007年10月1日から法テラスに委託して実施しています(日弁連委託援助業務)。
 この事業の中に「子どもに対する法律援助」があります。
 なお、日弁連は「子どもに対する法律援助」以外にも様々な法律援助事業を委託しています。こちらをご参照ください。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/justice/houterasu/hourituenjyojigyou.html

 

☆ 要は、子どもが自分で弁護士をつけるための費用を出してもらえる制度があるということです。

 

2 「子どもに対する法律援助」でできること


 援助の対象となる活動は以下のとおりです。


⑴ 行政手続代理等

・ 行政機関(特に児童相談所)、児童養護施設等の施設との交渉の代理
・ シェルターその他の施設等への入所へ向けた支援、入所中の支援、施設等から自立的生活への移行へ向けた支援
・ 虐待等を行う親との交渉に関する代理、親との関係調整活動
・ 児童虐待事件に関する刑事告訴手続の代理、刑事手続で証人として出廷する子どもの援助
・ 学校等において体罰、いじめ等の人権侵害を受けているが、保護者が解決しようとしない事件についての交渉代理
・ 少年法第6条の2第1項の調査に関する付添人活動

 

⑵ 訴訟代理等(⑶以外)

・虐待する養親との離縁訴訟、扶養を求める調停や審判手続等の法的手続の代理(親権者の協力が得られないため、民事法律扶助の申込みができない場合)及びこれに関わる法的手続の代理


⑶ 子どもの手続代理人

・ 家事調停手続、家事審判手続、ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の手続及び即時抗告の手続(ただし、除外事項あり)における手続代理又は当事者参加申出、利害関係参加申出、利害関係参加許可申立て及びハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の手続への参加申出の手続代理並びにそれらの支援


⑷ 以上に関わる法律相談

 

☆ これらの中でもとりわけ、親との交渉や裁判手続のために弁護士をつけられるのがこの制度の良い所です。

 

3 「子どもに対する法律援助」を利用するために


利用するためには以下の3つの要件を満たす必要があります。


① 虐待や体罰、いじめ等により人権救済を必要としている子ども(20歳未満)等の対象者に該当すること(※貧困、遺棄、無関心、敵対その他の理由により、その子どもの親等各申立権のある親族から協力を得られない場合に限られます)。


② 資力要件(例えば手取り月収が単身者で20万1,000円以下であることなど)。


③ 事件について弁護士に依頼する必要性・相当性があること。

 

☆ 以上の要件はありますが、親などから辛い目にあわされている子はこの要件を満たす場合が多いです。利用に当たっては弁護士を通じての申込みが必要となりますので、お気軽にご相談ください。

 原則として「子どもに対する法律援助」利用にかかる相談は、法テラスを利用して無料にて承ることができます。

 

4 よくある質問


Q1:本当に無料なの?


A1:原則として無料で、援助を受けた報酬、費用について、申込者の負担はありません(法テラスから担当弁護士に支払われます)。ただし、現実に利益が得られた場合などについて例外もあります。(詳細は次の法テラスウェブサイト参照。https://www.houterasu.or.jp/higaishashien/seido/kodomo_houritsuenjo/index.html

 

Q2:弁護士をつけるのに親の同意はいらないの?


A2:子どもに対する法律援助の利用に当たって、親などの法定代理人の同意を得る必要はありません。
 弁護士に事件を依頼する委任契約などの「契約」は、通常、民法5条1項本文及び同2項に基づいて、親権者の同意がない限り、取り消すことができます。しかし、親などの法定代理人を相手に交渉などを行う場合に、親などの法定代理人が、弁護士と子どもとの間の委任契約を取り消せるとしてしまうと、子どもは弁護士をつけられず、子どもに対する法律援助の意義がなくなってしまいます。そこで、子どもに対する法律援助では、子どもの金銭的な負担をなくすことによって、民法5条但し書き(「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」)に基づき、委任契約の取消しを防いでいます。子どもは負担なく単に法律サービスを受けるだけという扱いです。

 

5 最後に


☆ 川崎合同法律事務所では、子どもが 「自分のことは自分で決める」ことを応援します。困っている場合はすぐにご相談ください。
 辛い立場に置かれた子どもを支援されている方も、子どもに対する法律援助の利用含めて、その子のために何ができるか一緒に考えて行けたらと思いますので、お気軽にご相談ください。
 原則として「子どもに対する法律援助」利用にかかる相談は、法テラスを利用して無料にて承ることができます。

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

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