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2017.03.17更新

お金を払ってもらえなくて困ったことはありませんか
(債権回収入門)
~2021年2月時効に関する記載を修正~


弁護士 星野文紀


第1 債権回収とは

 「債権回収」とは、債権者が債務者から金銭支払いを受けること。それを受けるための活動をいいます。
取引先が、商品やサービスの代金を支払ってくれない場合や、工事を行ったにもかかわらず発注者や元請会社が「工事に問題がある。」「支払うお金がない」などと言って代金を一部しか支払ってくれない場合、貸したお金を返してくれない場合などが典型例です。
 権利があることに争いがないのに、お金を払ってもらうことができないとき全般を含みます。
 権利があるかどうかに争いがあるときはその確定の作業(例えば、裁判を起こして判決をもらう等)の作業が別に必要になります。
 では、債権回収の方法を見ていきましょう。少し、難しいですが、実務的に役立つ情報を書きましたので、参考にしてください。
 ただし、わからないことがありましたら、早めに相談に来られることをお勧めします。

 

第2 債権回収のために普段からしておくべきこと
 
 1 一般的には
  (1) 債権回収の極意は信用できない人とは取引をしないことです。そのためには相手をよく知ることが大事です。
  個人なら・・・経歴、世間の評判、資産、人柄、交友関係
  会社なら・・・経営者、会社概要(関連会社、業務内容、取引実績、取引先、決算書(推移)、会社資産、借入等、従業員の様子(活気、年齢構成、余裕)
などをよく観察することが大事です。大事な取引相手とは、雑談をするなどしてコミュニケーションを取るようにしましょう。そうすることで、取引後も、変化に注意できます。


 (2) 取引をする時は契約書を作るのが基本です。作った書類等を保管・整理しておくことも必要です。


 (3) 回収のための情報も得ておくことも大事です。


 普段の情報収集がいざというとき役に立ちます。
具体的には、
  ・相手にとっての自分の位置づけ
  ・主要取引先(社名・所在地・どんな会社か)
  ・各取引先との取引の量
  ・各取引先との決済方法(手段・締日・支払日)
  ・各取引先との関係性
  ・メインバンク、資金調達手段
  ・相手方の実権は誰が持っているのか
  ・相手の取引における強みはなんだろう
  ・決算書類
  などの情報があれば後々役立ちます。


(4) 債権請求の対価を履行した証拠を確保しておく。
    反対債務の履行義務がある場合は反対債務の履行を証明しないと支払いを受けることができない場合があります、反対債務を履行したという根拠を確保しておきます
・(例)物の販売なら、物を債務者が受け取ったという受領書


 2 建築請負代金債権の場合
  基本的には、一般の場合と変わりありませんが、若干の特殊性があります。


(1) 契約書を作ってもらえない場合
  契約書が作れない場合が多いです。
  その場合は見積を細かく発行し、日付入りの受領書・受領印をもらう等の工夫をしましょう。
  請負額を作業員数で決めているような場合は、人工単価だけでも、合意書、承諾書を作り、現場監督にでも署名捺印してもらう。


(2) 債権請求の対価を履行した証拠を確保しておく。
 請負完了の場合は元請あるいは注文者に立ち会ってもらい引渡証明をもらうといいでしょう。各仕事毎に完了証明がもらえればベターです。
 人工出しの場合=出面の証明(元請けの現場監督の証明書等)をもらうのがいいでしょう。


(3) できるだけ短い期間で、その期間内の代金回収を行うのが被害を少なくするコツですので、支払いの頻度はできるだけ短くしましょう。

 

第3 危ないと思ったら
危ないと思ったら、次のことを検討しましょう。この辺りから、弁護士に相談することをお勧めします。

(1) 取引を減らす。(損害を減らす)


(2) 契約を見直す。(支払猶予などの機会をとらえて)
  契約条項の見直し、違約金条項、解除、公正証書にする
  「減額請求」などがあった場合、意義を留保して相手方申し出の金員を受け取る。


(3) 担保を取る。
  保証人を付ける(個人保障)。抵当権。譲渡担保。仮登記担保。売渡担保(買戻特約)

 

第4 いよいよ債権回収
 いよいよ実際の債権回収です。よく作戦を考えて迅速に行動しましょう。


(1) 未払いの原因を考える
債権回収はまず、債務者の置かれている状況を知ることから。
払えないのか、払いたくないのか


(2) 計画をよく練ってから迅速に行動を
  相手のお金の流れをつかむことが大事です。
  計画のポイントは
  ・費用
 ・時間
 ・確実性
  です。
  どの方法が適切かわからない場合は弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

第5 回収のための手順(複数を組み合わせる)
 次の手段をつかって回収します。詳細はご相談ください。


1 交渉
 内容証明、電話、FAX、夜討ち朝駆け
  安易な交渉は、危険。さまざまな、手段を検討したうえで交渉する。
  交渉するなら迅速に。長々と交渉しない。
  払う気にさせることが目的(やさしく、厳しく、スマートに)
  合意がとれたら必ず書面にする。
    約束を守らせる工夫も(違約金条項、公正証書、即決和解)
  すぐに払えないなら、分割や、担保を検討する。


2 仮差押・仮処分

  押さえるものを特定できるか、担保金を用意できるか


3 訴訟・強制執行


4 支払督促
  争いのないときに債務名義を取る。


5 担保執行
  質権、抵当権、根抵当、留置権、先取特権、譲渡担保、仮登記担保、所有権留保、代理受領、振込指定

6 その他回収方法

  商品引き揚げ、債権譲渡、相殺、手形、小切手

7 元請会社が倒産した場合
(1) 元請会社からの回収
    破産、再生、 届出債権につき平等分配 但し、担保
    任意整理 交渉
    取締役の責任追及


(2)注文者からの回収
    注文者がまだ支払っていない場合


(3)上述各手段で併用できるものは併用する

 

第6 時効に注意
(1) 時効
    民法改正(令和2年4月1日施行)により、業種別の短期消滅時効は廃止となりました。
    令和2年4月1日以降に発生した債権の消滅時効期間は、改正民法の規定により「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」となります(改正民法166条)


(2) 迅速に請求(催告)  
    時効の中断
   準消費貸借を使うことも考えて。

第7 最後に
 事例によって適した方法は変わりますし、どの方法がとれるのかの判断が難しい場合も多いです。早めの相談が良い結果を生む場合が多いのは確かですので、気になったら、すぐに実際に弁護士に相談することをお勧めします。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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