トピックス

bnr_top02_tel.png

2019.12.10更新

nissann

1 日産非正規切り事件とは
 2009年2月、日産のカルロス・ゴーンCEOが、リーマンショックによる「経営不況」を理由に約2万5000人の人員削減を発表。国内約8000人もの非正規労働者(派遣労働者・契約社員等)を契約解除・雇止めにしました。その中に本事件の申立人5人(日産自動車に派遣されていたデザイナーA氏、B氏,期間工C氏、日産車体の期間工D氏、E氏)もいたのです。
 5人は同種の正社員と全く同じかそれ以上の仕事をしていましたが、契約の形式が正社員ではないというだけの理由で物のように切り捨てられたのです。しかも、「経営不況」とは名ばかりで日産は同年5月には一部増産に転じた程です。正社員ならば絶対に解雇できない場合でした。「非正規労働者」とは、「正社員」ならば法律上解雇することができない場合にも会社の勝手な都合で解雇できるように契約形式だけを擬装したものに過ぎなかったのです。5人はそれぞれ日産自動車と日産車体へ地位確認を求め提訴しました。しかし、裁判所は日産が労働者派遣法等に違反している事実をいくつも認めたにも拘わらず5人の訴えを退けました。


2 県労委が日産をA氏B氏の「使用者」と認める画期的命令!
  訴訟と並行して、5名の加入するJMITU(日本金属製造情報通信労働組合)は、日産自動車及び日産車体に本件解決を求めて団体交渉(「団交」)を申入ました。しかし、日産自動車は、A氏、B氏は派遣社員であり自社と雇用関係にないから自らは「使用者」(労組法7条)に該当しないとして団交を拒否しました。また、C氏については団交には応じましたが「裁判で解決済」と繰り返すだけの形式団交に終始しました。日産車体のD氏、E氏に対する対応も同じでした。そこで、JMITUは、日産自動車・日産車体を相手に、両社の行為が不当労働行為に該当するとして、誠実に団交に応じよとの命令を求めて、神奈川県労働委員会(県労委)に救済を申立てました。
  2018年1月、県労委は,「日産自動車は派遣元によるA、Bの採用及び雇用の終了につき、事実上、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定していた」「日産自動車は、A、Bの復職を巡る労使紛争を解決できる地位と権限がある、組合との団交によって紛争を自主的に解決すべき当事者性も有する」として日産自動車は労組法7条2号の「使用者」に当たると判断し、団交に応じるよう命令しました。また、Cについては「組合の要求」は裁判とは異なるものでしたが、「裁判と同様であると決めつけて誠実な対応行わず」「実は組合の要求など一切まともに検討していない」として不誠実な団交であったことを認め誠実に団交せよと命令しました。


3  和解=全面解決
  県労委命令に続き中央労働委員会の審議は1年以上続きましたが、和解勧告を受けて協議し、2019年8月19日、JMITU神奈川地本と日産自動車・日産車体との間で和解が成立し、10年以上にわたって続いた日産非正規切り事件が全面解決しました。


4 リーマンショック後の非正規切り闘争の意義
  リーマンショック後、全国で数十件の非正規切り争議が闘われてきたが、本日産非正規切り争議の全面解決によってほぼ全事件が収束した。
  私は、いすゞ、資生堂・アンフィニ、ラデイアホールデイングス、日産・日産車体等、この10年間非正規切りに対する派遣先・注文先あるいは有期契約先大企業の雇用者責任を追及し続けてきました。今、10年の闘いを振り返って、大きな成果があったと考えています。先ず、リーマンショック以前には非正規労働者で権利闘争に立ち上がる人はほとんどいませんでした。何故なら、非正規労働者には闘いに立ち上がるための労働組合活動の経験もなければ最低限の蓄えもなかったからです。しかし、それが、リーマンショック後、全国でわき起こった派遣村や非正規切りに対する怒りの世論の後押しを受け初めて労働組合に入り、生活を維持しながら闘う術を確立し闘うことができたのです。そして、資生堂・アンフィニ事件を始め相当額の解決金や謝罪より大企業に明確に雇用者責任をとらせる大きな勝利的解決を導き、非正規労働者を物として扱ってきた大企業にと対し(正社員は「人事部」が扱い、派遣社員は「購買部」が扱う等)何をしても許される物ではなく非正規労働者も人なのだということを示したことが大きな意義があったと思います。
    次に、この闘いにより、労働組合、学者、文化人、国民の中に非正規問題を持ち込み、それぞれの立場から様々な方法で事件を支援し、運動が広範に広がったことが重要でした。それは世論を変え、不当に雇用者責任を免れようとする大企業の策動に一定の規制をかけることにつながりました。相当数の大企業が非正規の正規化に着手しました。
    また、立法闘争に立法事実を与え続ける根拠となり、労働者派遣法や労働者契約法に非正規に対する不当な差別的取扱を止めさせる、まだ全く不十分ですが雇用者責任を一定程度果たさせる法改正につながりましました。
   最後を飾った日産争議において、前述の通り、県労委命令により派遣先である日産自 動車が団交の「使用者」であることが認められ、その命令が覆されなかったことも重要 です。今後、派遣労働者が派遣先と団交し闘う基礎となり得るものです。
    まさに、10年の闘いは大きな成果を上げてきたのです。


    しかし、なお、大企業との傀儡である政府は非正規労働者の増大を画策し、その権利を制限し、雇用責任を一層逃れる策動を続けています。今、「無期雇用転換」逃れの雇い止めや、労働者の請負化の推進など枚挙に暇がありません。安倍「働き方改革」もその指向性は明白です。  私は、引き続き望めば誰もが正社員として働ける社会、裏返せば、労働者を使用して利益を上げる者は雇用者責任を果たす社会実現のために闘ってゆく決意です。
   

 

投稿者: 川崎合同法律事務所

川崎合同 法律事務所 お問い合わせ 50周年の歩み50周年の歩み トピックス Q&A ケーススタディー 講演・セミナー