2017年10月24日(横浜地裁)、10月27日(東京高裁)で判決を迎える建設アスベスト訴訟について、公正判決を求める学者・研究者共同アピールに取り組んでいます。ご賛同のほど、よろしくお願いします。
全国建設アスベスト訴訟 ~訴訟の到達点と勝利判決に向けて~
神奈川建設アスベスト訴訟弁護団団長 西 村 隆 雄
全国建設アスベスト訴訟の概要
2008年、国と建材メーカーに損害賠償を求める首都圏建設アスベスト訴訟(東京・神奈川)が提起され、これに続き、2011年には北海道、京都、大阪、福岡の全国各地で、同様の訴訟が提起されました。
原告は、大工・保温工・電工・左官・配管工・解体工などの建設作業に従事し、肺がん・中皮腫・石綿肺などの石綿関連疾患に罹った被害者であり、被告は、国及び石綿含有建材を製造販売した40数社の企業です。
いずれの訴訟においても、国に対しては、石綿の危険性を知りながら、防じんマスクの着用義務付けや製造・使用禁止措置などの規制を怠ったこと、建材メーカーに対しては、危険な石綿建材を製造販売し続け、製造販売にあたり適切な警告表示を行わなかったこと等の責任を追及してきました。
これまで国に対しては、東京地裁にはじまり、福岡、大阪、京都、札幌の各地裁で5たび、国の責任を断罪する判決をかちとり、また建材メーカーに対しても昨年1月の京都地裁判決で初めて原告勝訴の判決をかちとることができました。
この間の到達点と勝訴判決の意義
京都地裁判決を契機に、原告らとの交渉を頑として拒否していたニチアスなども交渉のトビラを開き、その他企業も制度創設に向け前向きな発言がみられるなど、建材メーカーの対応に明らかな変化が生まれ、一方、大阪、京都地裁判決に際し、新聞各紙が社説で一斉に救済制度創設を求めるなど、状況は大きく前進しています。
こうした中で、きたる東京高裁判決でメーカー勝訴の判決をかちとることができれば、今後の各高裁、地裁判決に大きな影響を及ぼすことはもちろん、建材メーカー各社に対しても、京都判決の比ではない大きなインパクトとなること確実です。
今後に向けて
わが国で石綿建材を使用した建物の解体のピークは2030年前後と推定され、過去の石綿建材の使用のピークと発症までの長い潜伏期間を考えると、建設作業従事者の被害は今後も増加の一途をたどることが確実視されています。
一方建設アスベスト裁判では、日々病に苦しんで命を落とす原告が相ついでおり、神奈川(1陣、2陣)訴訟でみても、原告被災者119名中、77名の方が裁判の結着をみることなく命を奪われています。
したがって、裁判提訴によることなく迅速な救済をはかる、建設被害者補償基金制度の創設が急務となっています。
基金制度は、労災認定等を受けた建設作業従事者を対象に、労災補償の上積み補償を、国、建材メーカー、ゼネコンの財源負担で行うというものです。
この間、制度創設に向け141万筆の国会請願署名が寄せられ、大阪・京都判決の際には、新聞各紙が社説で制度創設の必要を説くなど、これを支援する世論も広がってきています。
こうした中、この制度創設に向けて、建材メーカーの責任を裁き、救済の範囲を一人親方も含む全ての建設作業従事者に拡げる明快な判決が、今こそ、切望されるところとなっています。
共同アピールご賛同のお願い
そこで東京高裁に対して、そして横浜地裁に対して、制度創設に向けて大きな道を切り拓く歴史に残る判決を下されるよう求めるうえで、これまで全国で公害、薬害、労災被害者の命と健康を守るためたたかってこられた多くの弁護団の皆様の賛同アピールが大きな力になると確信しています。
ぜひとも共同アピールの趣旨をご理解いただき、アピールにご賛同下さいますよう、よろしくお願い申しあげます。
賛同下さる学者・研究者の方は、弁護士西村宛、ファクシミリでご連絡ください。