トピックス

bnr_top02_tel.png

2016.08.17更新


 3月13日、山口地裁は、大手自動車メーカー「マツダ」に、労働者派遣法違反にとどまらず、「常用雇用の代替防止」という労働者派遣法の根幹を否定する「組織的かつ大々的な違法状態を創出する意図」があったとして、派遣労働者と派遣元会社との派遣労働契約を無効であるとし、かつ、派遣労働者と派遣先「マツダ」との間に黙示の労働契約が成立しているとの判決を言い渡しました。マツダが、法定の派遣可能期間(当初1年、現在は3年)経過後、3ヶ月と1日だけ、その労働者をサポート社員として直接雇用し、その後再び派遣労働者として受け入れる制度(「サポート社員制度」)を導入し、特定の労働者を派遣可能期間を超えて派遣として使用し続けてきたこと等を断罪したものです。


 かつて、我が国では「正社員」が当たり前でした。ところが、「小泉改革」以降10年間で、20%程度だった非正規労働者(派遣・契約社員等)は37%まで激増し、20歳代では45%にまで達しました。正社員を非正規労働者に置き換えた結果、大企業は儲けに儲けて、バブル期の3倍266兆円もの巨額の内部留保をため込みました。期間の定めがない労働者=正社員は、合理的な理由と社会的相当性がない限り解雇ができず、賃金水準も高いのに対し、非正規労働者は期間が来れば「雇い止め」ができ、賃金水準も圧倒的に低いからです。そこで、労働者派遣法も、「常用雇用の代替防止・正社員の非正規労働者への置きかえ禁止」のため派遣可能期間など様々な規制を課してきました。しかし、大企業は、派遣法の規制などに違反してまで非正規労働者を使い続けてきました。


 このように違法に働かされてきた派遣労働者が、リーマンショック後、20万人以上も、「雇い止め」にされました。これに対し、全国で80件以上、派遣先の大企業を相手に、非正規労働者が、本来正社員であるべきだったのだから直接労働契約があることを確認するよう求める裁判を起こしました。今回の「マツダ」判決は、松下プラズマディスプレイ最高裁判決(2009年12月)がいう派遣労働者と派遣元会社との間の雇用契約を無効とする「特段の事情」を認め、派遣労働者と派遣先会社との間に黙示の労働契約が成立することを認めた画期的判決です。


 マツダ判決は、現在闘われている、我が神奈川のいすゞ、日産、資生堂等を相手にする訴訟にも大きな影響を与えるものとなるでしょう。希望する人は誰でも正社員として働ける、当たり前の世の中に転換する第1歩としたいものです。

投稿者: 川崎合同法律事務所

entryの検索

カテゴリ

川崎合同 法律事務所 お問い合わせ 50周年の歩み50周年の歩み トピックス Q&A ケーススタディー 講演・セミナー 採用