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2016.08.17更新

 11月20日、東電および経産省・文科省との交渉のため、福島、米沢、沖縄から200名を超える原発事故被害者が結集した。渡辺・川岸・私も「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団の一員として交渉に参加した。想定以上の集まりに席が足りず、床に座り込む人も出る異様な雰囲気の中、「原状回復、完全賠償、廃炉」といった要求を掲げて交渉をした。

 特に人々の印象に残ったのは、水戸から沖縄へ避難している若いお母さんの発言ではなかろうか。

 ――「子供の健康を守るために必死なんです。生活も何もかも変わってしまったのです。けれど私たち自主避難者には何も賠償されない。東電は線引きをせずに賠償すべきです。」

 安全な環境で子供を育てたい、健やかに成長してほしい――親ならば当然の思い。ふるさとを離れるという選択を強いられ、仕事で地元を離れられない夫と離れ、慣れない土地で子供を育てる大変さ。当然、生活費は二重にかかる。避難費用もかかる。しかし、東電は、原発に近い一定の地域からの避難者にしか、避難費用を賠償しない。

 国や東電は、十分な賠償を進めないどころか、特定の被害者にのみ賠償をすることで、被害者の間に分断を生じさせようとしている。上述したお母さんの訴えは、賠償の実態を端的に表している。

 原発事故の被害は実に多様である。農民は土壌を汚され、漁民は海を汚され、事業者は風評被害に苦しみ、お母さんたちは子供の健康被害を心配し――。

 交渉には、様々な立場の被害者が参加していたため、東電や国に、多様な被害実態を具体的にぶつけることができた。

 しかし、国も東電も、ひたすら被害者の声が枯れるのを、その時間が通りすぎるのを待っているかのような態度だった。形だけの回答を繰り返し、より一層被害者の怒りを買った。国と東電が言い訳のようにいう「責任がある」「ご迷惑をおかけした」という言葉が、「法的責任」を認めた上のものでないことは明らかだ。

 被害者に共通する要求である「原状回復」、「完全な賠償」を本質的に進めさせるためにも、国と東電の「法的責任」を明らかにしていかなければならない、と改めて決意を固くした。

投稿者: 川崎合同法律事務所

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